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2019年度国内助成プ­ログラム 選後評

選考委員長 飯盛 義徳
慶應義塾大学総合政策学部総合政策学科 教授

2019年度国内助成プログラムは、「未来の担い手と創造する持続可能なコミュニティ ―地域に開かれた活力ある課題解決の仕組みを通じて―」というテーマで公募を行いました。

本プログラムでは、地域を支える多様な主体の参加や長期的な担い手の確保・育成の視点を重視し、地域の課題を解決していく具体的な仕組みづくりにつながるプロジェクトに助成しています。

調査・関係構築・事業戦略立案など本格的に事業を実施する前の段階に対して助成を行う「しらべる助成」、担い手育成や持続可能なコミュニティづくりをめざす事業に対して助成を行う「そだてる助成」、そして、プロジェクトの成果を広く発信し既存の社会の仕組みや価値観を問い直すと共に、それらを変えていくための政策提言や社会提案などに対して支援を行う「発信・提言助成」という3つの枠組みを設定して公募を行い、それぞれの選考基準に従い厳正なる審査を行いました。

選考結果について

 2019年度国内助成プログラムは、「未来の担い手と創造する持続可能なコミュニティ ―地域に開かれた活力ある課題解決の仕組みを通じて―」というテーマで公募を行いました。

本プログラムでは、地域を支える多様な主体の参加や長期的な担い手の確保・育成の視点を重視し、地域の課題を解決していく具体的な仕組みづくりにつながるプロジェクトに助成しています。

調査・関係構築・事業戦略立案など本格的に事業を実施する前の段階に対して助成を行う「しらべる助成」、担い手育成や持続可能なコミュニティづくりをめざす事業に対して助成を行う「そだてる助成」、そして、プロジェクトの成果を広く発信し既存の社会の仕組みや価値観を問い直すと共に、それらを変えていくための政策提言や社会提案などに対して支援を行う「発信・提言助成」という3つの枠組みを設定して公募を行い、それぞれの選考基準に従い厳正なる審査を行いました。

【しらべる助成】

「北海道の学校図書館に関する地域包括調査」
(北海道の学校図書館に関する地域包括調査プロジェクトチーム)

北海道の学校図書館の蔵書率は小学校で全国ワースト、中学校で全国ワースト6位であり、学校図書予算の措置率が全国ワースト2位という状況が続き、その結果、蔵書の質的陳腐化や分類構成比の歪みという問題に直面していました。本プロジェクトは、12年に渡り道内の読書環境の整備に挑んできたノウハウや知識をいかして、人口1万人未満の自治体の全ての小中学校の学校図書館の状況を調査・分析し、質的向上や平準化、先駆事例の情報共有などを目指す事業です。

社会的に大きな意義のある調査活動であり、その目的は明確であり、これからの広がり、次の展開も期待できるプロジェクトであると評価されました。


【そだてる助成】

「村民の“動くを楽しむ”をサポートする、にしあわくらモビリティセンターの立ち上げ」
(にしあわくらモビリティプロジェクト)

岡山県西粟倉村において、需要喚起型ツアーや多世代交流型移動サロンを活用した野菜交換マッチング事業などを実施して、快適な移動が制限されている人たちを掘り起こして、地域福祉×モビリティの視点に立った、新しい移動支援事業を展開する実験的な事業です。

MaaS時代に対応した中山間地域の移動技術につながる可能性があり、社会的に興味深いプロジェクトと評価されました。さらに、他の過疎地域の交通問題を解決するようなモデルとなりうるとのコメントもありました。


【発信・提言助成】

「外国人も安心して老後を暮らせる地域社会をめざして」
(外国人高齢者と介護の橋渡しプロジェクト)

愛知県にて、多様な主体の協力を得ながら、制度面の充実やサポート体制の構築をめざして、報発信や提言・提案を実施する事業です。具体的には、介護保険法改正などへの政策提言、自治体に対する介護支援制度構築への提案、外国人への介護制度周知、外国人高齢者問題に対する理解啓発の強化を展開する計画です。

今後拡大するであろう問題とその対応策を現段階でまとめて発信することは社会的に意義があり、実行可能な提案であると評価されました。

選考委員からのコメント

次に、今年度の選考プロセスを振り返り、選考委員から挙げられたコメントをいくつか紹介します。今後の応募の際の参考にしていただければと思います。

【しらべる助成】

・社会的に意義あるテーマのプロジェクトが多数あったものの、全体的に仮説が明確でないものが多かった印象である。何をどのように調査するのか、もう少し明確に、具体的に説明して欲しい。

・アクションリサーチの手法を用いて、調査と実践を両立させるプロジェクトもあり、次の展開へと発展する可能性に期待がもてるものも複数あった。

【そだてる助成】

・どのような時期にどのように進めるのか、もう少し具体的なイメージができるよう、実施内容やスケジュールを通じて説明や提案をして欲しい。

・そだてる助成の目的や意義が浸透してきたのか、プログラムの趣旨や目的に適うプロジェクトが増えてきたと感じる。

・予算については視察という項目が多数の案件で見られるが、何をどう調査するのか、その結果がどう事業に活かされるのかを明確に示して欲しい。

最後に

本年度も「しらべる助成」、「そだてる助成」共に、地域に密着して、社会の課題解決につながるようなユニークな提案が数多く寄せられ、百花繚乱の様相でした。このようなプロジェクトが全国各地で立ち上がり、それぞれが切磋琢磨していくことで日本は元気になっていくだろうと選考委員一同大いに期待をしています。また「発信・提言助成」は、社会の課題解決に向けた強い意欲を実感できるものでした。

このような社会の課題解決につながる活動のはじめの一歩は小さなものかもしれません。しかし、多様な主体の参加を促しながら、徐々に相互作用を果たして、次々と新しい価値や活動が生まれるようになってくると社会は変革を遂げていくと思います。そのためには、まずは行動すること、そして多様な人々とつながることを期待しています。

選考委員会では一つひとつの案件に対して、丁寧に評価作業を行い、十分に意見交換をしながら選考いたしました。残念ながら助成対象から外れてしまった案件の中にも、社会的意義の大きい、地域課題の解決をめざす意欲に満ちたものが多数ありました。歩みを止めることなく、再度チャレンジをしていただければと願っています。



(括弧内は昨年度)

応募件数 助成件数 採択率
しらべる助成 105件 (147件) 16件 (20件) 15.2% (13.6%)
そだてる助成 228件 (162件) 11件 (14件) 4.8% ( 8.6%)
発信・提言助成 8件 ( 9件) 1件 (2件) 12.5% (22.2%)
合 計 341件 (318件) 28件 (36件) 8.2% (11.3%)
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