財団イベント・シンポジウムレポート
国内助成プログラム対象者向け「参加型評価入門研修」と「中間報告会」を実施しました
情報掲載日:2016年4月28日
プログラム国内助成プログラム
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2015年度対象者向け参加型評価入門研修の様子
【参加型評価入門研修】
2016年4月14日、15日、トヨタ財団では国内助成プログラム2014年度・2015年度の助成対象者を対象として、参加型評価の一手法であるMSC(モスト・シグニフィカント・チェンジ)手法入門研修を実施しました。欧米のNGOが開発したというこのモニタリング・評価手法を日本に導入され、現在、参加型評価ファシリテータとして活躍されている田中博氏を講師にお招きし、2日間で財団の対象者約60名の方々にこの手法について学んでいただきました。
トヨタ財団の国内助成プログラムでは、現在、助成による社会的成果の可視化と一層の社会発信をめざし、企画書へのロジックモデル・成果指標記入欄の導入などインパクト評価に関する様々な取組みを進めています。今回の研修テーマであるMSC手法もこれらの取組みを補完するものとして位置づけており、また手法そのものは、既に2014年度対象者向け経過報告書から、財団への報告の際に対象者の方々に実施をお願いしているものです。
演習のグループワーク後に発表する助成対象者の皆さん
研修では最初に講師の田中氏から、定量化できない変化でもエピソードという形で把握がしやすく、ロジックモデルで想定していない外部要因も評価の視野に含めることができ、さらに説明責任を果たすことよりも学習・改善効果が期待できるというMSC手法の目的や特徴について講義を行っていただきました。その後、「重大な変化の物語(SC)を集める」、「最も重大な変化(MSC)を選ぶ」プロセスについて体感いただく演習にも取り組んでいただきました。
インタビューとグループワーク形式による2つの演習では、対面で「言葉」を介してプロジェクトの「重要な変化(SC)を集める」ことの難しさ(話すのが苦手な人でもうまく話せるようにインタビューを行う側のスキルがある程度必要)や、「最も重要な物語(MSC)を選ぶ」プロセスの中でそのチームや組織の価値観が浮き彫りになるという点について、じっくりと体感いただけたように思います。
助成金によるプロジェクトの業績測定(パフォーマンス・メジャメント)のあり方をめぐっては、まだ財団としても試行錯誤の段階にあるということもあり、参加者からはやはり戸惑いの声も上がっていましたが、コミュニケーション促進や学び・改善効果がより期待できるこの手法について興味深く受け止めて下さった方もいたようです。
それなりに手間暇のかかるモニタリング・手法であるため、事業実施に責任を負う助成対象者にとって過度な負担にならないよう留意しつつも、プロジェクトが直接・間接的に生んだ社会的価値がうまく第3者に伝わるよう、引き続き財団でも企画・報告・モニタリング・評価手法について、検討を行っていきたいと思います。
2014年度対象者による中間/最終報告会の様子
【2014年度対象者・中間/最終報告会】
今回、助成開始から一年という折り返しの節目となった2014年度助成対象者の方々には、14日午前中に中間報告会も併せて実施し、当日のご参加された全チームから助成プロジェクトについてご発表いただきました。
どのプロジェクトも一年間に様々な進捗や成果があがったり、時には想定外の問題に直面したりしている様子が伺えました。ただ主に時間的な制約から、双方向の議論には至らず、一方的な報告のみの場になってしまったのは、今回、事務局として大きな反省点です。
また、報告会では一年助成の枠組みで助成を受けられ最終報告となった与論島・次世代プロジェクトチームの池田龍介氏や、同じく一年助成の検証・提言助成の枠組みで助成を受けられた5つのチームの代表の方々からもご報告いただきました。
数々の報告の中でも、特に参加者アンケートの中で印象的だったとして多くの方から名前を挙げられていたのが、北海道河西郡芽室町を舞台に、「誰もが当たり前に働いて生きていける町」を掲げて農福連携、就労キャリア教育観光、地産地消レストラン、芽室版就労達成定着支援事業の4事業に取り組まれている「プロジェクトめむろ」の且田久美氏の報告です。
報告をする「プロジェクトめむろ」の且田久美氏(右)
報告では、事業のKPI(重要成果指標)を数字や具体例で表し、さらに最重要な変化として、北海道における知的障がい者月額平均工賃が18,846円のところを九神ファームめむろでは10万2,764円を出しているという具体的な数字による説明と言葉による具体的なエピソード(中高6年間、引きこもりで登校2日のみだったKさんを取り上げられ、彼がこのプロジェクトに関わり、働くということ、誰かにとって必要な人になることを経験したことで、昨年障がい者手帳を返還し健常者となったこと、また「働きはじめて、働く前より自由にできる時間は減った。でも自由に決められることが増えた」と語った)が印象的でした。
且田さんたちは普段から「プロジェクトは伝えてなんぼ」ということを意識して事業をされているということで、その心がけが遺憾なく発揮された発表内容だったように思います。
トヨタ財団で助成をさせていただいているプロジェクトは、もともと選考段階で十数倍もの応募をくぐり抜け、貴重な社会的成果が生まれているものも多いのですが、その成果が十分に世の中に伝わらなかったり、次の活動に繋がらなかったりするのは非常に残念なことだと思います。財団としてもモニタリングや報告、評価方法を検討する中で更に助成によって生み出された社会的価値を世の中に伝えていく努力を続けていきたいと思います。
ご多忙の中、研修と報告会にご参加下さった対象者の皆さん、どうもありがとうございました。