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プロジェクトイベント・シンポジウムレポート

シンポジウム「わたしのことば、わたしの道 〜外国につながる子どもたちの言語教育の実践から」が開催されました(国際助成プログラム)

情報掲載日:2014年10月2日

イベント・シンポジウムレポート

シンポジウム「わたしのことば、わたしの道 〜外国につながる子どもたちの言語教育の実践から」が開催されました

インド出身のタレント、サニーさんのユーモアあふれる基調講演

9月23日(火)神戸市勤労会館2階多目的ホールにおいてバイリンガル提言プロジェクト「わたしのことば、わたしの道 〜外国につながる子どもたちの言語教育の実践」の公開シンポジウムが開催されました。このシンポジウムは、2013年度に国際助成プログラムの助成を受け、さらに2014年度の継続助成にも決定した吉富志津代氏(D13-N-0097・D14-N-1002、ワールドキッズコミュニティ/大阪大学GLOCOL)らが中心となり、主に神戸市や兵庫県内で二つ以上の言語環境で暮らす子どもたちにとっての言語形成について考えることを目的として開催されたものです。

シンポジウム冒頭を飾ったのは、インドの出身で20年以上前に来日され、現在は、翻訳・通訳者として活動される傍ら、ラジオ、テレビなどでもご活躍のタレントであるサニー・フランシスさんによる「…世の中は日本語だけじゃない!」と題する基調講演です。日本で台湾人の奥様と結婚され、3人のお子さんをお持ちのサニーさんは、ご家族のお話や日本でのご自身の体験談を交えながら、「ことば」の大切さや日本社会に対するお考えをユーモアたっぷりの流暢な関西弁で話され、会場はしばしば来場者の大きな笑い声に包まれていました。また日本人が日本語以外の言葉を学ぶ意識を今より少し高めれば、さらに素晴らしい体験ができるのではないかというサニーさんの話に多くのみなさんがうなづいていらっしゃいました。

次に、外国につながる若者として、主に20代前半のパネラー4名、重井アマンダさん、MCナムさん、祖艶さん、松原ルマ・ユリ・アキズキさんらによるパネルトーク「わたしのことば、わたしの道」が行われました。パネラーの若者4名は皆、日本で育ち、現在は日本語を一番得意な言葉として話すという共通点を持ちますが、生まれや継承語のレベル、関わり、歩んできた道などは当然ながら皆、それぞれに異なります。小林芽里さん(浜松NPOネットワーク事務局長)のモデレートの下、4人が母語(継承語)と日本語とこれまでどのように関わってきたのか、そしてそれが周囲の人たちとのコミュニケーション、関係性にどのような影響を及ぼしてきたのかなどについて、今もまだ自らの進路に悩みながら生きる若者らしい言葉で語られていました。

外国につながる若者たちが自らの歩みや今後について語るパネルトーク

続いて、母語・バイリンガル教育について考える映像作品2本が上映されました。最初に上映されたのは、アメリカ・ミシガン州で日本語と英語でのバイリンガ ル教育を実施するチャータースクール「ひのきインターナショナルスクール」を紹介する内容です。チャータースクールとは、アメリカで増えつつある新しいタイプの公 立学校で、その地域の保護者や住民、教師などが特色ある学校の運営を求めて始められることが多いようです。ひのきインターナショナルスクールでは、 英語と日本語それぞれを得意な言葉として話す子どもたちが相互に助け合いながら学習を進めており、日本で暮らす外国につながる子どもたちの母語(継承語)教 育に大きな示唆があるように思われました。

続いて、先に行われたパネルトークでもパネラーを務めた松原ルマ・ユリ・アキズキさんによる異なる言語環境に暮らす若者たちの”今”を描いたドキュメンタリー作品が上映されました。同じくパネラーを務めたMCナムさんからも、今は音楽という言葉以外の部分でアイデンティティを表現していきたい、と いうお話しがありましたが、松原さんの場合も、現在、唯一、志しているものとして映像での表現があるというお話しをされていました。言葉というのは自分 と、周囲の関係性を変えていくものではあるけれども、自分のアイデンティティそのものは、必ずしも言葉に頼らなくても良いのかも知れません。

映像上映の後は、神戸市や周辺地域でポルトガル語、スペイン語、ベトナム語、韓国朝鮮語など、母語を視野に入れた教育の実践者によるアピールがありました。

わずか半日の短いシンポジウムではありましたが、登壇者それぞれの生き方やアイデンティティそのものまで垣間見えた、非常に中身の濃いシンポジウムであったと感じました。来場された方々にも、多くの考える材料を提供する機会になったかと思います。

本プロジェクトの概要は、助成対象検索から「吉富志津代」と入力して検索してください。

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