カイケツ
情報掲載日:2022年4月25日
トヨタの問題解決、対策の前に正しい「要因解析」を
トヨタ財団は4月20日、トヨタ自動車の問題解決手法をNPO向けに伝える連続講座「第6期(2021年度)トヨタNPOカレッジ『カイケツ』」第4回を実施しました。同講座は、社会課題解決の担い手である非営利組織のマネジメントを改善し、より大きな成果を出してもらうことが目的です。第4回は、グループワークで「要因解析」の結果を共有しながら、次の「対策立案」のステップに向けて議論を進めました。
トヨタの問題解決は、「テーマ選定」「現状把握」「目標設定」「要因解析」「対策立案」「対策実行」「効果の確認」「標準化と管理の定着」の8ステップからなり、参加団体は約7カ月間かけて問題解決のプロセスをA3用紙1枚にまとめていきます。
今回のテーマ「要因解析」は、「なぜ」を5回繰り返しながら、問題を発生させている要因を特定していくステップです。ブレインストーミング形式で、さまざまな視点から考えられる要因を洗い出し、真因を絞り込みます。その真因に対する「対策」を立てるのが、次のステップ「対策立案」です。
トヨタ自動車で長年品質管理に携わってきた古谷健夫講師(クオリティ・クリエイション代表取締役)は、「つい『正解』を求めがちになりますが、マネジメントの世界に正解はありません。自分たちの頭で考えたことが、一番の正しい道。そのためにも問題解決のストーリーを意識し、一連のプロセスを大事にしてほしい」と話しました。
顔の見える関係築き、災害に強いまちづくりを
カイケツに参加している認定特定非営利活動法人愛知ネット(愛知県安城市)の増田貴子さんは、安城市民活動センターのセンター長として、まちづくりに取り組んでいます。
愛知ネットは、防災・災害支援のNPOとして設立され、災害時に活動する市民団体と顔の見える関係を築くことを目的に、指定管理者として愛知県内で4つの市民活動センターを運営しています。
「いざ被災したときに、地域力が欠かせません。災害に強い地域づくりをしていくうえで、行政や市民活動団体との信頼関係が重要です。市民活動センターはその拠点となる施設で、災害時に助け合えるネットワークを構築していきたい」(増田さん)
カイケツでは、問題解決のテーマに「信頼関係を構築するための相談業務のフォローとサポートの仕組みをつくり、相談者の満足度を上げる」ことを設定しました。
市民活動を推進する安城市民活動センターには、市民活動団体などから年間約400件の相談が寄せられています。その内容は「ボランティアや社会貢献をしたい」「オーガニックに関する上映会を始めたい」「集客に困っている」などさまざまです。
「中間支援組織として、協働を進めることがミッションの一つ。これまではほかの市民活動団体や行政、企業などにつなぐことに集中していて、相談者の満足度にはあまり目を向けてきませんでした」(増田さん)。そこで、相談者に対して満足度のアンケートを実施することになりました。
古谷講師は「満足度は、品質そのもの。相談者の満足度が上がれば、スタッフの満足度も上がってくるはず。アンケートの結果をありのまま受け入れることが重要で、不都合な事実にふたをしてはいけません」。
そのうえで、「『相談者に満足度を聞く』だけでは、問題は解決しません。これまでなぜ聞けていなかったのか。そもそもの発想がなかったのか、仕組みがなかったのか、何らかの阻害要因があるはず。要因解析の作業として、スタッフから考えられる要因を上げてもらい、いろんな視点で見直すことが重要です」とアドバイスしました。
増田さんは「相談者とのやり取りがラリーのようにつながることで、活動が活発化していきます。そういった姿をイメージしながら、市民団体の皆さんの活動の発展にどう貢献できるのか、考えていきたい。カイケツを受講して本当に良かった。これからの活動が違ったものになりそうです」と話します。
あらゆるアイデアから対策案をしぼり込む
講座の後半では、中野昭男講師(のぞみ経営研究所代表)が、「対策立案」の進め方とA3資料のまとめ方を解説しました。
要因解析の次のステップとなる「対策立案」は、要因解析で突き止めた「真因」に対応させながら対策案を洗い出す作業です。
中野講師は「『対策ありき』ではなく、あらゆるアイデアを出して、そのなかから最適な対策案を導く。『あれはできない、これはできない』といったことは考えず、量を優先してとにかくアイデアを出し、その後、最適な対策案をしぼっていくのがポイント」と説明します。
対策立案の進め方は次のとおりです。
- 方向性整理:真因が解消された状態を整理する
- 対策案検討:具体的な対策案(アイデア)を多く抽出する
- 対策案評価:対策案を評価して最適な対策案を決める
例えば、「不具合が発生する」という事象に対して、真因が「知識不足」「処理手順が不統一」ということであれば、「知識向上」「手続きの統一」が、真因が解消された状態になります。そのために「手続き手順を自動化する」「勉強会を実施する」といったことが対策案となります。
たくさん出された対策案から絞り込む際は、「効果(その対策を実行したならば、どれほど効果が見込めるか)」「実現性」「コスト」の観点で評価するのがポイントです。
これら一連の問題解決のステップは、最終的に「A3資料」にまとめていきます。中野講師は、「問題解決は、自分でストーリーを作っていくチャレンジでもあります。初めての人にも分かりやすい表現や発表を心掛けてほしい」とまとめました。