公益財団法人トヨタ財団

トヨタNPOカレッジ「カイケツ」

トヨタNPOカレッジ「カイケツ」第1・2回レポート

kaiketsu
カイケツ


情報掲載日:2016年6月13日

トヨタ財団は5月19―20日、トヨタNPOカレッジ「カイケツ」を開講しました。1日目は、トヨタ自動車の問題解決手法について講義を受け、2日目には5グループに分かれ、それぞれの団体が、業務上の課題を選定する「現状把握」を行いました。当日の模様を報告します。

なぜNPOに「問題解決」が必要か

公益財団法人あいちコミュニティ財団の木村真樹代表理事
PubliCoの山元圭太代表取締役COO
オルタナの森摂代表取締役兼編集長

19日、会場となったウィンクあいち(名古屋市)には、公募で選ばれた30団体のNPO幹部が集まりました。冒頭で、トヨタ財団の大野満・事務局長が挨拶。トヨタ財団は1974年の創設以来、助成件数約7900件、総額179億円に上る支援を行ってきました。

大野事務局長は、「カイケツ」を企画した理由として「複雑化する社会的課題を解決していくためには、NPOに助成金を提供するだけではなく、一歩踏み込んだ支援をしていくべきだと考えました」と説明。トヨタ自動車の問題解決手法は、課題の真の原因を探るため、「あらゆる組織で適応できるノウハウ」と強調しました。

大野事務局長の挨拶後、「カイケツ」の企画協力を行う3団体の代表による、1人20分弱の講演が行われました。登壇したのは、公益財団法人あいちコミュニティ財団の木村真樹代表理事、PubliCoの山元圭太代表取締役COO、オルタナの森摂代表取締役兼編集長の3人。

木村代表理事は、バックキャスティングでの事業づくりの重要性を説き、山元代表は、人口減少により、行政の力だけでは公的サービスが維持できなくなるとし、NPOにこそ課題解決力が求められると話しました。森代表は、広報戦略について「大切なメッセージは、短く13文字以内で伝えること」と説明しました。

トヨタ流「問題解決」とは

トヨタ自動車業務品質改善部の古谷健夫主査

「カイケツ」の講師の一人、トヨタ自動車業務品質改善部の古谷健夫主査は「トヨタの問題解決」について、その手法と意義を説明しました。(写真4)
古谷講師は、「問題解決とは、PDCAを回すこと。それは、マネジメントそのもの」と伝えました。あらゆるサービスの品質を良くするために、PDCAを回して、品質管理を行っていきますが、顧客が品質を決めるため、時代に合わせて、求められる品質に「ばらつき」が生じてしまうといいます。

古谷講師は、「この変化に気付くことがポイント」と断言します。その理由は、このばらつきに対応することで、「新たな価値を創造することができるから」です。では、いち早く顧客のニーズの変化に気付くためには、どうすれば良いのでしょうか。古谷講師は、「SDCAが大切」と言います。

SDCAのSは「標準化:Standardize」という意味です。「いつもの状態が分かっているから、いつもと違うことにすぐ気付ける。気付けば、PDCAを回して、新たな質の創造ができる」(古谷氏)

古谷講師は、再三、発生した問題の真の原因について探るべきだと強調しました。「ミスをした人を攻めるのではなく、ミスが起きた構造について調べ、改善していくべき」。

なぜNPOに「問題解決」が必要か

田中惇敏・任意団体Cloud Japan(NPO法人申請中)代表理事

20日は、30人のNPO幹部が6人ずつ5グループに分かれて、個別指導が行われました。各グループに、トヨタ自動車で品質管理に携わってきた現役・OBが講師として1人付き、それぞれの団体が抱える課題を洗い出しました。

NPOに対して、標準化することの大切さを説いた講師は、Cグループの河合武雄・河合WORK研究所所長。河合講師は、トヨタ自動車で40年以上、品質管理に携わってきた経歴の持ち主。

今回の受講生のなかで最年少の田中惇敏・任意団体Cloud Japan(NPO法人申請中)代表理事(23)は、「スタートアップにおけるスタッフのビジョン共有」「役割分担の適切化」「巻き込み力」の3つを課題として挙げました。


田中氏は、空き家を改装して若者向けのゲストハウスをつくる事業を行っています。ゲストハウスの運営を、各地域の若者に任せ、地域課題の解決を図ります。現在は、気仙沼で運営していますが、他地域に展開していくときに、ビジョンの共有ができるのか不安だと明かしました。

この悩みについて、河合講師は、「まず気仙沼のモデルを標準化すること」とアドバイスしました。気仙沼で上手くいっている要因を数字やデータで表し、その数値を他地域に展開していくときの基準にするべき」。初日に、古谷講師が講演で話した、SDCAのSを定めることの大切さを強調しました。

グループワーク

古谷講師のAグループではまず、一人30分間の持ち時間で、(1)どんな顧客に対して(2)どのような価値を持って(3)何(モノ・サービス)を提供しているか――の3点を質問。その後、体制と役割、業務の流れを整理し、どこに問題がありそうかを確認していきました。

例えば、名古屋の動物愛護団体NPO法人familleの守随智子さんは、殺処分ゼロを目指し、保護犬や老犬のシェルターなどを運営しています。多数のボランティアが活動を支えてくれていますが、ボランティアを定着させることに難しさを感じています。そこで、何が問題かを確認するために、ボランティアの登録数や離脱率、満足度などデータを集めることになりました。

古谷講師は、決めつけないで、現状把握に必要な事実・データを集めること、ヒアリングでは原則人の生の声を聞くことなどを求めました。

第3回目の講座は6月16日に開かれます。今回の内容を踏まえたグループワーク・個別指導を行い、「現状把握」「目標設定・要因解析の検討」を行います。

(記事執筆:株式会社オルタナ 池田真隆氏)

講座後の懇親会
19日講座後の懇親会にて
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