HOME  >  2018年以前の助成情報  >  国内助成プログラム  >  2016年度国内助成プログラム  >  国内助成プログラム東日本大震災特定課題の選考について

選考委員長 足達英一郎

東日本大震災特定課題の狙い

2014年度から、トヨタ財団は、東日本大震災の被災地復興支援を目的として、「復興(災害)公営住宅(以下「復興公営住宅」)におけるコミュニティ作りの支援」をテーマに助成を行っている。このテーマを設定した理由は次のようなものである。

・これまで応急仮設住宅に入居していた被災者が、終の棲家となる復興公営住宅への転居が進んでいる

・被災者は、避難所、応急仮設住宅、更には復興公営住宅へと住居を移動する中で、その家族関係・人間関係に大きなダメージを受けている

・復興公営住宅へ入居する被災者の高齢化率は高く、経済力にも乏しい

・被災から6年を経過し、被災者の立場、境遇が多様化している。復興公営住宅に入居した後も、相互のコミュニケーションや求心力あるコミュニティ形成が難しくなっている事例がある

これに鑑み、2015年度東日本大震災特定課題でも、復興公営住宅におけるコミュニティ作りを行うNPOへの助成を実施し、効果的なコミュニティ形成ならびにその支援の方法をとりまとめ、復興公営住宅の住民や行政や社会福祉協議会、NPOなどの周囲の支援団体に対して発信した。



過去2年間に亘って、「復興公営住宅におけるコミュニティづくり」をテーマに助成を行って、獲得できた知見は「復興公営住宅におけるコミュニティづくりの鍵となるのは集会所を始めとした共用スペースの上手な利用である」ということであった。そこで、2016年度においても、引き続き「復興公営住宅におけるコミュニティづくり」をテーマとしながら、共用スペースの利用活性化を切り口とした助成案件を公募することとし、あわせて「共用スペースの使い方について、入居者間の話し合いと知恵出しが促進されること」「入居者自身が、何をなすべきかを決めて、一緒に汗をかくこと」を強調した。これは、自治会と外部支援団体の役割分担を想定しつつも、自治会活動に対する自治体等の奨励的な補助金も拡充されてきていることから、外部支援団体のスタッフが復興公営住宅から撤退したあとも、自治体活動が自立できる状況を重視したいとする考え方による。2015年度と2016年度の支援のイメージの違いをイメージ化すると次のようになる。

公募と選考について

2016年11月9日(水)から12月9日(金)まで公募を実施し、現地復興関係機関も通じて、被災地に向けた公募情報の周知を行った。その結果、被災地で実際に復興支援を行っているNPO団体を中心に10件の申請があり、2017年1月18日(水)に選考委員会を開催し、7件の案件を採択した。申請案件の評価の際には、復興公営住宅入居者とコミュニケーションをとりながら、入居者の自主性を徐々に引き出し、コミュニティづくりに関わる入居者の層の厚みを増すことができるのか、自治会役員と外部支援団体とのコラボレーションで成功したモデル事業とすることができるのか、活動成果や経験の効果的な発信能力ができるのかといった点を重視した。

応募件数・採択件数の県別の分布は次のとおりである。

岩手 宮城 福島 その他
応募件数 1 8 1 0 10
採択件数 1 6 0 0 7

採択案件とその特徴

採択案件とその特徴は以下のように整理できる。

助成番号 助成対象団体 活動地域 助成金額 対象戸数
D16-E-0001 (任意団体)名取元気コミュニティ応援団 宮城県名取市 394万円 162戸
D16-E-0003 (特活)にじいろクレヨン 宮城県石巻市 400万円 182戸
D16-E-0004 (一社)復興みなさん会 宮城県南三陸町 380万円 236戸
D16-E-0005 (特活)つながりデザインセンター・あすと長町 宮城県仙台市 388万円 275戸
D16-E-0006 (一社)石巻じちれん 宮城県石巻市 399万円 348戸
D16-E-0008 (特活)おおさき地域創造研究会 宮城県大崎市 400万円 85戸
D16-E-0010 (特活)りくカフェ・鵜浦医院 岩手県陸前高田市 108万円 96戸

プログラムの今後について

 被災地における復興公営住宅の建設の進捗度は次のとおりであり、被災者の入居のピークは過ぎたものと考えられる。また、復興公営住宅におけるコミュニティ形成を促進するための自治体等の補助金制度も一定の充実を見ているところである。

東日本大震災特定課題助成プログラムについても、2016年度の応募が10件に留まったことや継続して助成を申請する団体が4団体に留まったことを見ると、本プログラムは3年間で一定の役割を果たすことが出来たのではないかと思料される。2016年度の採択先には、積極的な活動で成果を達成することを期待しつつ、2017年度の事業としては、3年間の助成活動の振り返りと評価を行うことを提案したい。

ただ、復興公営住宅の建設に一定の進捗度が見られるとはいうものの、発災から5年後には、復興公営住宅の建設・入居が完了していた阪神・淡路大震災と比べるとペースが遅いとの指摘もある。今後、トヨタ財団が、引き続き実施する国内助成プログラム(現在のテーマは「未来の担い手と創造する持続可能なコミュニティ ―地域に開かれた仕事づくりを通じて」)において、復興公営住宅の入居者支援に繋がるものがあれば、積極的に支援を行っていくことも一考であろう。



<参考:復興(災害)公営住宅の累計建設数>

計画戸数(戸) 2017年1月末時点
完成戸数(戸)
進捗率(%)
岩手県 5,694 4,320 75.9
宮城県 15,995 12,915 80.7
福島県 津波・地震向け 2,807 2,687 95.7
原発避難者向け 4,890 3,028 61.9
帰還者向け 298 19 0.1
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