カイケツ
情報掲載日:2018年5月29日
トヨタ流「問題解決」をNPOに伝授 「カイケツ」開講
トヨタ財団が主催する「トヨタNPOカレッジ カイケツ」が5月17日に開講しました。「トヨタNPOカレッジ カイケツ」は、7カ月間にわたり、トヨタ自動車が培ってきた問題解決の方法を実践的にNPOに伝えるプログラムです。3年目を迎えた今年も、大分や広島、宮城など全国から集まったNPO17団体が参加しています。
(オルタナ編集部=小松遥香)
初日は、1分間自己紹介から始まりました。受講者はそれぞれが抱える、「カイケツ」を通して解決したい問題についても話しました。
山口市阿東地区で地域スーパーや住民の交流の場の運営、見守りサービスなどを行う特定非営利活動法人ほほえみの郷トイトイの高田新一郎副理事長兼事務局長は、「団体専属の職員がおらず、組織内の情報伝達が上手くいっていません。その結果、高齢者の多い地域で住民のみなさんを安心させるサービスを行いたいものの、実現できていません。住民のみなさんの満足度を上げるために、業務を整理し、情報伝達を円滑に行えるための組織づくりのヒントを得たいと思います」と話しました。
「難民の人も歓迎できる社会」をつくるために、国内で難民と暮らすシェアハウス事業などを行うNPO法人WELgeeの林将平さんは、「ビジョンやミッションを実現するために、優先順位をつけて業務に落とし込み、それを定量的に評価し、改善していくことができていません」と運営面の課題を説明しました。
受講者は6-7人のグループに分けられ、それぞれのグループに講師が一人ずつ就きます。講師は、古谷健男・トヨタ自動車業務品質改善部主査、鈴木直人・日野自動車TQM推進室、中野昭男・のぞみ経営研究所所長、細見純子・一般社団法人中部品質管理協会経営企画室兼企画部次長の4人です。
「問題解決」の8ステップ
トヨタ自動車には、問題解決をするための以下の8つのステップがあります。
1.テーマ選定
2.現状把握
3.目標設定
4.要因解析
5.対策立案
6.対策実行
7.効果確認
8.標準化と管理の定着
受講生は、講師の個別指導のもと、1-5までを「カイケツ」を通して半年間学び、その経験を生かして6-7を組織内で実践します。
トヨタ流「問題解決」とは
第1回の講座では、「問題解決」の本質と全体像について説明が行われました。古谷講師は、「品質管理はマネジメントそのものです。マネジメントを良くすれば、品質も良くなります。そしてマネジメントの基本は問題を解決することです」と話しました。
ここでいう「品質」は、製品・サービス、プロセス、システム、経営、組織、風土などあらゆるものの「品質」のことです。品質は「よしあし・ねうち」のことであり、それを判断するのはお客様です。お客様の要求・期待には「ばらつき・変化」があり、商品やサービスにも人的要因ややり方によって「ばらつき・変化」が生じます。
品質管理(Quality Control)とは、その「ばらつき・変化」に的確に対応することであり、お客様の期待に応える新たな価値を創造することです。古谷講師は、品質管理を「『ばらつき・変化』との終わりのない戦い」と語りました。
では、問題とは何でしょうか。問題とは、設定した目標と現実との間に生じる、対策して克服する必要のあるギャップのことです。問題の解決は、基本となる手順に沿って効果的に行うことが重要です。問題解決はすべての基本になります。
問題解決には、「問題解決の見方・考え方」、「問題解決の8ステップ」、「問題解決ツール」の3つの要素があります。受講生は半年間の「カイケツ」を通してこれらを修得し、実践していくことになるが、3つの要素を実践するために特に重要になるのは「見える化(不都合な真実も含めて共有)」と「理解活動(関係部署との調整)」だといいます。
古谷講師は最後に、「職場の活性化・意識改革による良い職場風土の醸成が基盤にあってこそ、ばらつき・変化への対応(品質保証:SDCA)ができ、お客様の期待に応える新たな価値の創造(PDCA)ができます。そしてその結果として、問題解決が実践できます」と講義を締めくくりました。
講義の後、受講生は4グループに分かれて、翌日から行われるグループワークに向けて自己紹介などを行いました。
終了後、古谷講師は、「今回は若い方の参加がこれまでよりも多いです。最後のグループワークで話を聞いた限りでは、総じてまだ課題が見えていないと感じました。さらに現状を調べる必要があります。半年間の『カイケツ』を通して、変化を生み、大小関係なく成功体験を積んでほしいです」と語りました。
細見講師は、「トヨタの問題解決は、事業分野や国籍を問わず有効なものです。『カイケツ』に参加したNPOの方々には、トヨタの手法を学ぶだけでなく、この方法を自分たちのツールとして役立つと手応えを感じてもらいたいです」と話しました。