公益財団法人トヨタ財団

トヨタNPOカレッジ「カイケツ」

「カイケツ」キックオフシンポジウムレポート

kaiketsu
カイケツ


情報掲載日:2016年4月7日

トヨタがNPOの成長を後押し、NPOカレッジ「カイケツ」始動へ

「カイケツ」キックオフシンポジウム

トヨタ財団は2016年5月、NPO法人など非営利組織のマネジメント能力を高めることを目的に、連続講座トヨタNPOカレッジ「カイケツ」を開講する。3月1日、トヨタ自動車東京本社で開かれたキックオフシンポジウムには、当初の定員を大幅に超える約250人が全国から集まった。
まずは山元圭太・PubliCo 代表取締役COOが「今、NPOに社会課題解決力が求められる3つの理由」と題した講演を行った。

講演 今、NPOに社会課題解決力が求められる3つの理由

◉ 山元圭太(PubliCo 代表取締役COO)

PubliCo では、NPO法人など非営利組織に対して、ファンドレイジング(資金調達)や、チームビルディング(組織作り)といった経営支援を行っています。
PubliCo のミッションは、社会を変える組織をつくることです。社会を変えるために活動する非営利組織が、自身の足でしっかりと歩み、社会的成果を目指して活動していけるようにサポートしています。

NPOに成果(インパクト)志向を

山元圭太(PubliCo 代表取締役COO)

NPOを本当に信頼できるパートナーとして見ている人はどのくらいいるのでしょうか。私は、NPOが行政や企業に信頼される社会にしていかなければいけないと考えています。そのためには、「NPOの成果志向」が必要です。

米国には、NPOがソーシャルインパクトを追求する先行事例があります。たとえば、米赤十字社のファンドレイジング部門トップの女性は、「米国では、同じ活動、テーマ、地域で活動している競合団体がたくさんある」と言います。寄付者も利用者も、ボランティアも、どこの団体に参加しようか、選択肢があるのです。人々は、どこにお金を預け、どこのボランティアに参加したら、本当に地域が良くなるのか、成果によって判断するのです。NPO側も自分たちが生き残らなければいけないので、社会的成果、社会的価値をどのくらい創出できたかを競うようになっています。

米国ファンドレイジング協会のCEOは、「リーマンショックが大きなきっかけとなり、寄付者はインパクト志向になっている」と話していました。リーマンショックで、政府の財源が縮小し、最盛期と比べてソーシャルセクターに流れ込む資金が2分の1となったため、資金提供側は、どの団体に寄付するか考えるときに、社会的成果を重視するようになりました。それゆえNPO側は、支援を受けて社会課題を解決することができるのかどうか、説明責任を果たさなければいけなくなったのです。

まず、成果指標を設定し、やるべきことを小さく始めます。成果が出るかトライアルし、指標の検証結果を元に、ファンドレイジングを行うという流れです。トライアルによって出た成果から、プログラムを全米中に広めるための資金も試算します。そして、足りない資金をファンドレイジングします。トライアルをしたことで、成果の出るプログラムを正式リリースすることが可能になりました。
米国では、大きな経済危機があったことで、社会全体に共通の危機感が生まれました。それから、資金提供者の意識変化が起き、本当に成果の出せるところにしか寄付をしなくなりました。そのため、現場の団体も変わらざるを得なくなり、マネジメントのプロを巻き込みながらノウハウを獲得、実践していくという流れができました。

NPOの役割とは

それでは、日本ではどうなっているのか。今、NPOに社会的課題解決力が求められる3つの理由をお話します。
1つ目は、少子高齢化。日本の危機は、少子高齢化社会の到来です。増える高齢者、減る生産人口。今(2000年)は、高齢者一人当たりを3.6人で支えている状態ですが、2050年には、1.2人で支えることになります。少子高齢化により税収が減る一方、社会保障が増えるため、支出は増えます。 行政は今までと同じサービスは提供できない状態になりますので、企業やNPO、みんなが協力して担っていくしかありません。NPOの役割は、行政や企業が気付きにくい現場のニーズ、声を拾って、新しい支援モデルを開発することです。そして、収益性や事業性をつけるために企業が携わり、行政が制度化します。NPOや市民活動が頑張らなければ、今後の日本社会は支えらないのです。

増える高齢者と減る生産人口

 2つ目は、多様性への対応です。これまで、日本社会でないがしろにされ、虐げられてきた社会的マイノリティの人たちを認め、受け入れ、彼らが生きやすい仕組みづくりをしていこうという空気が加速しています。LGBTに対して、東京都渋谷区はパートナーシップ条例を定めました。また障害者差別解消法が制定され、企業には障がい者に対する合理的な配慮が求められます。しかしながら行政は細かいところまでサービスやフォローができないですし、企業は収益性や事業性が見えないところには動きづらい。そういうところに網をかけ、拾っていくのが、NPOや市民活動の役割です。
3つ目は、NPOの組織の脆弱性です。内閣府の国民アンケートによると、「社会のニーズや課題に対して市民自らが自主的に取り組むことは大切ですか」という質問に対して、92%が「大切」と回答しました。そして、「NPO法人を知っているか」の質問については、89%が「知っている」と回答しました。
一方、「NPOを信頼できる」は64%でした。つまり、「NPO法人は知っているが、信頼できない」と考えている人が4分の1もの割合でいるということです。 休眠預金の活用が実現した場合には、年間800億円のお金がソーシャルセクターに流れ込むかもしれません。これを受け取るための条件は、社会的成果を出すことができる団体であるどうかです。成果とは何かを定義し、表出し、数値化・定量化し、報告できる強さや基盤をもった団体しか800億円というお金にはアクセスできません。

今後求められるのは、NPO団体が成果を出すためのマネジメントノウハウを獲得し、実行できるかどうかです。そのために、トヨタNPOカレッジ「カイケツ」というプログラムが始まります。トヨタ自動車が長年培ってきたマネジメントノウハウをNPO団体に提供し、成果の出せるマネジメントを学ぶことができる個別指導中心の講座です。これを機会に成果の出せる組織団体になっていってほしいです。

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