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プロジェクトイベント・シンポジウムレポート

「日本国際ボランティアセンター(JVC)・アジア隣人プログラム経験交流」が開催されました。(アジア隣人プログラム)

情報掲載日:2013年4月24日

イベント・シンポジウムレポート

「日本国際ボランティアセンター(JVC)・アジア隣人プログラム経験交流」が開催されました。

4月7日(日)及び9日(火)、10(水)に、日本国際ボランティアセンター(以下JVC)による「アジア隣人プログラム経験交流」が開催されました。

本イベントは、当財団2012年度アジア隣人プログラム特別企画「未来への展望」の助成の一環で開催されたものです。特別企画「未来への展望」は、国際協力NGOを中心としてアジア各地で実践活動をしてきた団体がその経験を振り返り、その過程で明らかとなった知見や未来に向けた提言を報告書としてまとめ、広く社会に発信する企画に対して助成するプログラムです。

今回の企画は、JVCが現地事務所を置くカンボジア、ラオス、南アフリカ(オブ ザーバー参加)の日本人駐在スタッフ及び現地スタッフと東京事務所スタッフが参加する内部向けのイベントとして開催されました。ワークショップ(1日目 及び3日目)とフィールドトリップ(2日目)を組み合わせた全3日間の日程で、各日15名前後が参加し、当財団担当者も同行させていただきました。

カンボジアスタッフによる活動報告

1日目のワークショップでは、福岡で合鴨農法に携わる古野隆雄さんによる講義と各国での活動紹介、成果や課題の共有が行われました。農業や農産物加工に関する技術面の違いや共通点について、現場スタッフならではの活発な意見交換が行われた一方、経済発展に伴う社会変化に対するアドボカシーの必要性や自立を促すプロセスなどについても現状や課題が挙げられました。

金子美登さんによる小川町の有機農業についての
オリエンテーション

2日目のフィールドトリップは、埼玉県小川町へ。40年以上前に有機農業に取り組み始めた金子美登さんを中心に、集落のほとんどが有機農業に転換し持続的発展を遂げている事例について、地元NPOや関係者の方々にお話を伺いながら見て回りました。JVCでは、アジアやアフリカの各地で農業支援を行っており、有機農業への取り組みも増加していることから、小川町のモデルからプロジェクトへのヒントを得たいというのが視察の主な目的とのことでした。

金子さんのレクチャーと地元有機野菜を使ったランチからスタートしたツアーは、金子さんが経営する「霜里農場」を見学し、有機栽培の田畑を見ながら、野菜の直売所、地元産有機大豆を使用した「とうふ工房わたなべ」、有機米を使用した「晴雲酒造」へと回る”学びとグルメ”が満喫できるコース。お天気にも恵まれ、新緑の山々とあたたかい春の日差しを楽しみながら、最高の一日を過ごすことができました。

家畜のふん、落ち葉などに間伐材のチップを混ぜ、堆肥を作っています

有機栽培では、「種は五里四方で探せ」「品種に勝る技術なし」といわれるそうで、いかに環境にあった品種を見つけることができるかが重要になるとのことで した。小川町には、たんぱく質が少なめで糖分が多い独特の「青大豆」があり、その有機栽培がうまくいき地元の豆腐店による「再生産可能な価格で全量買い取り」という経済的安定につながる条件が整ったことが、有機農業へ転換する大きな牽引力となったというお話でした。
有機農業で生計を立てる場合、一戸の農家で50〜60種の作物を栽培し、消費者30軒程度と提携して定期的に野菜を供給できれば、持続していくことができるのだそうです。
「霜里農場」では、有機栽培に加えて廃食油燃料やバイオガス、太陽光、薪ボイラーを使ったエネルギー自給や、物質循環の取り組みも行われており、地域に還元することを大切にした身の丈サイズでの持続的な経営が実践されていました。

「とうふ工房わたなべ」は小川町に隣接するときがわ町に工房とショップがあり、1店舗のみで年商3億円売り上げるとのこと。豆腐製品に加え、地元の有機野菜も 売られており、広い駐車場を備えた「道の駅」のようなつくりが印象に残りました。遺伝子組み換え(GM)大豆についての不安から有機農業に注目し始め、現在は地元の生産者への委託栽培という形で収穫の全量を買い取り、原料としています。
JVCの視察一行には渡邊一美社長自らが有機農業との提携のきっかけや経緯などをレクチャーしてくださり、自慢のお豆腐はもちろん、ドーナツ、ソフトクリーム、おから茶なども試食させていただきました。買い物だけではな く見学にも多くの人が訪れている様子で、商品の品質や安全性への評価はもちろんですが、渡邊さんが語る経営理念が共感と共に広がり、さらに働く人の自信や誇りにもつながるという良い循環がうかがえました。

60種類ほどの野菜を栽培。組み合わせで病害虫を防ぐ
ことができるそうです。

最後に訪れた「晴雲酒造」では、地元で生産された有機栽培米を使ったお酒造りを行っています。日本酒全体の消費量が減少し、姿を消す酒蔵も多い中、いかに地域に根差し、ここでしかできない酒を造るかが生き残るために大切な手段だと考えているとのお話でした。海外からの参加者には日本酒の作り方にふれることも新鮮な体験だったようです。

金子さんが、1971年にたった一人で有機農業をスタートしてから、集落一帯へのヘリコプターによる農薬散布をストップしてもらうまでに16年の年月がかかった話や、日本で1970年代から始まった生産者と消費者を直接結ぶ「提携(TEIKEI)」という手法が世界40カ国に広がっていること、小川町では特に生産者と消費者と地域の「三方良し」の関係を重視している話など地域を挙げた取り組みが実を結んでいることに、参加者の皆さんも感心している様子でした。

ラオスチームのディスカッションの様子

3日目のワークショップでは、国別に分かれたグループワークが行われました。前日のフィールドトリップを振り返り、自国での活動のヒントになった点を互い に挙げたり、1日目のワークショップで共有されたこれまでのJVCの活動成果・強みや課題を踏まえて、今後に向けたビジョン、課題の整理と解決の方法についてグループごとにとりまとめが行われ、それを全体で共有し、閉会となりました。

プログラムの全日程を通じて、主に英語を使用しつつ、ラオス・カンボジアのスタッフには日本人スタッフがラオス語・クメール語で通訳を行っていました。皆さん当然のように現地語を操っていましたが、現地語での細やかなコミュニケーションの重要性と共に、JVCが積み重ねてきた知見・人材の蓄積の一端が垣間見られる光景として印象に残りました。

アジア隣人プログラムで助成を受けての展開としては、今回の一連の経験交流に加え、8月にタイでタイ及び周辺国(ラオス、カンボジア)のスタッフを集めてワークショップを開催し、双方の成果を基に報告書「未来への展望」のとりまとめを予定しているとのことです。
今回は、当財団助成企画の一環としての経験交流と、各活動地の代表者会合が組み合わせて実施されており、組織内の知見の共有や議論の機会にもなっているという点において、実施団体にとっても充実した成果が得られたのではないかと感じました。
助成の成果が他の参加団体にも共有され、より広く発信されるために当財団が果たすべき役割についても考え、実践していくことができればと思います。
(国際助成グループ 笹川記)

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