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財団イベント・シンポジウムレポート

「本気で課題とニーズをつかみたい人のための調査設計入門研修」を開催しました(国内助成プログラム)

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    イベント・シンポジウムレポート

情報掲載日:2017年4月25日

講師の水谷衣里氏

4月13日、新宿三井ビルにて、「株式会社 風とつばさ」代表取締役/コンサルタントの水谷衣里氏を講師に迎えて「本気で課題とニーズをつかみたい人のための調査設計入門研修」を開催しました。本研修は、2016年度国内助成プログラム「しらべる助成」(※)の対象団体向けに、助成期間の開始にあわせて、これから実施される調査活動に役立てていただこうと企画したものです。当日は、16団体から25名の参加があり、社会調査の基礎知識について、講師や参加者同士のやりとりを交えて学んでいただきました。

(※)地域課題の発掘や事業の実施に向けた調査および事業戦略の立案に対して助成を行う枠組み

【民間公益活動団体にとっての調査とは】

冒頭、水谷氏は、「調査を行う上で最も大切なことは『仮説構築』」と説明されました。また、民間公益活動団体にとって、調査とは「課題を可視化する手段」と「人を巻き込む手段」の2つの側面があり、その二つは相互に作用するといいます。

さらに、現状や望ましい姿とその間にある介入プロセスについて思い描いている“もやもや”に対して、調べるプロセスを経ることで仮説を立てることができるというお話がありました。さらに調査を続けていくことで、仮説が新たな“もやもや”になり、常に仮説と”もやもや”を繰り返していくのが常だそうです。また、「最初に考えていた仮説が変化していくことは構わない」と説明されていました。

最初の振り返りの時間では、2、3人になって感想を共有しました。「一般社団法人高根コミュニティラボわぁら」の能登谷創さんは、「今までずっと活動してきたが、調査は初めて。調査をして(地域の人と)共有して活動に反映させたい。」と意気込みを語っていました。また、「雑穀の村復活プロジェクト」の佐藤考俊さんは、「課題は明確で、ありたい姿も共有できているが、解決策はこれから。」と話していました。

水谷氏は、「もやもやするという前提で調べた方が、悩まなくて済む」とアドバイスをされていました。

【よい調査を行うために】

振り返りの時間に参加者と会話を交わす水谷氏

つづいて、社会調査の基礎理解のため、調査のフローや量的調査の手法、質的調査の手法について、解説が行われました。具体的には、以下のような点が共有されました。

・量的調査の場合には、内容や費用、慣れ不慣れによってプロセスの一部を外部化することも検討してみてはどうか。その際個人情報など情報の取り扱いへの配慮が必要。
・インタビューは、準備が8割。インタビューでは数字や固有名詞でつまずくことが多い。対策ために、事前に準備をしてからインタビューにのぞむことが重要。例えば年表や地図、組織図を手元に用意する、など。
・ヒアリング中心の調査の場合は、調査担当者によって質問が違いすぎないよう、①共通の質問項目を設定しておくか、②一人か二人のインタビュー終了後、担当者で集まって視点と発見を共有してから次のインタビューに臨んでみてはどうか。

・質的調査について、インタビュー対象者の数の多寡は関係ない。タイプの分類で分けて、各タイプに対して3人なのか、10人なのか、と考えた方が良い。
・巻き込み型の調査の場合には、解決策の仮説を提示すると良い。

最後に、よい調査ができる前提として、「調査を実施する調査担当者と調査の対象となる被調査者との間に友好関係が成立している必要がある」とし、調査依頼の方法や情報の扱いについて、考慮すべき点が挙げられていました。

【ワーク:仮説を磨くとはどういうことか】

研修の終盤では、「仮説は検証するために立てるもので、仮説が裏切られたことが実感できるよう、明確にすることが大事」だと説明され、裏切られやすい仮説をつくるためには「分解すること」が大事だと強調されました。

若者自殺対策全国ネットワークの伊藤次郎さん

「特定非営利活動法人地星社」の布田剛さんは、ツリー構造の属性分析を使って、被災者支援員の属性を分析しました。「特定非営利活動法人せき・まちづくりNPOぶうめらん」の北村隆幸さんは、Uターンする高校生を増やすために、学歴や親の職業など考慮すべきであろう視点を列挙しました。

「特定非営利活動法人宇都宮まちづくり市民工房」の土崎雄祐さんは、ペルソナ分析によってこども食堂の活動の担い手としてなりうる対象者の具体像を挙げました。

今回の研修では、参加者の社会調査に関する知識や経験に幅がありました。そのため研修で話す内容の難易度について、講師の水谷氏は準備段階で非常に悩まれたようです。それでも、参加者のニーズを確実に拾っていただき、多くの方にとってよい学びの場になったと感じております。

また、参加者の皆様にとって、今後半年間の調査の質を高めることに少しでもお力になれたようでしたら幸いです。引き続き、皆様の取り組みをサポートしていきたいと思います。

本講座の内容について、講師の水谷氏のブログこのリンクは別ウィンドウで開きますでも紹介されています。あわせてご覧ください。


(国内助成グループ プログラムオフィサー 加藤剛)

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