カイケツ
情報掲載日:2017年7月25日
トヨタ財団は7月13日、トヨタ自動車の問題解決手法をNPO向けに伝える「トヨタNPOカレッジ カイケツ」第4回を開催しました。今回は「問題解決」の8ステップの「目標設定」と、問題の真因を探る「要因解析」。17団体の代表が4グループに分かれて、要因解析の手法「5なぜ」などを行いながら、問題の解決方法を探りました。その模様をレポートします。
目標はより具体的に設定
特定非営利活動法人芦生(あしう)自然学校(京都府南丹市)の総務部長・青田真樹さんは、本来の業務である企画や総務の仕事に時間を割くため、働き方の見直しを進めています。青田さんは、京都・美山を拠点に、芦生自然学校を含めた5つの組織で働いています。
現状把握として、どの業務にどのくらい時間をかけているか、労働時間の記録を付けたところ、最も時間を割いていたのが会議や打ち合わせで、その次が移動時間でした。京都市内にある行政機関との打ち合わせも多く、移動時間だけで全体の2割を占めていることが分かりました。
「体感的に時間がかかっていることは感じていましたが、ここまで会議や移動に時間をかけていたことに初めて気付きました」(青田さん)
現状把握の次は「目標設定」です。藤原講師は、「初めから長期的で大きな目標を立てず、まずは3カ月程度先をゴールに見据えて、頑張れば達成できそうな目標を設定するのが良い。問題解決のステップを繰り返していくことで、段々と大きな問題にも対応できるようになります」と助言します。
青田さんは今後、会議の資料作成と移動時間に焦点を当て、どのくらい削減するか、パーセンテージや時間など数値で目標を設定していきます。
なぜ整理・整頓ができないのか
設定した目標を達成するために行うのが、問題を発生させている要因を探る「要因解析」です。よく使われているのが、「魚の骨図(フィッシュボーン)」と呼ばれる「特性要因図」。杉浦講師は、「一度、『特性要因図』を作成すると、問題解決の基礎を学べます」と説明しました。
特性要因図の作成方法は、まず、右端に特性(結果)を記入します。次に、4M (人、機械・設備、方法、材料)で分類しながら、魚の骨のように要因を書き出していきます。この時に、「なぜ、なぜ」を5回繰り返しながら、要因を分解するのがポイントです。
あるNPOは、スタッフのゴミ捨てに関する問題を抱え、「9月までに事務所の掃除レベルを100%にする」という目標を設定しました。
中野講師は、「『ムリ・ムラ・ムダ』を無くすトヨタ生産方式の基本は5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)。なかでも、整理、整頓の2Sは基本中の基本」と言います。
「ゴミ捨てをしない」という特性に対して、場所に関する要因として「捨て場所が分からない」、人に関する要因として「意識が低い」「指示がない」、物の要因として「道具が分からない」、方法の要因として「捨てて良いか分からない」「目的が分からない」――などが挙げられました。
中野講師は、「整理・整頓ができていないということは、要るか、要らないか、判断基準がないということ。掃除をきっかけに、組織の運営が一歩前進するはず」と話します。
防災備蓄食品の配布を効率的に
防災備蓄食品を福祉施設やフードバンクに寄贈したり、リサイクルしたりするなどして、食品ロス(フードロス)を削減しているのは、食品ロス・リボーンセンター(東京・千代田)です。
都や市町村、民間企業などから防災備蓄食品を受け取り、賞味期限内であれば、福祉施設やフードバンク、生活困窮者、子ども食堂などに寄贈しています。賞味期限切れのものは、食品リサイクル事業者が肥料やバイオマスにリサイクルします。
2016年は食品約50トンを寄贈し、約10トンをリサイクルに回しました。2017年は約3倍にあたる150トンの処理を目指しています。
代表理事の山田英夫さんは、「困っている人がいれば何とかしたいと思い、できる限り対応してきましたが、物流や管理体制が複雑になっていたことに気付きました。ガイドラインやルールを作成し、効率的な分配を進めたい」と話します。
山田さんは、資金調達の拡大と、関係者との関係を構築し、組織の基盤づくりを行いたいという思いから、カイケツに参加しています。
同団体の山田怜奈さんも「行政からの支援はあるものの、ボランティア的な事業にとどまっていたことが分かりました。持続的に事業を続けていくために、どのように経費を抑えられるのか、どうやって収益化するかを考えていきたい」と意気込みます。
古谷講師は、「ガイドラインの作成は、あくまで対策の一つ。何のためのガイドラインなのか、ガイドラインを作ることで、どのような姿・状態になりたいかを思い描くことが大切」と言います。
「要因解析」の次のステップは「対策立案」。「組織内で対策を実行しようとすると、抵抗されることもあります。A3にまとめることで、説得力が増し、協力が得やすくなります」(古谷講師)
活動紹介は「13文字」で
講座終了後には、オプショナル講座が開かれ、オルタナの森摂編集長が「引き算の広報戦略」について話しました。「幕の内弁当」のように、いろいろ入っていても、何を伝えたいのか分からない「足し算の広報戦略」に対し、「うな重」のように離れていても一目で分かり、匂いが漂ってくるような広報戦略を「引き算の広報戦略」と呼んでいます。
森編集長は「団体や活動紹介は、できるだけ簡潔にした方が伝わりやすくなります。新聞やヤフーニュースの見出しなどは、13文字以内で言い切っています」と説明しました。
13文字にまとめる手順としては、まず、「これを入れておきたい」というキーワードを10ほど選びます。そのうち、必須のキーワードを3つほどに絞り込みます。これを一つの文章に組み上げ、文字数があふれたら、短くしていきます。
森編集長は「理想は13文字、長くても25文字以内にまとめてほしい。常に情報を短くまとめる訓練をすることで、頭の整理もでき、組織内外に伝わりやすくなります」と話しました。
カイケツの第5回は、8月3日に開催されます。グループ内で中間発表を行うほか、「対策立案」の計画を立てていきます。
(記事執筆:株式会社オルタナ 吉田広子氏)