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財団イベント・シンポジウムレポート

9/25(火)「グローバル公民館 ―エジプトに公民館をつくろう!報告会 in Tokyoー日本の公民館の特性と可能性を語る」が開催されました(国内助成プログラム)

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    イベント・シンポジウムレポート

情報掲載日:2018年10月1日



9月25日(火)、都内(会場:日本財団)にて「NPO法人1万人の井戸端会議(那覇市繁多川公民館指定管理者)/国際交流基金地域リーダー・若者交流助成事業」主催による「グローバル公民館 ―エジプトに公民館をつくろう!報告会 in Tokyoー日本の公民館の特性と可能性を語る」が開催されました。当日は、トヨタ財団国内助成グループ担当者も後援団体として運営のサポートを行いました。

本イベントは、トヨタ財団が現在助成している「繁多川公民館(NPO法人1万人井戸端会議)」(D15-L-0244題目:離島・遠隔地進学支援を通した高齢者の見守り支援で生み出す地域ビジネス、実施チーム:離島・遠隔地進学支援GESHUKUプロジェクト)の代表南信乃介氏が、エジプトとの学び合い事業「グローバル公民館(https://global-kominkan.net/)」の関連で「国際交流基金交流助成」を得てエジプト訪問されたのを機に、そこでの学びをたくさんの方々と共有し、これからの公民館の可能性について議論することを目的に企画されました。あいにくの雨天となりましたが、会場には公民館や公共空間の利活用に関心を持つ参加者、約15名が参加されました。

エジプトでは「アラブの春」以降、民主化が始まったことを機に、日本において民主化を牽引してきたとされる公民館の機能(集う・学ぶ・つながる)に強い関心が寄せられています。しかしながら、特定の場所に多くの人が集うことそのものが謀議の場として政府関係者から疑惑の目を向けられることの多いエジプトにおいて、公民館のような場を地域にすぐに作ることは難しく、公民館的機能を持つ場・空間づくりを進めていくにあたっては、様々な工夫が必要とされています。また、短期間で成果が体感できることを好むエジプト人に対して、どのように他者と協力して物事を進めていくことを体得してもらうのか、という点も1つの課題となっているそうです。日本においても公民館の役割・可能性を改めて問い直す流れが生まれてきている今、エジプトでのチャレンジから私たちが学ぶことはとても多いのではないでしょうか。

当財団では、「国内助成プログラム」の見直し・検討を進めていく中で、地域や社会の課題解決に向けては広い市民の参加が必要であるという認識を持ち、「市民の参加促進」をテーマに市民活動の現場で活動する人々との対話を重ねています。その一環で、「公民館」という場にも着目し、今回のイベントにも開催協力させていただくこととなりました。今回のイベントを受けて、財団としても引き続き「公民館」の持つ機能に注目しつつ、「公民館」をはじめとする公共空間やスペースの新たな可能性について模索してまいりたいと思います。

エジプト国際交流視察報告

はじめにエジプト国際交流視察に参加された南信之介氏(那覇市繁多川公民館館長)、西山佳孝氏(東シナ海の小さな島ブランド株式会社)、アブデルミギード リム 美幸氏(エジプト在グローバル公民館)の3名より視察を通じて得た学びや気づきに関する報告が行われました。

南氏と西山氏からは、日本とエジプトの環境の違いを踏まえ、エジプトにおいて現在コワーキングスペース(小商い的なものへの関心の高まり)のような場が徐々に増えてきていることや、かつて日本の公民館が保有していた産業振興の原動力の拠点としての役割が現在は日本において失われつつあり、本来公民館が担ってきた役割が時代の変化に伴って変化してきているという実態について共有されました。また、エジプト側でグローバル公民館事業を担当されている美幸氏からは、エジプトでこれから展開していこうと考えている公民館では、エジプトと日本がWIN-WINの関係性のもとに親睦を深めていくことを意識していることや、日本の公民館が持つ「集う・学ぶ・つながる」という特性を活かしつつ、エジプトらしい公民館的場づくりを行っていくこと。そして、市民と市民をつなぐ窓口機能を公民館的な場において果たしていきたいといった期待が述べられました。そのほか、日本における公民館の課題(公民館を訪れる人が少ない)についても指摘がなされました。

西側赳史氏(株式会社ENCOUNTER JAPAN)の報告

その後、メキシコと日本に拠点を持ち、両国の架け橋となるべく様々な事業を展開されている西側赳史氏(株式会社ENCOUNTER JAPAN)より、「居場所創生運営事業」の一環で自身がメキシコのグアナファト州で手掛けられている「Hostel & Bar Encounter(日本人宿兼日本食レストラン&バー)」や「Encounter LEON店 御縁~GOEN~(現在準備中)」の取り組みについて紹介が行われました。「居場所創生運営事業」は、人は「帰る場所(応援してくれる人やもの)」があるからこそ色々なチャレンジや無茶ができるという西側氏自身の経験から、人々の発着点となる場づくりをしたいという思いから始まった事業であり、これまでに日本とメキシコに3店舗作られています。西側氏からは、「公民館」という名称はついていなくとも、「集う・学ぶ・つながる」という公民館の機能を有する居場所づくりは様々な場において可能であること、そして「食」がこのような場を生み出していく上で有効な一つの手段となり得るという事例をご紹介頂きました。

ディスカッション

最後に行われた参加者とのディスカッションでは、「なぜ日本における公民館は衰退してしまったのか」という質問を皮切りに、活発な意見交換が行われました。参加者からは、日本における公民館が衰退してしまった背景として次のことが指摘されました。

・「住民のやりたいことを尊重する」という公民館の性質上、時代の変化に伴いニーズが多様化していく中で、ニーズをくみ取りやすい高齢者を対象とするプログラムが主流となってきてしまったために、特定の世代の方々の居場所になってしまったこと。
・公民館の設置主体が自治体であるため全体としての方向性が決まらず、自治体ごとの規模や制度の違いを「言い訳」に限界を自分たちでつくってしまっていること、
・社会課題ごとに、女性センター、生涯学習センター、市民センター、青少年センターなどが設置されたことで公民館が持っていた多様な機能が失われてしまったこと。

などが挙げられました。また、市町村単位で機能や予算決定が行われているため、一言に「公民館」といっても、良くも悪くも多様であることが公民館同士の学びあい・育ちあいを困難にしているといった指摘もありました。

一方で、ディスカッションでは今後公民館を「学びあう場」として活用していくことへの期待感も多く寄せられました。、公民館の拠点としての機能に限らず、「集う・学ぶ・つながる」という機能の重要性と公共空間・スペースへの転用の可能性についても参加者の間で活発に意見交換が行われました。

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