公益財団法人トヨタ財団

トヨタNPOカレッジ「カイケツ」

第6期トヨタNPOカレッジ「カイケツ」第3回レポート

kaiketsu
カイケツ


情報掲載日:2022年3月30日

トヨタの問題解決、本当の原因の見つけ方とは

トヨタ財団は3月23日、トヨタ自動車の問題解決手法をNPO向けに伝える連続講座「第6期(2021年度)トヨタNPOカレッジ『カイケツ』」第3回を実施しました。同講座は、社会課題解決の担い手である非営利組織のマネジメントを改善し、より大きな成果を出してもらうことが目的です。第3回は、グループワークで「現状把握」の状況を確認しながら、次回に向けて「要因解析」のポイントを解説しました。

トヨタの問題解決は、「テーマ選定」「現状把握」「目標設定」「要因解析」「対策立案」「対策実行」「効果の確認」「標準化と管理の定着」の8ステップからなります。第6期は全国から9団体がオンライン参加し、参加団体は約7カ月間かけて問題解決のプロセスをA3用紙1枚にまとめていきます。

今回のテーマ「現状把握」は、問題が起きている事実を定量的に把握するステップです。事象をデータ化し、問題点を絞ります。主観ではなく、多くの客観的な事実を集めて定量的に整理します。

トヨタ自動車で長年品質管理に携わってきた古谷健夫講師(クオリティ・クリエイション代表取締役)は、「現状把握は『しぼり込み』が重要です。網羅的になると、机上の検討になってしまい、有効性のある対策立案につながりません。『ルールをつくる』『マニュアルをつくる』といったよくあるものになってしまいます。問題解決のカギは現場にある。必ず現場に向き合って、問題解決の糸口を見つけてほしい」と語った。

種子島で「やりたい」を表現できる文化づくり

カイケツに参加する一般社団法人LOCAL-HOOD(鹿児島県中種子町)の代表理事・湯目由華(ゆのめゆか)さんは、種子島のまちづくりについて語り合うイベント「たねがしまスープ」を運営しています。米デトロイト発で、スープを食べながらアイデアを出し合う「デトロイトスープ」をモデルに、地域住民が自由に「やりたいこと」を表現できる文化づくりに取り組んでいます。

「もともとは地域おこし協力隊として、種子島に移住しました。地域の方と触れ合うなかで、『種子島ではチャレンジしにくい』という声を聞いたのです。それがきっかけとなって、住民が『やりたい』ことを発表し、それをみんなで応援していく文化をつくりたいと考え、『たねがしまスープ』を始めました。同じような課題意識を持つ地域はほかにもあるので、こうした仕組みを広げていけたら」(湯目さん)

たねがしまスープは、住民が「地域を良くするアイデア」を発表し、それを参加者が支援する仕組みです。参加者は、スープ代と投票権を購入し、応援したいアイデアに投票します。最も得票の多い発表者が全投票分の支援金を得られます。これまで地元の高校生などもプレゼンを行ってきました。

たねがしまスープで「空き家リノベーションプロジェクト」を提案した種子島中央高校の生徒
「たねがしまスープ」で「空き家リノベーションプロジェクト」を提案した種子島中央高校の生徒

湯目さんは、これから「『やりたい』ことを表現できる文化」を広げるために、スタッフを増やしながらも「楽しく運営できる組織体制をつくりたい」と考え、カイケツに参加しました。コロナ禍でイベントがオンライン運営に変わるなど、環境の変化もあり、組織基盤を整えたいという思いを強くしたといいます。

カイケツでは、「たねがしまスープ運営における『やりがい指標』の設定とその向上」をテーマに掲げ、問題解決のステップに取り組んでいます。6月ころには、次回たねがしまスープをオフラインとオンラインのハイブリッド型で開催する予定です。

湯目さんは「たねがしまスープを支えてくれる運営メンバーの満足度が不明確という課題がありました。現状把握のために、ヒアリングするなかで、たねがしまスープを成功させることが、運営メンバーの共通の思いであると認識できました。カイケツを通して、やりがいの指標をつくり、満足度を向上させ、みんなが楽しく運営できる体制を整えたい」と意気込みます。

問題の真因を「5なぜ」で追及する

講座の後半では、鈴木直人講師(元日野自動車TQM推進室室長)が、「現状把握」の次のステップ「要因解析」の解説を行いました。設定した目標を達成するために、問題を発生させている要因を探っていくのが「要因解析」です。

鈴木講師は、「『要因解析』で最も重要なのはじっくり考えること。簡単に切り上げず、真因にたどり着くまで考え抜くことが大事」と強調します。

真因とは「それがつぶせれば問題が解決される」レベルの要因で、「突き止められないと解決できない」といいます。

例えば、「マニュアルがないからマニュアルを作る」は問題解決としては不十分です。「なぜマニュアルがないのか」を深く追求しなければ、実効性のないマニュアルになってしまったり、マニュアルを作っても使われなかったりするなど、問題が解決しません。

「特性要因図」の作り方を説明する鈴木講師
「特性要因図」の作り方を説明する鈴木講師

要因解析の手法で、よく使われるのが、「魚の骨図(フィッシュボーン)」と呼ばれる「特性要因図」です。

特性要因図は、まず、右端に特性(結果)を記入します。次に、4M (人、機械・設備、方法、材料)で分類しながら、魚の骨のように要因を書き出していきます。この時に、「なぜ、なぜ」を5回程度繰り返しながら、要因を分解するのがポイントです。

鈴木講師は「『要因解析』のステップでは、複数人で自由に意見を出し合うことが重要。ただし、ブレーン・ストーミングをしているときに批判してはいけない。自由奔放なアイデアを歓迎し、より良いアイデアに発展させていくことが大切」とアドバイスしました。

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