本書は、福島第一原発事故により富岡町を離れ避難生活を続けている市村高志氏と福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任准教授佐藤彰彦氏、首都大学東京准教授山下祐介氏3名による共著です。
市村氏が代表をつとめる「
NPO法人とみおか子ども未来ネットワーク」では、
2012年7月から2013年3月にかけて富岡町から避難した人
たちの声を拾うため、タウンミーティングを全国で開催。
山下氏や佐藤氏は、
仲間の研究者とともに会議の進行や記録など支援にかかわりました
。
この取り組みは従来行われてきたタウンミーティングとは異なり、
「子育て世代の女性」「高齢者」など世代や属性ごとの「偏った」
議論を当事者だけで行うことを大切にしてきました。
こうした工夫により、
これまで考え方のギャップなどから夫婦間や世代間でお互い遠慮し
て発言できなかった意見が出し合える場となったのです。
トヨタ財団では、
このタウンミーティング開催にあたって2012年度研究助成プログラム東日本大震災対応「特定課題」政策提言助成で助成を実施しています。
本書は、
このタウンミーティングと研究者による避難者への聞き取り調査を
踏まえて、市村氏、佐藤氏、山下氏の3名が2013年1月〜
7月にかけて行った対談の内容をもとに著されたものです。
震災から3年近くが経ち、
今も10万人以上の人びとが避難生活を続けています。
こうしたなかで、避難者の間、
避難者と受け入れ地域住民との間などには様々な亀裂が生じていま
す。一方で、必ずしも避難者の声を反映しているとはいえない「
帰還政策」も進行しています。こうした状況は、必ずしも「
政府による身勝手な対応」ではなく、ある意味では、
自然の成り行きとして生じてしまっていると指摘していま
す。その前提のもと、「
こうした状況が生まれてきてしまった経緯を解きほぐし、
その構造を論理的に描写することで、
この状況から抜け出る道を探れないかというのが本書の意図だ」
と冒頭に述べられています。第4章では、「じゃあどうすればいいの?」として、
様々な立場や視点からの今後に向けた提言もなされています。
本書のもととなった助成プロジェクトの概要につきましては、
助成対象検索ページにて【D12-EA-1013】
で検索してください。