プロジェクトイベント・シンポジウムレポート
「国際協力におけるパートナーシップに関する国際会議 -より良いパートナーシップの構築と普及を目指して」が開催されました(アジア隣人プログラム)
情報掲載日:2013年4月10日
「国際協力におけるパートナーシップに関する国際会議 -より良いパートナーシップの構築と普及を目指して」が開催されました(アジア隣人プログラム)
会議に先立って上映されたシャプラニールのパートナーシップに関するビデオ。
4月8日(月)国立オリンピック記念青少年センター国際会議室にて「国際協力におけるパートナーシップに関する国際会議 ―より良いパートナーシップの構築と普及を目指して―」(主催:特定非営利活動法人シャプラニール=市民による海外協力の会(以下シャプラニール)」が開催されました。
本国際会議は、当財団2012年度アジア隣人プログラム特別企画「未来への展望」の助成の一環で開催されたものです。特別企画「未来への展望」は、国際協力NGOを中心としてアジア各地で実践活動をしてきた団体がその経験を振り返り、その過程で明らかとなった知見や未来に向けた提言を報告書としてまとめ、広く社会に発信する企画に対して助成するプログラムです。
今回の会議は、40年以上の活動実績のあるシャプラニールが、国際協力の現場における「パートナーシップ」のあり方について普及することを目的として開催したものです。
シャプラニールでは、かつては現地職員が、直接プロジェクトを実施する「直接方式」で支援を実施していましたが、順次、支援対象となる国や地域のNGOを通じてプロジェクトを実施する「パートナーシップ方式」に取り組み、現在では、すべてのプロジェクトをこの方式で行っているそうです。
会議には、シャプラニールの現地パートナーである、バングラデシュ、ネパールのNGOの代表の方3名、日本のNGOのリーダー、外務省やJICA、当財団といったファンディングエージェンシーの担当者が参加しました。
現地の団体から見たパートナーとしてのシャプラニールの姿
はじめに、海外からの参加者が、シャプラニールとの協働の経験を振り返り、パートナーとしてのシャプラニールの良かった点と課題について発言しました。以下、発言のポイントを紹介します。
<良かった点>
・計画立案の段階から協働が実施できた。
・実施しているプロジェクトが終了する前から次のプロジェクトに向けての話し合いを行えた。
・プロジェクトの実施過程で人材や技術など資産の移転が意識されている。
・キャパシティビルディングの支援がある。
・他のステイクホルダーとの関係づくりへの協力。
・長い時間をかけた関係づくりが行えている。
・現地事務所のスタッフが現地の言葉や文化に対しての理解がある。
<課題>
・プロジェクトの細部の情報まで把握しようとする。マイクロマネジメント。
・プロジェクト毎のパートナーシップゆえの将来への不安。プロジェクト期間を越えたより長期的、戦略的パートナーシップへの期待。
・対象とする問題(ストリートチルドレン等)に対する概念的な食い違い。
・社会経済の大きな変化への対応。支援のパラダイム転換の必要性。
・スタッフのキャパシティビルディングへの支援が不十分。
発言の中で特に印象的だったのは、時間をかけた関係づくりや意思決定を協働で行う方法について「アジア流パートナーシップ」と表現していたことでした。欧米のNGOや国際的なNGOも多種多様であり、一様に考えることは適切ではないと思いますが、現地の駐在スタッフが、言語や文化に対して理解を深め、現地のやり方に学びながらともに課題に取り組んでいく手法は、アジア流のパートナシップの特徴の一つと言えそうです。
日本の参加者から
海外からのゲストの発言を受けて、日本の参加者から質問やコメントがあげられました。以下、おもな発言です。
・日本のNGOは、事業を実施するパートナーであると同時に支援を提供するドナーでもある。ドナーとパートナーの違いは何か。
・アカウンタビリティとマイクロマネジメント(細部にわたるマネジメント)のバランスをどうとるか。
・世界的に見て、ODA等の資金が短期的に成果を期待する傾向が強まりつつある。
・国際協力、開発援助のパラダイム転換の時期にきている。
・パートナーシップを越えた関係はあるのか。
・支援者が複数存在する場合、どのようにパートナーシップを構築するのか。
・自分たちの限界を現地のNGOにきちんと説明できていないのではないか。
・イコールパートナーが理想とはいえ、資金を提供する側とされる側という関係がある以上、現実的には難しい。
・寄付者の中には、日本人が現地で活躍するというイメージへの期待がある。寄付者へどう発信していくかという点が課題。
最後に当財団国際助成プログラムの担当プログラムオフィサー青尾より「シャプラニール自身がパートナーシップを通じて学んだことを広く日本社会に伝えることが、今後さらに求められるのではないか」とのコメントがありました。
パラダイム転換の時期
会議でも紹介されましたが、「CSO(Civil Society Organizationの略。市民社会組織の総称)開発効果にかかるイスタンブール原則」という70を超える国での議論を踏まえて合意されたCSOの行動原則があります。この中でも原則6.として「公平なパートナーシップ」が掲げられています。
このように理念としての「パートナーシップ」には、多くの人が賛同していますが、現実においては多様な課題が存在することが、今回の会議の発言からもわかります。
特に当日も複数の人から指摘されていましたが、今まさに国際協力、開発援助の「パラダイムの転換」の時期に来ているようです。先進国の多くが財政難に陥る中で、ODAをはじめとする開発援助に対して、より短期的な成果を求める声も高まっています。また、グローバル化が進行していく中で、開発の現場が単純に先進国/途上国というまなざしで見ることができないのが現状です。
当財団としてもこうした状況の変化の中で、どのような助成を展開していくべきなのか、助成プロジェクトの実践と経験の中から学んでいきたいと思います。(広報グループ喜田記)