カイケツ
情報掲載日:2018年7月26日
「作業のやり直し」をどう減らすか
トヨタ財団は7月19日、トヨタ自動車の問題解決手法をNPO向けに伝える第3期「トヨタNPOカレッジ カイケツ」を開催しました。第4回のテーマは、「目標設定」と「要因解析」です。前回のステップ「現状把握」で明確になった問題に対し、目標を設定し、なぜその問題が起きているのか、真の要因(真因)を探りました。(オルタナ編集部=吉田広子)
真因を探る要因解析のコツ
グループワークの冒頭で、中野講師は、第1ステップの「テーマ選定」から第4ステップの「要因解析」までの流れを改めて整理しました。
中野講師は「テーマは、結果として何を実現したいのか、一文で表現することが大切。テーマ選定は、なぜその問題に取り組むのか、背景にも触れながら、問題を明確化していくステップ」と説明します。
次のステップ「現状把握」では、「いつ」「どこ」「だれ」「何を」など層別に現状を把握し、問題の絞り込みを行います。第3ステップ「目標設定」では、問題に対し、「いつまでに」「何を」「どれだけどうするか」を設定。第4ステップ「要因解析」では、取り組む問題に対する真因を特定します。その次のステップが真因に対する対策を立てる「対策立案」です。
例えば、「社員の残業時間の軽減」をテーマにした場合、グループや年代別に残業時間のデータを取り、現状把握を行います。
その結果、「Bグループ」の「入社2~4年目」の社員の残業が多いことが分かると、その問題に対し、「10月までにBグループの入社2~4年目の残業時間を半減する(月40時間を月20時間にする)」といった目標を設定します。十分に現状把握を行うことで、適切な目標設定をすることができます。
続く「要因解析」のステップでは、「なぜ」を5回繰り返したり、魚の骨の形をした特性要因図を作成したりしながら、真因を探ります。
真因の特定にあたって、中野講師は「あせったり、中飛ばししたりせずに、事象でとらえていくことが要因解析のコツ」と話し、次の例を紹介しました。
A:「資料作成のやり直しが多い」⇒「正しい方法を知らない」⇒「指導力あるいは本人の能力不足」
※真因にたどり着かず、対策立案につながらない
B:「資料作成のやり直しが多い」⇒「正しい方法を知らない」⇒「口頭で指導している」⇒「文書がない」⇒「文書を作成する」
※真因が特定され、対策立案につながる
ボランティアが気持ちよく働ける場づくり
カイケツに参加しているNPO法人ペアレント・サポート すてっぷ(岡山県倉敷市)理事長の安藤希代子さんは、障がい児の保護者支援活動を行っています。当事者による当事者支援「ピアサポート」が特徴で、保護者の悩みやストレスを軽減する取り組みや、「子育てハンドブック」の制作などに取り組んでいます。
安藤さんは「支援事業は順調な一方で、梱包作業や庭仕事などバックヤード業務の整理ができていませんでした」と話します。安藤さんは「NPOとして社会に開かれた存在でありたい。パートやアルバイト、ボランティアなどさまざまな外部の方に、気軽に気持ちよく手伝ってもらえる環境をつくりたい」と意気込みを語りました。
古谷講師は、人が変わっても作業が引き継がれたり、教えたりするための道具として「作業要領書」の作成手順を説明。さらに、トヨタ自動車の事例として、工具の置き場所を徹底する「4S(整理、整頓、清掃、清潔)」を紹介しました。
古谷講師は「どのような職種でも、ほとんどの仕事は2人以上の共同作業で成り立っています。当たり前に思えることでも、『見える化』することが大切」と話しました。
NPO法人Cloud JAPAN(宮城県気仙沼市)は、ゲストハウス「架け橋」を運営するほか、同施設を絵本カフェとしても地域に開放しています。同NPOの村松ももこさんは、作業が属人的になり、業務のムダが多いという問題を抱え、カイケツの講座では、細見講師と、情報共有と確認のプロセスを見直しています。
村松さんは「カイケツに参加して、問題に気付き、どうしたら改善できるか、自身もスタッフも考えるきっかけになっています」と語りました。
トヨタ自動車の「問題解決」の8ステップ
- 1.テーマ選定:
- 改善したい課題を1文にまとめるステップ。テーマを読めば、改善の狙いが理解できるように表現する。「どこで」「何を」「どのように」の3項目を具体的に書く。
- 2.現状把握:
- 問題が起きている事実を定量的に把握するステップ。事象をデータ化し、問題点を絞る。主観ではなく、多くの客観的な事実を集めて定量的に整理する。
- 3.目標設定:
- 目標を設定するステップ。その目標を達成すると、選定したテーマを解決できるレベルに設定する。
- 4.要因解析:
- 原因についての真因を探るステップ。事象に対して、5回の「なぜ」を繰り返す。現状把握と混同して考えてしまいがちだが、現状把握では要因は書かない。事実だけをまとめる。
- 5.対策立案:
- 要因解析で見つけた真因を解決するための対策を立てるステップ。真因ごとに、「対策内容」「担当者」「期限」に分けて記入する。真因への対策をいきなり考えるのではなく、方向性を明確にしてから、アイデアを出していく。
- 6.対策実行:
- 実行する対策の内容やスケジュールをまとめるステップ。
- 7.効果確認:
- 実施した対策内容によりどの程度効果が出たのかを評価するステップ。
- 8.標準化と
管理の定着: - 効果の出た対策の内容を標準化し、定着させるステップ。同じ問題の再発を防ぐことができる。