HOME  >  2018年以前の助成情報  >  国内助成プログラム  >  2013年度国内助成プログラム  >  2013年度国内助成プログラム東日本大震災特定課題 選後評

選考委員長 安藤 雄太

1. この助成プログラムの狙い

今年度の東日本大震災特定課題プログラムは、発災から3年間を経過した東日本大震災被災地の復興まちづくりを促進することを狙いとしている。それにむけて、被災地住民の皆さんが、すでに同じような地震を経験した奥尻島(北海道)、阪神・淡路(兵庫県)、玄界島(福岡)、中越(新潟)の各地を訪問して、現地の関係者から、実際の復興まちづくりのプロセス、そこでの課題と対処を実地に学んでいただく訪問学習を行うことに助成を行うものである。助成金を受けたそれぞれの住民団体の方々は、成果として訪問学習の終了後に、地元で見聞の結果を報告会と報告書によって紹介、共有することが求められている。

2. 選考から採択に至るプロセス

この特定課題は、2013年10月1日〜11月15日にかけて公募を行った。その際、39件の応募が寄せられた。査読ののち、2014年1月7日に選考委員会を開催し、計22件が採択に至った。県別の応募件数、採択件数の概況は以下のとおりである。

岩手 宮城 福島 その他
応募件数 14 18 4 3 39
採択件数 9 12 1 0 22

選考委員会が、企画を査読しているうちに浮かび上がってくるのは、被災地の住民の方々の関心の所在である。奥尻島への訪問学習を計画されている団体は、インフラ面の復興が成っても、人口の減少が止まらない点に関心を寄せている。中越に対しては、若年層の流出防止策について、阪神・淡路に対しては、復興公営住宅におけるコミュニティづくり、玄界島に対しては、仮設住宅での生活における情報共有や求心力づくり、とそれぞれの学習対象地への関心のありどころを見ると、自ずと被災地での問題の所在が浮かび上がる。さらに言えば、後でまた述べるような、若年層の引き留めに直結する、地元でどのように食べていくか、また、増加する高齢者に対してのケアをどのように行うのか、についての関心は全般に共有されているといってよい。

付記すると、応募件数が少ないのは、被災地での緊急支援的な活動が一段落したことと、復興まちづくりにプログラムの狙いを焦点化したことによる。その一方、福島からの応募が少ないのは、今後の課題となる。

3. トヨタ財団事務局への要望

以下は、選考委員会からのトヨタ財団事務局への要望である。

・今回の助成プログラムが採用した訪問学習という方法は、ひとつ間違うと単なる物見遊山に終わるリスクや学習の結果が訪問団体内部にとどまってしまうリスク、がある。それを避けるために、訪問団体と協力し、訪問先で学習した結果を、地元の住民、行政などに積極的に紹介、普及するフォローアップをお願いしたい。

・また、今回助成対象となる地元住民の団体の所在地は、陸前高田、釜石、気仙沼、石巻、東松島、山元などの主要な被災地をカバーしている。これらの被災地間での情報共有を進めるうえでも、これらの団体間の交流を促進する仕掛けを考えていただきたい。

・更に、福島への注力である。福島の場合、広域に被災者が散開しているため、なかなか状況がつかみにくい面があるものの、やはり今後、復興住宅の建設など復興まちづくりへの動きが加速することは間違いない。それも視野に入れた、次年度以降の助成プログラムの枠組みを構築する必要があるだろう。

4. 今後に向けて

東日本大震災発災から3年が経過し、様々な課題がありながらも復興は進捗している。その一方で、被災地住民の方々は、復興過程が一段落した後に再び浮上してくる、高齢者に対するケア、若年層の流出と過疎、雇用といった問題に意識を向け始めていると仄聞する。このような問題群は、日本の中小都市、農村部において普遍的なものであるのは間違いない。トヨタ財団が、このような動向に注目して、先見的な視野をもった助成プログラムを作られることを望む。

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