公益財団法人トヨタ財団

トヨタNPOカレッジ「カイケツ」

第5期トヨタNPOカレッジ「カイケツ」第5回レポート

kaiketsu
カイケツ


情報掲載日:2020年10月23日

トヨタの「問題解決」:真因の追求が有効な対策に

トヨタ財団は10月19日、「2020年度 トヨタNPOカレッジ『カイケツ』」の第5回をオンラインで開催しました。トヨタ自動車の問題解決手法をNPOに伝えることで、組織力の強化や社会課題の解決に役立ててもらうことが目的です。今回のテーマ「対策立案」は、要因解析で探った真因を解決するための対策を立てるステップ。これまでの問題解決の取り組みをA3資料にまとめ、グループ内で中間発表も行いました。

カイケツでは、「テーマ選定」「現状把握」「目標設定」「要因分析」「対策立案・実施および効果の確認」「標準化」など、問題解決の一連のステップをA3用紙1枚にまとめ、立てた対策の効果を確認し、それを定着させることまでを目指しています。

「対策立案」は真因に対する対策内容を整理して、実行計画を立てるステップ。5W1Hを明確にして、最も効果的と思われる対策案に取り組んでいきます。

環境事業を収益化し、沖縄の自然守る

特定非営利活動法人おきなわ環境クラブは「散乱ゴミ」の調査も実施している
特定非営利活動法人おきなわ環境クラブは「散乱ゴミ」の調査も実施している

カイケツに参加する特定非営利活動法人おきなわ環境クラブ(沖縄県那覇市)は、美しい海岸やマングローブ林で育まれる多様な生態系など、沖縄の環境価値と暮らしとのつながりを人々に感じてもらい、保全したいと思う心を育もうと活動を続けています。

那覇市と豊見城市の間にあるラムサール条約登録湿地「漫湖」を拠点に、環境学習プログラムなども実施しています。

おきなわ環境クラブの立田亜由美事務局長は、「明確な到達目標や成果、マイルストーンを設定した事業運営が行われていない」という課題と、特定の組織からの業務委託に資金を依存する運営体制に対する危機感があり、カイケツへの参加を決めました。

カイケツでは「みんなで企画立案、能力向上作戦」をテーマに掲げ、事業担当者が企画立案できる状態を目指していきます。

立田事務局長は「環境保全は、ボランティアという印象が強く、収益化が難しい。事務局長になった当初、団体としては本来の活動趣旨と多少異なる事業であっても、資金を得るために手あたり次第になっているところもありました」と振り返ります。

10年ほど前から少しずつ運営体制の見直しを図り、自分たちの「アイデンティティー」となる事業の開発に着手。現在力を入れているのが、「散乱ゴミ」をテーマにした環境教材の開発です。

立田事務局長は「『捨てた』という意識がなくても、意図しない形でゴミは陸から川へ、川から海へと流れついています。『散乱ゴミ』の現状を広く知ってもらい、まずは『捨てない』『自分のごみは自分で拾う』といったところから習慣化してもらえるような教材をつくっていきたい」と意気込みます。

さらに「当団体の可能性を広げ、自分たちが本来やりたい事業を実現していくためにも、寄付金、自主事業、受託事業の収入バランスも整えていきたい」とも話しました。

「人がいない」では解決しない

特定非営利活動法人おきなわ環境クラブの緑化活動
特定非営利活動法人おきなわ環境クラブの緑化活動

NPOでも企業でも「もっと人がいれば」と考えることは少なくありません。今回のカイケツでも、「業務が一人に集中する」「時間がない」という悩みが多く、「もっと人がいれば解決するはずだ」という声が複数あがりました。

それに対し、中野昭男講師(元トヨタ自動車、のぞみ経営研究所長)は「『なぜなぜ』を繰り返す真因追求の結果、『人がいない』という結論に至ってしまうと、解決が難しくなってしまう」と指摘します。

「例えば、『会議の準備に時間がかかる』という問題に対して、『人がいないから時間がかかる』と結論づけるのではなく、なぜ時間がかかってしまうのかを分解する必要があります。そのなかでシステムの問題なのか、情報共有に問題があるのかなどが見えてきます。真因が分かれば、それに対する『対策』も見えてくるはずです」(中野講師)

「対策立案」のワークショップを終えて、参加者からは「同じ悩みでも、要因解析をしてみると違った対策が出てきて、一連のステップを踏んでいく重要性が分かりました」という感想もありました。

今後、カイケツの参加者は「対策立案」を実行し、1月にその成果を発表します。

古谷健夫講師(クオリティ・クリエイション代表、元トヨタ自動車)は「成果発表会はより良くなるための通過点で、ゴールではありません。その先にあるものを目指して取り組んでいってほしい。トヨタの『A3資料』は、第三者に分かりやすく伝え、仲間を巻き込むためのもの。ぜひストーリーと起承転結があるにこだわってほしい」と激励しました。

ページトップへ