公益財団法人トヨタ財団

トヨタNPOカレッジ「カイケツ」

第5期トヨタNPOカレッジ「カイケツ」成果発表会レポート

kaiketsu
カイケツ


情報掲載日:2021年1月28日

NPOのマネジメント改善で社会課題の解決目指す

トヨタ財団は1月22日、トヨタ自動車の問題解決手法をNPO向けに伝える「2020年度 トヨタNPOカレッジ『カイケツ』」の成果発表会をオンラインで開催しました。8カ月にわたり組織の問題解決に取り組んできたNPOの代表者は、それぞれ掲げたテーマに対する「問題解決」のステップを「A3資料1枚」にまとめ、その成果を発表しました。

コミュニケーション不足で業務にばらつき

トヨタ財団は、助成金を拠出するだけでなく、NPOに問題解決力を身に付けてもらうことを目的に、2016年から「トヨタNPOカレッジ カイケツ」を開催しています。今期は12団体がカイケツに参加し、グループワークと各組織での実践を通じて、トヨタの問題解決手法を会得していきました。

成果発表会では、10団体がA3用紙1枚をベースに取り組みの成果を発表。運営体制の構築や人材育成、研修制度の充実や業務の効率化など、問題解決のテーマはさまざまです。

NPO法人presents代表理事の佐々木隆紘さん
NPO法人presents代表理事の佐々木隆紘さん

NPO法人presents(東京・足立)代表理事の佐々木隆紘さんは、思いを共にする理学療法士の仲間らと2017年にNPOを設立しました。子育て支援や子どもの居場所づくりを通じて、子どもの自己肯定感を育むことを目指して活動を続けています。

presentsのスタッフは、副業的に携わっているため、代表理事である佐々木さんに業務が集中しがちで、その問題意識からカイケツに参加しました。

「初回の講座を受けて、日常業務のばらつきやコミュニケーション不足が影響して、自身に業務が集中してしまっていたことに気が付きました」(佐々木さん)

そこで、隙間時間でも取り組みやすい「広報業務の強化」を題材に問題解決を進めることにしました。現状把握として、スタッフ6人の各種SNSでの投稿件数などを計測すると、投稿頻度や量にばらつきがあることが分かってきました。

佐々木さんがスタッフに広報業務についてヒアリングを行い、要因分析したところ、「何を発信すれば良いか分からない」「スタッフが多忙」などの意見が出てきました。一方で、「そもそも個別のコミュニケーションが少なく、現状把握もできておらず、広報業務を強化するための体制がつくれていなかったことに気付きました」と言います。

そこで「全スタッフの広報業務を強化するための仕組みの構築」を問題解決のテーマに掲げました。対策として、定期ミーティングや個別面談を開いたり、目的意識を共有する場を持ったりしたところ、少しずつ活性化してきました。

「カイケツの期間内で広報業務の強化という成果までは出せませんでしたが、今後の法人運営に重要な根深い問題に取り組むことができました。今後もスタッフと情報共有しながら、スタッフ育成にも注力していきたい」(佐々木さん)

担当した鈴木直人講師(日野自動車TQM推進室主査)は、「多くのNPOにとって、存在や社会課題を知らせるため、広報は重要な仕事だと思います。今回は単に広報業務を強化するという話ではなく、マネジメントの改善がテーマになりました。スタッフの声を聞き、組織の根深い問題に気付いたことは、今後の糧になったのではないでしょうか」と評価しました。

会議時間の短縮で本来の業務に集中

同じくカイケツに参加するNPO法人宮崎文化本舗(宮崎市)は、1995年から開催している宮崎映画祭を企画・運営してきた実行委員会のメンバーが中心となって設立されました。宮崎文化本舗は文化事業のほか、中間支援団体としてNPO支援、ボランティアのマッチングなどを行っています。

現在、常勤3人、非常勤6人が在籍していますが、どうしても常勤職員の業務負荷が大きく、多岐にわたるため、業務を平準化し、本来の業務である「NPOやボランティアからの相談」に対応できる体制づくりを目指しました。

現状把握として業務時間を計測した結果、会議を設定するための時間や会議そのものの時間、情報誌作成に時間がかかってることが判明します。

NPO法人宮崎文化本舗の武田貴恵さん そこで、会議にタイムキーパー制度を導入したり、アジェンダに時間配分を記載したり、効率的な業務引き継ぎを実施したりしたところ、月7時間の削減につながりました。  職員の武田貴恵さんは、「目に見えて残業時間が減り、その分、それまで残
NPO法人宮崎文化本舗の武田貴恵さん

そこで、会議にタイムキーパー制度を導入したり、アジェンダに時間配分を記載したり、効率的な業務引き継ぎを実施したりしたところ、月7時間の削減につながりました。

職員の武田貴恵さんは、「目に見えて残業時間が減り、その分、それまで残業でカバーしてきた相談業務に時間を割くことができ、余裕をもって対応できるようになってきました」と成果を語ります。

担当した中野昭男講師(のぞみ経営研究所長、元トヨタ自動車、)は、「組織として価値を提供するためどうあるべきかを考えたうえで、本来の相談業務に時間を割くべきという結論に至りました。相談業務の実態と残業の実態を丁寧に調べ、現状把握をしたことが成果につながったのではないでしょうか」と話します。

このほか、参加者からは「メンバーの目標意識を情報共有が促進され、成果につながった」「客観的なデータの提示によって経営課題が明確になった」「論理的な視点と感情的な部分でのサポート、どちらも大切なことを学んだ」といった感想が上がりました。

「2020年度 トヨタNPOカレッジ『カイケツ』」の参加者と講師ら
「2020年度 トヨタNPOカレッジ『カイケツ』」の参加者と講師ら

古谷健夫講師(クオリティ・クリエイション代表、元トヨタ自動車)は、「組織が人や社会の期待に応えてアウトプットを出していくことで、顧客や社会が満足するばかりではなく、働く人の満足にもつながります。これがトヨタの『問題解決』。その先にはNPOの皆さんが目指すSDGs(持続可能な開発目標)の実現にもつながっていくはずです。カイケツはこれで終わりではなく、良いレベルを維持していってほしい」と激励しました。

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