財団イベント・シンポジウムレポート
10/29(月)「グローバル公民館―エジプトに公民館をつくろう!国際交流に見る報告会in OKINAWA―日本の公民館の特性と可能性を語る~」が開催されました(国内助成プログラム)
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国内助成 ctgr02 ctg02 ctg07
イベント・シンポジウムレポート
情報掲載日:2018年11月1日
10月29日(月)秋晴れの中、沖縄の那覇市にある繁多川公民館にて「NPO法人1万人井戸端会議(那覇市繁多川公民館指定管理者)/国際交流基金地域リーダー・若者交流助成事業」主催による「グローバル公民館―エジプトに公民館をつくろう!国際交流に見る報告会in OKINAWA―日本の公民館の特性と可能性を語る~」が開催されました。当日は、トヨタ財団国内助成グループ担当者も共催団体として運営のサポートを行いました。
弊財団では、「国内助成プログラム」の見直し・検討を進める中で地域や社会の課題解決に向けて広い市民の参加が必要であるという認識を持ち、「市民の参加促進」をテーマに市民活動の現場で活動する人々との対話を重ねています。また、その一環で「公民館」という市民参加の場に着目し、今回のイベントに協力させて頂くことになりました。
本イベントは、トヨタ財団が助成をしている「繁多川公民館(NPO法人1万人井戸端会議)」の代表 南信之介氏が同じく当財団の助成対象である「東シナ海の小さな島ブランド株式会社」の西山佳孝氏とともにエジプト視察されたのを機に、そこで得た学びをたくさんの方々と共有し、これからの公民館の可能性について議論をすることを目的に企画されました。会場には公民館や公共空間の利活用に関心を持つ参加者が集いました。約50名が参加され、遠方の方は東北からの参加者もいらっしゃいました。また、当日は、メディアも数社参加しており、後日新聞等でも取り上げられたそうです。沖縄での関心の高さがうかがえました。
「アラブの春」後、民主化のはじまったエジプトでは、日本の民主化を牽引してきたとされる公民館の機能(集う・学ぶ・つながる)が注目されています。エジプトでは特定の場所に多くの人が集うことそのものが政府関係者から疑惑の目を向けられることが多いため、公民館のような場を地域に作ることは難しく、公民館の機能を持つ場・空間づくりを進めるにあたり様々な工夫が必要とされます。また、短期間で成果が体感できることを好むエジプト人に対して、どのように他者と協力して物事を進めていくことを体得してもらうのか、という点も1つの課題になっています。今回の報告会の趣旨は、エジプト視察の前に検証した日本の公民館の特性をもとに、公民館の在り方を捉えなおすとともに、日本およびエジプトや海外で日本の公民館を参考にしたグローバルな社会拠点づくりに寄与することです。
エジプト料理で懇親会
エジプトの伝統的衣装
繁多川公民館
『エジプト国際交流視点報告』
発表の様子
エジプト国際交流視察に参加された南信之介氏(那覇市繁多川公民館 館長)、西山佳孝氏(東シナ海の小さな島ブランド株式会社)より視察を通じて得た学びや気づきについて報告、そして、アブデルミギード リム 美幸氏(エジプト在グローバル公民館)、エルサムニー イブラヒム アリー氏(沖縄国際大学非常勤講師)よりエジプトでのグローバル公民館事業についての報告が行われました。
南氏と西山氏からは、日本とエジプトの環境や習慣などの違いを踏まえ、エジプトにおいて現在、コワーキングスペースのような場が徐々に増えてきている(小商い的なものへの関心の集まり)こと。また、エジプトで訪れた大学や様々な組織や企業で意見交換を行い、なぜ公民館が必要なのか突き詰めることにより、エジプトに求められる拠点とは、日本の公民館の機能である「集う・学ぶ・つなぐ」だけではなく、「協力・実現の成果が見える」こと、そして「子どもと女性が活躍できる場所」が必要だということが共有されました。そして地域活動や様々な活動を持続可能にしていく為には、適切な経済がその地域でまわっていくようにしなければいけないという事をエジプト訪問で感じ学んだと述べられました。
エジプトでグローバル公民館の事業担当をしている美幸氏、沖縄国際大学で講師を務めているエルサムニー氏からは、エジプトでこれから展開していこうと考えているグローバル公民館では「主体的に生涯学び続ける(学び方を知る)、win-winコンセプト(共存することを学ぶ)、協力は必須、行動志向の学習」が大切にしている点と述べられました。また、日本の公民館が持つ「集う・学ぶ・つながる」という特性を生かしつつ、エジプトで必要とされる拠点となる公民館となる場づくりを行いたいと述べられました。
『地域拠点事例発表』
次に、尼野千絵氏(暮らしづくりネットワーク北芝)、友延栄一氏(岡山市教育委員会生涯学習部 生涯学習課公民館振興室)がスピーカーとして、活動事例の発表をして頂きました。尼野氏からは大阪箕面市で活動を行っている被差別部落における差別の状況を解決する為の活動の紹介、そして地域拠点としての取り組みについて述べられました。また、友延氏からは岡山市の公民館の紹介が行われ、公民館の活動事例紹介の中で、ESD世界会議を初めて岡山で開催した中で学びを深めた経験をを紹介され、会場からは驚きの声があがっていました。
『座談会』
最後に「グローバリゼーションの時代「公民館」はどう進化すべきか」のテーマをもとに座談会が行われた後、参加者との意見交換が行われました。
・公民館の良いところは誰でも来ることが出来る場であるということ。そのような場所が日本、エジプト問わず世界に増えてほしい。
・地域での活動は、地域規模が小さければ一人一人の顔が分かり、地域が小さい田舎は田舎なりの活動の在り方があると思う。そのような事例がエジプトの南部の田舎でも活かせると思うし、地域での活躍の仕方は多種多様であって良いと思う。
・エジプトで拠点を作るにあたり、社会階層が相違する人が交わることが難しいと感じた。公民館の役割は地域の人を繋げることで、課題解決をしていくことだと思う。
・行政の財政が厳しくなっていく中で、地域の力が求められてきている。地域の判断や地域が選ぶということが今後必要になる。
・地域の中で何か活動をしていく為には、お金がついてこないと活動の継続は難しい。生活の基盤となる仕事が多忙になると、ボランティアの活動がおろそかになるのは当たり前の話。ボランティアの活動自体がお金を稼ぐ形のようなビジネスになるように形を変えれば持続的な活動が可能になる。
引き続いて行われた参加者との意見交換の中では生涯学習としての「学びの場」として期待も寄せられていました。また学校教育と社会教育をリンクさせていくことが今後は大切で、日本の近代化の中で学校教育の重要性はとても大きく、学校教育も社会教育も時代に合わせて変わらなければならないということ。そしてそれを作る場が公民館であってほしいという公民館への期待や可能性について参加者の間で活発に意見交換が行われました。