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体系化して学ぶことで人権侵害リスクを減らしていく

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外国人材
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寄稿
体系化して学ぶことで人権侵害リスクを減らしていく

著者 ◉ 宍戸健一(一般社団法人JP-MIRAI )

[プログラム]
2023年度 特定課題「外国人材の受け入れと日本社会」
[助成題目]
外国人材の受入環境改善のための中小企業向け教材の開発と社会啓発
[代表者]
宍戸健一(一般社団法人JP-MIRAI )

体系化して学ぶことで人権侵害リスクを減らしていく

責任ある外国人労働者受け入れプラットフォーム(JP-MIRAI)の設立経緯

近年、少子高齢化が進み、人手不足を補うため、外国人労働者の受入れが急速に拡大していますが、その一方で、外国人労働者に対する人権侵害などが報道され、国際的にも問題視されています。こうした状況の中、国際協力機構(JICA)が、外国人労働者を受け入れる企業、業界団体、労働組合、市民社会、メディア、研究者の皆様のご協力を得て、議論を重ねました。

その結果、2020年11月に「外国人労働者の権利をまもり、労働環境・生活環境を改善することにより、責任をもって外国人労働者を受入れ、外国人労働者から『選ばれる日本』となり、包摂的な経済成長と持続的な社会の実現を目指す」ため任意団体「責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム(JP-MIRAI)」が設立されました。

設立当初は、50団体・個人でしたが、会員の要望を踏まえて、活動の拡大及び多様な資金の活用のため、組織体制を段階的に整備し、2023年6月に、「一般社団法人JP-MIRAI」を設立しました。お陰様で、2025年2月時点では、800を超える団体・個人の会員が参加するプラットフォームとなりました。

<JP-MIRAIの主な活動>
活動1.外国人労働者との情報共有・共助
外国人向け日本での生活情報提供アプリ【JP-MIRAIポータル】開発・運用
母国語相談窓口・救済メカニズム【JP-MIRAIアシスト】
活動2.『ビジネスと人権』における協働
企業のサプライチェーンにおける人権DD及び救済メカニズム構築支援【責任ある外国人労働者受入れ企業協働プログラム】
中小企業向け動画教材開発
公正で倫理的なリクルート
活動3.学びあいと内外への発信
会員の優良事例共有
調査研究(地域での人材の定着など)
JP-MIRAI現場アカデミー(送出国スタディーツアー)
その他勉強会や広報・啓発活動

JP-MIRAIの活動拡大

ブランドホルダーとなる大手企業には多数の企業が連なる
ブランドホルダーとなる大手企業には多数の企業が連なる

設立当初の活動は、外国人労働者に正しい情報提供を行うポータルサイト構築や各種勉強会開催が中心でしたが、会員企業から、ビジネスと人権で求められている「サプライチェーンにおける救済メカニズム構築」については、大手企業においても一社で取り組むことが難しく、JP-MIRAIにて協働事業を行うべきとの声があり、2022年より、「(サプライチェーンの外国人労働者を対象とした)相談救済パイロット事業」を開始しました。

同事業では、ブランドホルダー企業が、把握しているサプライチェーンの企業に協力を呼びかけ、JP-MIRAIの相談窓口の利用を促すものですが、直接取引が無い企業への協力要請は難しく、実際に外国人材を多数受け入れている企業、多くは中小企業への働きかけは難しいという課題もありました。

JP-MIRAIでは2022年に、認証研究会(全4回)を行い、外国人雇用を行う企業の認証制度が構築し得るかという議論を行いました。環境などでは、エコマークなど認証は一般的になりつつあり、人権の取組みについても同様の仕組みが構築し得ないか? あるいは、外国人材が多く雇用されている中小企業において、参加可能な低コストの認証制度の実現が可能か? などについても、さまざまな団体との意見交換を行いました。その結果として、将来的には、まずは中小企業でもやさしく学習ができる動画教材の開発や普及を先行させることが重要であり、認証制度はその状況を見て、検討すべきとの意見がありました。これを踏まえ、トヨタ財団の「2023年度外国人材の受け入れと日本社会」に応募させていただき、2024年3月に採択いただきました。

中小企業向け動画教材作成

動画教材構成案(2025年2月現在)
動画教材構成案(2025年2月現在)

事業採択後、有識者及び、ILO、GCNJ、JITCO、全国社労士会連合会等からなるコアメンバー会合を設置し、議論を開始しました。一口に中小企業向けと言っても、企業規模や置かれた状況などによりかなり幅があるものであり、どのターゲット層に向けたものとするかなど、さまざまな意見が交わされました。
2024年8月9日には、JP-MIRAIの会員の皆様と対面のワークショップを行って、さまざまなご意見をいただいてきました。それを踏まえて、教材の構成を作成し、下表のようにすることとなりました。こうした教材も順を追って学習し、学習意欲が湧くようなバッジや全課程修了後に修了証を発行できるように、学習管理システム(LMS)を導入する予定です。

また、ワークショップでは、教材の普及方法について、以下の4つのアプローチ案については、議論を行いました。いずれも可能性が高いということですが、最近は、技能実習や後継制度の育成就労において、転職の自由度が高まるため、特に地方部では人材流出への危機感が高まっており、受入企業のキャパシティー強化に取り組んでおり、自治体との連携も多いという意見もありました。
【1】企業のサプライチェーン内での活用
【2】業界団体との連携(複数団体と調整中)
【3】自治体との連携(選ばれる地域に向けた活動と連動)
【4】金融機関との連携(金融ガバナンス、顧客サービス)

今後、一部動画の無償公開を開始し、順次コンテンツを拡充し、今年8月には、ローンチイベントを行い、普及展開を進めていく予定です。あわせて、中小企業がLMSを通じて相談できるデスクも開設する予定です。さらに、一定期間の試行錯誤を経て、2、3年以内に、コスト的にも中小企業が取得可能な受入企業の認証制度に発展させることを目指しています。

公益財団法人トヨタ財団 広報誌JOINT No. 48掲載
発行日:2025年4月8日

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