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『まちづくりの思考力─暮らし方が変わればまちが変わる』書評

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国際助成
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寄稿

2019年度国際助成プログラムの成果物として発行された書籍について、萩原喜之氏(2020年度国内助成プログラム)に書評をいただきました。


『まちづくりの思考力』

〈書籍情報〉

書名
まちづくりの思考力─暮らし方が変わればまちが変わる
著者
藤本穣彦
出版社
実生社
定価
税込2,530円

〈助成対象者情報〉


【書評】まちづくりとは終わりのない旅

執筆者 ◉ 萩原喜之

[助成プログラム]
2020年度 国内助成 [そだてる助成]
[助成題目]
豊田市中山間地域における地域経済循環を生む「たすけあいシステム」の構築と主体形成このリンクは別ウィンドウで開きます
[代表者]
萩原喜之

筆者の藤本穣彦が言う『時間と空間の凝縮されていく感覚』とは何か。私たちは物事にぶつかったとき、どうしてもその位置から物を眺める。時間は重層的歴史観、空間はその物事と関係している全ての事象の関係性などを筆者のフィールド、現場の体験から紡ぎ出した物事の捉え方をもとに紐解いています。

まちづくりにはマニュアルは参考になりますが、役に立ちません。各集落の固有性があるからです。この固有性を元に、問いをどのように立てていくのか。現場の壁にぶつかっている方、また、確信を抱いて進めている人にも、目が届いていないことがあります。私も確信は常に霧の中に埋もれていく経験を数多くしてきました。入門者にも経験者にも是非お勧めしたい一冊です。

かく言う私も現場で悶々としていたことに対して、この本で抜け落ちていた視点を発見できました。これからはこの本に書かれていない視点を見つけることにワクワクしています。まちづくりとは終わりはない旅です。

本書『まちづくりの思考力』は[1]直感、経験、問い、対話、共感、[2]循環、修景、復元、[3]自治、自給、起業という11の章立てから構成されています。筆者の体験から書かれていますのでキーワードにピンが立っていますが、各章には他の要素が入っています。読者の壁だと思われるテーマや興味がある章から読まれると良いと思います。

私も現在豊田市の山間地域に入っています。平成の大合併で豊田市になった地域です。地域新電力を立ち上げ、エネルギーとケア(医療、福祉、たすけあい)、食・農の地域経済循環を目指しています。この本の小水力発電の事例はとても参考になりました。

2章 経験─「あるはずのものがない?」から
弥栄村は「水が豊かな村」確かに四つダムが存在しています。かつての水利権と現在の水利権、まちづくりを考える時の水利権という問いが出てきます。産業社会として商品生産に使われる「資源」とその土地の生活、生業を支える資源の区別。資源とは地域の共有財産=「コモンズ」であるべきと。

10章 自給─「流しそうめんのまち、水の価値をつくるまち」から
白糸の滝行政区は白糸の滝に流れる水に新たな価値をと、小水力発電構想を始めます。STEP1は壊れていた水車小屋(コメつき用)を利用した200Wの小さなものから始めます。これは村人たちの関心を呼び起こすため。そして次に、自家消費と売電のためとして15 KW、13 KWの発電にアプローチします。ここでは壊れたとき地域の人たちで修理できることを意識されています。村人が技術と経済を学習していくという村人に経験を蓄積させることを潜ませています。

筆者はこう語っています。『技術を誰かに預けてしまうと、ビジネスや政治、グローバル経済に自分たちの村と暮らしをさらすことになる』と。

公益財団法人トヨタ財団 広報誌JOINT No.41掲載
発行日:2023年1月24日

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