HOME  >  2018年以前の助成情報  >  国内助成プログラム  >  2013年度国内助成プログラム  >  2013年度国内助成プログラム(一般枠) 選後評

選考委員長 中村 安秀

1.  「人がつながり、地域が動く ―活力溢れる地域の実現」

トヨタ財団の2013年度国内助成プログラムにおいて、「人がつながり、地域が動く ―活力溢れる地域の実現」というテーマのもと、「活動助成」および「地域間連携助成」の2つのカテゴリーを設けました。

「活動助成」では、地域に暮らす人びとが主体となり、地域の特性を踏まえ、多様な人びとや団体が協力し、地域に根ざした持続的かつ具体的なはたらきかけを可能にする仕組みづくりが重要です。地域の自助・自立を促す、様々な人々が共に生きる地域社会の実現を目指す、地域社会を支える人材を育み地域の持続可能性を高める、といったイメージを提示しました。

「地域間連携助成」では、地域課題の解決において実績のある団体などが、共通の課題に直面する他地域の団体などと取り組み、内容や課題解決の方法を共有することにより、活動のステップアップや地域を超える課題解決のネットワークづくりに取り組むプロジェクトを支援したいと考えました。

2つのカテゴリーに共通することですが、一つ一つのプロジェクトが創意に満ちた活動を通じて地域課題の解決に取り組むことにより、地域の自立が促され、活力あふれる地域社会の実現に向けた活動を期待しました。助成期間は、2014年4月1日から2年間(または1年間)で、助成額の上限は600万円(1年間の場合は300万円)です。多様な世代、性別、領域のメンバーが協力し、地域課題の解決に取り組む、持続的かつ意欲的な日本国内のプロジェクトを想定して、公募を開始しました。

2. 「活動助成」および「地域間連携助成」

2013年度の「活動助成」および「地域間連携助成」の募集期間は2013年10月1日から11月8日まででした。本年度からは、すべてウェブサイト上で、登録や企画書応募の受付を行いました。応募件数は「活動助成」231件、「地域間連携助成」67件でした。選考については、5名の識者からなる選考委員が応募企画書を読み込んだ後、選考委員会において長時間にわたり慎重に討議を重ねました。

ここでは、選考委員から高い評価を得たプロジェクトのいくつかを紹介します。

「活動助成」

大都市の独居シニアと地方からくる大学生がシニア宅で共棲する世代間交流ホームシェア・プロジェクトー世代をつなぎ支え合う明るい社会へ向けて
石橋 鍈子(世代間交流ホームシェア・プロジェクト・チーム)
独居老人と若い学生との世代を超えたホームシェアの取り組みは、すでにヨーロッパで広がっています。ただ、このホームシェアが成功するためには、相互に交 流しつつも一定の距離感を確保するという人間関係を維持することが求められます。人間関係に直接に関わるプロジェクトなので、時間と労力をかけて丁寧に取り組んでほしいと感じました。成功すれば、新しい日本人の再発見にもつながる可能性をもつプロジェクトの将来性に期待しています。

小さなまちの地産地消を支える「モバイル屋台の共作共用」プロジェクト
和久 倫也(くにたち「モバイル屋台」プロジェクト)
モバイル屋台という発想は、都市のまちづくりにとっておもしろい試みです。大がかりな仕掛けではなく、誰でも参加できるような舞台を作ることで地域活性につなげようとしています。地域内での支えあいや高齢化にも対応できるので、大規模商店ではできないような、顔の見える買い物空間を創造できることを期待しています。

「地域間連携助成」

全国の小規模林業活動の地域間連携と次世代型の中山間地域の暮らしづくり ─里山に次世代の森人(もりびと)を
平井明日菜(里山へ還(かえ)る・先祖の山守り隊)
衰退する林業への参加を試行するネットワーク形成の社会実験として興味深いものがあります。困難な課題も多々あると推察しますが、農業に従事する若者が多くなったように、林業にもスポットライトが当たるような情報発信を期待しています。

 
ここであげたプロジェクト以外にも、人がつながり地域が動く予感のする魅力的なプロジェクトが数多く提案されました。
2014年1月30日に行われた選考委員会の審議により選ばれた案件について、その支出計画を慎重に再検討した結果、国内助成プログラムとして20件のプロジェクト(助成金合計額7,000万円)を助成対象候補として決定いたしました。その内訳は、「活動助成」15件(金額5,040万円)、「地域間連携助成」5件(金額1,960万円)でした。

3. 全国から東北へ 東北から全国へ

東日本大震災の被災地を訪問すると、県や市町村あるいは小さな行政区レベルで、産業復興、雇用、街づくり、教育、保健医療、こころのケアなど、さまざまな取り組みが活発に行われています。緊急時から復旧・復興期にかけて、全国から多くの行政機関、市民団体、財団、大学などが駆けつけ、その支援はいまも続いています。まさに「人がつながり、地域が動く」活動が継続中です。

一方、災害復興から開発支援に至る時期において、地域の課題は地域住民が主体となって解決すべきであるという最も基本的な原則が大きな争点となっている場合も少なくありません。岩手県、宮城県、福島県で状況は大きく異なり、同じ市町村においても甚大な被害を受けた地区とそうでない地区では、復興のプロセスは大きく違っています。しかし、その解決のための方法やヒントやアイデアは、日本国内に存在しています。

トヨタ財団では、2011年度および12年度に東日本大震災対応「特定課題」として、被災された方々の地域コミュニティの再生に向けた取り組みを支援してきました。そのプロジェクトの活動経験を活かしながら、日本国内で培った地域活動の貴重な経験を被災地における復興や開発に還元するとともに、東日本大震災の被災地での経験事例を日本の他の地域の人々と共有することにより、人がつながり地域が動き、被災地も含めた全国の地域社会に活力があふれるようになることを願ってやみません。

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