公益財団法人トヨタ財団

財団の取り組み

理事長ごあいさつ

ごあいさつ

公益財団法人 トヨタ財団 理事長 羽田 正

トヨタ財団は、1974年にトヨタ自動車工業株式会社およびトヨタ自動車販売株式会社(後に合併してトヨタ自動車株式会社)からの出捐を受けて設立されました。今年で設立50年を迎えます。試みに50年前の1974年、財団が設立された頃の日本の状況はどのようなものだったのかを調べてみると、興味深い事実に気づきます。前年に起きたオイル・ショックの影響で、この年日本の物価は23%上昇し、「狂乱物価」という語が生まれました。第二次ベビー・ブームが続き、7月に開かれた「第一回日本人口会議」では、人口の増えすぎを危惧して「子どもは二人まで」という趣旨の大会宣言を採択しています。物価を下げることと人口を減らすことが当時の急務な課題だったのです。物価を上げることと子供の数を増やすことに政府が躍起となっている現在の状況とはおよそ対照的です。社会の状況が50年でこうも変化することには驚きを覚えます。
あらためて記すまでもありませんが、トヨタ財団はこの50年間、生活・自然環境、社会福祉、教育文化等の多領域にわたって時代の要請に対応した課題をとりあげ、その研究ならびに事業に対して助成を行なってきました。時代が進むにつれてその要請は変化しますから、助成プログラムの構成と内容は不断に見直さねばなりません。今年度、新たな特定プログラム「人口減少と日本社会」を立ち上げるのは、そのためです。どのような見方をとるにせよ、これが現代日本において真剣に考えるべき重要課題であることは間違いないでしょう。これまでの施策や取り組みについての丁寧な調査と適切な評価に基づいた斬新で魅力的な計画や提案が数多く寄せられることを願っています。

財団創立50周年を記念して、今年度は、通常の助成プログラムに加えて、記念助成と国際シンポジウムを行ない、50周年特設ウェブサイトを開設します。
記念助成は、「50年後の人間社会を展望する」がテーマです。50年後の人間社会の姿はどのようなものになるのでしょう。月並みですが、平和で人々が幸せに暮らせる世界であってほしいものです。地球環境や国際情勢の変化、技術革新、人口変動、あるいは新たな価値の発見や創造など様々な視角から未来の人間社会のあり方に迫る研究プロジェクトの提案を世界中から募ります。独創的で社会的にインパクトのある多彩なビジョンやシナリオが届くことを期待しています。
国際シンポジウムのテーマは、東南アジア諸国と日本の関係です。トヨタ財団が設立された1974年に田中角栄首相が東南アジア諸国を訪問しています。この時各地で激しい反日デモが発生しました。日本の企業による利潤追求型の急激な経済進出が、現地の人々の反感を買っていたのです。50年後の現在、東南アジア諸国と日本の関係はおおむね友好的です。この間トヨタ財団は、東南アジア諸国の組織や研究者をはじめ様々な立場の人々への支援を継続的に行ってきました。微力ながらも関係好転のために一役買ったのではないかと自負しています。近年になって東南アジア諸国が急速な経済成長を遂げ、日本との関係の内実は大きく変容しました。この変化を踏まえ、相互協力の一層の深化に向けて、民間助成財団の役割にも光を当てながら、意見交換ができればと思います。
50周年特設ウェブサイトでは、トヨタ財団の今後に向けての提言をご紹介するとともに、過去の助成対象プロジェクトが現在どのように発展しているのかについて、いくつかの具体例をご報告します。同時に、トヨタ財団の50年の歩みの一端を、写真等を用いながらビジュアルにご紹介します。
いずれも、過去の単純な回顧に終わらず、「次のトヨタ財団」を展望する未来志向の記念事業となりますので、ご期待下さい。

末尾となりますが、設立時の出捐以来、多くのご支援をいただいているトヨタ自動車株式会社、各種助成への応募者と助成対象者の皆様、それに財団の活動の様々な場面でご支援、ご協力を頂いている数多くの方々に深くお礼を申し上げます。次の50年に向けて、引き続きご指導とご鞭撻をいただければ幸いです。

2024年4月
公益財団法人 トヨタ財団
理事長 羽田 正

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