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JOINT31号 WEB特別版「横の関係を分断しない リエゾンネットワークの構築を」

JOINT31号「横の関係を分断しない リエゾンネットワークの構築を」

※本ページの内容は広報誌『JOINT』に載せきれなかった情報を追加した拡大版です。

横の関係を分断しないリエゾンネットワークの構築を

横田能洋(よこた・よしひろ)
◉横田能洋(よこた・よしひろ)
認定NPO法人 茨城NPOセンター・コモンズ代表理事。2012年度・2016年度国内助成プログラム助成対象者

一人ひとりのミクロな理由と社会のマクロな影響

横田 私は茨城県常総市という外国人比率が8%くらいのところで日系ブラジル人、日系フィリピン人の方々の就学・就職支援を10年くらいしています。トヨタ財団の助成で子どものキャリア支援をやってきて、2年前から多文化保育を始めました。

複数の文化の中で子どもの言葉を育てることが難しかったり、教科学習の壁があったり、制度やお金だけでは解決しないこともたくさんあるのですが、それは日本以外でも同様と思うので、そういう情報が国内で活動している方と共有されることで解決の糸口がみつかるかもしれないと思っています。

岡部みどり(おかべ・みどり)
◉岡部みどり(おかべ・みどり)
上智大学 法学部 国際関係法学科教授。主な著書・編書に『人の国際移動とEU: 地域統合は「国境」をどのように変えるのか?』(法律文化社)、『グローバル・ガヴァナンス論』(法律文化社)などがある

岡部 私はヨーロッパの統合と人の移動の自由化の観点に興味をもって大学で研究を始めました。外務省の専門調査員になる機会を得てルクセンブルクというヨーロッパの統合を積極的に進める国へ行き、実際に労働人口の3割が越境移動者という状況で、多文化共生という言葉を使わなくても生活の中でそれが展開されているのを目の当たりにしてきました。

アジアについては最近関心を持ち始めたのですが、アフリカのような究極的に破綻国家が多い状態でもなく、ヨーロッパのようにある程度確立した人の自由移動が認められているわけでもない中間状態という状態が面白いと思っています。

是川 現在、私は国立社会保障人口問題研究所に勤めています。もともと内閣府に事務系キャリアとして就職したのが初職で、その後、9年間経済財政諮問会議の下で働いていました。私が諮問会議のところで働いていた時期というのは、小泉構造改革の真っただ中で、ちょうど人口減少や移民政策が今につながる形で政策の中で姿を現し始めてきたところでした。当時は、特に移民問題、移民政策に関しては政府内にも市民社会にもほとんど蓄積がないことを痛感しました。でも、それでも政府としてはいったんアジェンダに載ったら、何か決定はしなければならないわけで、そうしたことを間近に経験する中で人口問題や移民に関する信頼性の高い研究の必要性を感じていました。

是川 夕(これかわ・ゆう)
◉是川 夕(これかわ・ゆう)
国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部第三室長。主な著書・編書に『移民受け入れと社会的統合のリアリティ』(勁草書房)、『人口問題と移民』(明石書店)などがある

また、こうしたことに加え、もともと大学時代に人口、移民問題に興味を持って勉強していて、その後もいずれ研究職に就きたいと思ってコツコツ研究していたこともあり、今の研究所に2012年に転身してから移民研究を専門にしています。今は主に国際人口移動、国と国の間で人が動くというフローの研究と、統計、国勢調査のデータを使ったりして実際の受け入れに当たって何が起こっているかを、いわば移民に関する大きな見取り図を描くようなイメージで分析しています。

──多文化共創という観点からみて、今後の考え方をお話しいただけますか。

是川 世間で期待されているような少子化を移民で乗り切るというのは基本的には無理だという結論が国際的にも学術的にも出ています。横田さんは実感されていると思いますが、一人ひとりミクロな、個別具体的な理由で移動を選択して、日本に来ているのですが、結果として数が多いので、マクロな影響というのももちろんあります。その影響がどんどん大きくなっていると言えます。

岡部 外国人がどれくらい増えると受け入れ国の経済がどのくらい成長するかという話は実は誰にもわからなくて、政策決定者にもわからないというのが私が調べた結論です。日本の場合は、たまたまこのたび外国人材枠拡大について国会で審議しましたが、あれは極めて特殊な例で、ヨーロッパにおいても、おそらくアメリカも国会や議会で事前に審議してまた立法過程を正式に通して受け入れた国はほとんどないと思います。

人の移動と多文化共生あるいは、共創の面で大きな問題を生む可能性があるということを当時の人はほとんど気づかずに、もしくは仮に社会摩擦が生じても、すぐに乗り越えられるだろうという非常に楽観的な期待のもとで国境の開放が行われました。

横田 母国の経済状況、物価の変動と受け入れ国側の企業の雇用ニーズ、入管制度の組み合わせで動いているように感じていますが、移動生活者という概念が地域に根付く必要があると常々思っています。

感覚的に言って、10年前のリーマンショックの前後では日本で数年働けばブラジルに帰って自分の店が持てたので、帰るのが大前提でした。だからブラジル学校に入れてブラジル人として教育を受けさせるという人がすごく多かったのですが、今はブラジルも物価が上がって日本で数年働いただけでは帰国してもそんなにいい生活ができない、プラス誘拐、銃といった治安の問題があるので、安全な国で子育てがしたいという理由でブラジルに帰りたいという思いはありつつも出稼ぎではないというケースが多い。

そうなるとブラジル学校の存在意義が変わらなければいけないのですが、なんとなく公立学校に居づらくなった子が逃げるようにしてくる場所になっていたり、生徒が減ったなかで学校自体が成り立っていません。先生の質が低下したり、人数が足りなくなったり。そこを出た子どもたちが日本でキャリアを作ることができるかというと、公立高校にも行っていないし、非常に厳しいわけです。

異なる出自を持った人が一緒に暮らすためのルール

──実際に何が問題で、何が課題なのか、誰がどのように取り組むべきなのか、どのようにお考えですか。

横田 実際どういう動態になるのか、ベトナムの方あるいは中国の方がこれからどう増減するかというのはデータを分析している人には見えている世界かもしれませんが、産業界や地方行政は肌感覚としてはなんとなくわかっても、なぜそうなるのかという見通しはわからなかったりします。それに、例えば台湾、韓国、日本という受け入れ国の中で、韓国はこういう制度を持っているからこの国の人が増えているんだとか、他の国はどうしているのかという情報も大事だと思います。

是川 来た人の数は統計で最低限わかっているのですが、今おっしゃったようなことって本質的な問題なのに実はほとんどわかっていないんです。国際機関や研究者が海外の学会などに行っても、どこから誰がどれくらい来ているかというのを知ることは実はほとんどなく、それ自体がビッグプロジェクトなんですよ。ものすごくお金をかけたり、国が権力を使っていろいろ調べても非常に部分的にしかわからない。アジアの送り出し国も、相当数は自分の国からどれくらい人が出て行ってるか知らなかったりするんです。自国民の権利の保護を訴えるんだけど、自分たちの国民がどこにどれくらい行っているかは実はわかっていないというケースが非常に多いです。日本に関していえば、まさにアジアの国がどうやって日本を選択しているかということもほとんどわからないんです、研究もほとんどなくて。エピソードとしてはこんな人がきましたというのはあるのですが、マスで見たときにベトナムのどの地域の人でどういう属性の人が、どういう経路で日本に技能実習に来ているかというのは、実は政府内でも情報がないし、研究者でもわからない状態です。

岡部 特にアジアの場合は合法的なルートではなく、アジア諸国間を移動する人が多いというのが特徴だと聞いているので、そういう状況も手伝っていますよね。

是川 日系ブラジル人の人は新規に来ますか?

横田 来ますよ。

是川 世代的には若い人ですか?

横田 最初から子どもを連れてくるんです。フィリピンや中国は子どもを祖父母に預けて親だけ先に来て基盤を作ってから移動してくることが多いです。常総はブラジル人が多くて仕事があるという条件があるからかもしれませんが。

是川 フィリピンの人は、日系じゃなくてフィリピンの方ですか?

横田 基本、定住は配偶者が日系人や日本人だったりすることが多いです。在留資格によって置かれている状況が違います。

是川 今、お話を伺っていて思い出したのですが、最近、日系人の研究をしている研究者に聞いてなるほどと思ったのは、移民研究だと連鎖移民、チェーンマイグレーションという考え方が主流で、日本でも90年代に外国の人が増えたときに連鎖移民が始まるのではといわれていました。けれども、その時は新規で来る人が多かったのでまだそういった現象はあまり見られなかったのですが、それから四半世紀経って、最近家族移民という形で入ってくる人が大きく増えてきていて、ようやくチェーンマイグレーションの段階に入っているのではないかというのです。確かに一見、以前と同じような人たちに見えてもその移住のステップとしては大きく変化しているといえます。

国籍の部分は職業選択に影響しないのでしょうか? 場合によっては日本国籍の方が選択が広がるというケースも聞いたことがありますが。

横田 職種上、公務員には日本国籍でないとなれないというのが一つありますが、会社として国籍を見ているというのは、昔の特別永住の方々に関しても採用差別的なことが残っている可能性もありますね。

是川 日系人に関しては日本国籍がないとだめだと言われたようなケースは?

横田 それよりは日本語能力の方がより重視されていると思います。読み書きができないと介護現場などでは引き継ぎができなかったりするので。

岡部 中国の方はほかの国の方に比べて日本に帰化する割合が多い印象があります。その傾向は日本だけではなく他の国に対してもそうで、たとえばイギリス人になる中国人も多い。

是川 私が今やっている調査でも日本国籍取得の意向を聞いているのですが、今後の日本定住の意向が強い人ほど帰化思考が強いかというとそんなことないんですよ。逆にすぐ帰るとか別の国に行きたいという人がパスポートの関係で、たとえば日本国籍があった方が便利だからという風に答えていたりとか。

国籍というとどうしてもアイデンティティの観点でとらえがちですが、意外ともっと現実的な道具として国籍をとらえている人も多くて、ずっと住みたいと思っている人は永住資格で十分だと思っていたりするんだと気づかされました。むしろ、すぐ母国に帰る人とかあちこち行く人の方がいつでも日本に戻ってこられるようにパスポートを取っておきたいと考えるケースもあるみたいで、そこはちゃんと調べてみないと分からないです。

──実務的に便利な方を選択するという場合と、自分のアイデンティティ、自分が何系であるということで、周りからカテゴライズされること、その辺のギャップはどうなんでしょうか。

是川 日本はグループごとに属性が決まっていて、グループごとに政策や対応を決める傾向がほかの国より強いという印象です。日本の場合は多文化共生という言葉が流通したことも関係するのか、受け入れの単位が個人ではなく文化とか集団と大きい。人によっては、出自はそうなんだけど実はそういうアイデンティティがあるとは思っていないという人もたくさんいるし、積極的にそういうエスニシティを選択したいという人もいて、その辺は個人によってまちまちなのだと思います。

横田 フィリピンやタイから日本人配偶者という形で日本に来た場合、たいてい家庭の中は日本語になるので家族のために一生懸命日本語を学ぼうとするのですが、日系の人は同じブラジル人同士とかで職場でも家庭でも日本語習得の必要性があまりなくて、何十年いても日常会話しかできないみたいな差ができます。

さらに最近はビザの関係で、日本人や日系人と離婚した人が日本に残って、ブラジルの男性とフィリピンの女性みたいな家族が増えているんです。家の中で英語とタガログ語とポルトガル語が飛び交うのが普通になって、連れ子同士の共通言語は日本語みたいになったりして、家族はなに人ですと説明できないんです。いろんなルーツの人で構成されている家族が出てきています。

岡部 私はたまたま身近にそういうケースを知っているのですが、それだけではなくて同じ国籍であっても二世代、三世代、四世代で感覚も違ってくると思うんですよね。なので多文化共生とか共創という話をするときに、究極的に問題になるのはどこまでを集団としてとらえるかということだと思います。個人は一人ひとり違った属性を持っていて、それを一つにまとめるというのは現実には無理だということになると思うので、何らかの便宜的な観点から集団というものを作って、その集団間の関係を築いていく必要がある。しかし、それはそれで漏れてしまう人も出てくることになりますよね。

是川 しかも、ただなに人の集団かという発想より、異なる出自を持った人が一緒に暮らすという、もう少し抽象度が一段高いところでのルールというかやり方を考えないといけない。なに人への対応といった個別具体的な対応ばかりではきりがない。また、日本がこれから進む社会の方向を考えるときに、今まで、移民/外国人をとらえる際、社会問題としてとらえるということが多かったと思うのですが、これはもう特殊な問題ではなくて、ノーマルな、つまり常態になっているので、問題という切り口では把握しきれないと思うんですよね。

横田 私は障がい福祉関係にかかわったことがあって、障がいのある方の話と外国ルーツの方の話を重ねて考えたことがあるのですが、ユニバーサルサービスやユニバーサルデザインが障がいの関連で入ってきたときに、視覚障がい者のためのものというだけではなく、目が見える人も見えない人も両方使えるものを作ろうと変わってきたし、その発想でいえばブラジル人、韓国人、日本人、目が見えない人、いろんな人に伝わりやすい情報メディアと考えられるし、学校教育で予算拡大が難しいなかで日本語支援体制がどうしても一部の学校にしか行かないことも、一方で障がい分野でいうと、障がいがあっても普通学校に行った場合に補助員がつくくらいになっていて、それの上に乗せたほうが対応しやすい面も実際にある。日本語が不自由な人というより、特別な配慮が必要な人、こういう支援があれば学校でやっていけるというようなくくりで見ていったほうが早いのではと教育委員会の人とも話をしています。障がい分野がぐっと進んだのは「合理的配慮」っていうキーワード。日本人に合わせましょうとか健常者に合わせましょうというのではなくて、この人にこれだけの配慮をして活躍してもらいましょうというような概念を外国の方に関してもあてはめれば、もっと活躍できますよねってなっていくと思います。

──ヨーロッパのどこかの国では移民を受け入れる際、かなりの時間、言葉やルールを教えてから現場に入ってもらいますよね。それは政策的には成果を上げていますか?

岡部 ドイツやスイスなど、ドイツ語圏ですね。私は効果はあると思います。スイスは、日本から駐在で行く人も移民で行く人も同じ一律で語学研修を受けることができます。できないと就労させないという罰則規定ではなく、最低限生活に必要でしょうということで一律に提供されるので、かなり効果があると思います。

横田 そういう制度をうまく取り入れたらいいと思います。日本に子ども連れできて、二日目に教育委員会に行って子どもの学校の手続きをして、三日目に工場のラインに立ってあとはひたすら働くみたいな形で5年とか経ってしまうんです。日本以外から来た場合にはこういう研修に企業も協力して受け入れていただくというのがあると、日本のことが分かった状態で自分の可能性を広げていけるので、ぜひ他の国の制度のいいところは取り入れていければいいのかなと思います。

人との出会いが生き方を変えていく

岡部 たとえばイギリスやアメリカといった英語圏に行く人に英語を学べと言っても反発する人はいません。英語はグローバルな公用語だという認識があるので社会的な軋轢が生まれにくいのですが、日本語やドイツ語となると、どうして勉強しないといけないのかという問題が生じうる。片方は来るんだからその国の言葉を勉強するのは当然でしょという声と、我々は日本人じゃないのにという声がぶつかる。ドイツの例も問題がなかったわけではないのですが、その結果トルコの人がトルコ語を話せなくなっているということはない。ご承知のようにトルコ語の学校に対する補助もあるからです。両方やっているという意味ではかなり進んでいると思います。

横田 確かに日本語も必要だけど、母語も人の成長にとって必要なので、そういう形がいいと思いますが、産業界が単に労働力としてではなくて人として受け入れて育てていくというところで、一社だけやるというのはできないと思うので、一定の枠組みがあってやっていかないと、結局いい人材が育たないし、残らないということになると思います。どういう風に一緒に暮らしていくかという意識醸成というのは、ヨーロッパではどのような主体がどのようにやっていったのですか。

岡部 ヨーロッパも必ずしも成功例とはいえません。カナダが一番の成功事例だといわれています。ヨーロッパの場合問題が山積しているというのは否めなくて、たしかに政府の対応が後追いにならざるを得ないというのはその通りだと思います。実際問題として何をすることが外国人にとって親切なのかを判断することが難しいんです。まだ日本が多文化に開かれていない社会環境だった時代、日本語ができなければ生活ができないという非常に厳しい環境で育った外国出身の方は、外国人が日本文化になじまなくてもよいような「ケア」が必要なのか、とおっしゃる。ちょっと厳しいスパルタ的な環境がいいのか、ある程度母語を話す状況も許されるのがいいのかというのは難しくて、当の外国人の間でもコンセンサスが取れていない状況だと思います。いずれにせよ、生活者としての外国人と日本人の協力関係が必要だと思うのですが、成功事例はありますか。

横田 どうしても製造業、派遣労働のように職種が限られがちなのですが、頑張って看護師みたいな国家資格を取って活躍する人もでてきています。本人はもちろん家族や学校もかなり協力して達成できているので、そういう意味では可能性がないわけではないのです。こういう仕事に就きたいと若い時にどれだけ思えるか、手本になる大人と接することができるかどうかにすごく意味があります。同世代の話を聞いたりするなかで人生が大きく変わる、制度があってもなくても人との出会いが一人ひとりの生き方を変えると思います。こういう壁があったという話を聞いて、その壁を壊していくことが大事ですね。

鼎談

気持ちや考え方の通訳を果たせる人の活躍が重要

是川 今まではわりと日本の移民社会としての未来についての展望は暗いといわれることが多かったと思うのですが、国勢調査のデータなどを使ってとても丁寧に見ていくと、全体としては緩やかに社会的統合が進んでいるのではないかということに最近、気づきました。もちろん学歴や個人属性によって大きく違うのですが、一人ひとりミクロに見てそれを平均すると、うっすらとひとつの像が見えてきています。カギになる要因が少しずつ見えてくるのです。

その場合、世代にかかわらず共通しているのは、日本型雇用もしくはグローバリゼーションとどういう距離感、どういう位置関係にあるかで決まってくるということです。外国人であっても日本型雇用の中に入れれば会社の中で年功序列に従って昇進していけるので、実は日本人とあまり変わらない生活が送れる。言語や文化の違いはあるにせよ、そういう問題をある意味、お金でカバーできる生活を送れる。あるいは第二世代の子でもうまく高校から大学に進学できて、大学を出て就職するときに、自分のルーツがある国と日本の経済関係が強くてそれを扱う会社に就職できたりすると、引く手あまたになったりするようです。でも一方でそれにうまく乗れなくて日本型雇用の外部、周縁の部分に入ってしまうと、日系人の多くがそうですが、日本と南米諸国の経済的な結びつきもあまり強くないし、かつ日本型雇用という意味でも正規職員になれていないので周縁化されてしまう。

でも一方でフィリピン系の子たちに関する研究成果などを見ていても、大学に進学できてそこからフィリピンと取引関係がある会社に入れたりすると対フィリピンビジネスのリエゾンになって、フィリピンに日本企業の駐在員で行ったりすることもできる。日本型雇用とグローバリゼーションに対してどう位置づけられるかで、大人も子どもも運命が変わってきているという印象をもちます。大卒の資格を持っているとどちらかに乗りやすいけれど、学歴が低いと同じ国籍でも難しくなっている。その辺の要因が日本でも重要になっていると感じています。

岡部 一番問題なのは、グローバリゼーションの結果勝てなかった人たちは日本人の中にも多くいて、そういった人たちに対して政府がどう対応するかということ。そして、日本人と同じようなロジックで、外国人に対しても再分配政策を行うかどうかがこれから先問題になってきます。

是川 移民を受け入れるとすぐさまアンダークラスができるという人がいますが、さまざまな研究を見ていると、移民がどういった階層に位置づけられるかは受け入れ社会がもともと持っている格差構造に強く影響されているということがわかります。つまり日本は移民を受け入れたとしても、アメリカみたいな格差社会に一足飛びになるというのはないといえます。よって、移民のせいでアンダークラスができるというのも、一部の人が喧伝するほど私は悲観的には思っていなくて、日本がもともと持っている社会の状態から丁寧に見ていかなければならないことだと考えています。

横田 経済的な成功、キャリアを作るという意味では、やはり複数語を使えるというところで、ブラジル学校も英語とポルトガル語を身につけさせて、二国間で活躍できる人材を生み出していこうとしているのは一つのチャンスだと思います。外国の人はサービスを使うばかりで、対価を払わないから全体的に抑制するというようなステレオタイプに行政はなりがちです。そういうときに、市民社会レベルでもピアサポーターみたいな人を養成して、当事者にこういう義務を果たそうとか、市役所に対してもちゃんとやっている人もいるんだからこういう情報提供はすべきだというようなことを言えるような人たちが必要。日本で暮らしてきてある程度話せる人だったら、言葉の通訳だけでなく、気持ちや考え方の通訳を果たせる人がもっといろんな場所で活躍できるようになると、その存在意義がわかってくると思います。そんな代弁したりリーダー的なことのできる人を育てていくのは重要じゃないかなと思います。

岡部 一番大切なのは、社会が分断されないことだと思います。閉鎖的な空間ができあがってしまって、外国人の集団が特殊だという認識が日本人の間で高まってしまうと、相互協力関係は築きにくい。横の関係を重視して、女性・子どもなどの国籍別ということではなく、別の集団的属性を重視したネットワークを作ることも大切だと思います。

公益財団法人トヨタ財団 広報誌JOINT No.31掲載(加筆web版)
発行日:2019年10月25日

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