公益財団法人トヨタ財団

トヨタNPOカレッジ「カイケツ」

トヨタNPOカレッジ 「カイケツ」第4期第5回レポート

kaiketsu
カイケツ


情報掲載日:2019年8月22日

問題解決のステップは「ストーリーテリング」で

トヨタ財団は8月8日、トヨタ自動車の問題解決手法をNPO向けに伝えるトヨタNPOカレッジ「カイケツ」を開きました。第5回のテーマは「対策立案」で、要因解析で探った真因を解決するための対策を立てるステップです。11月に開かれる発表会に向けて、対策立案を実行し、その成果を発表します。(オルタナ編集部=吉田広子)

トヨタNPOカレッジ「カイケツ」はグループワークが中心
トヨタNPOカレッジ「カイケツ」はグループワークが中心。第4期は20団体約30人が参加しています

トヨタ財団は2016年、社会課題解決の担い手であるNPOに問題解決力を身に付けてもらうことを目的に「カイケツ」を開始しました。

講師は、トヨタ自動車で長く品質改善に取り組んできたクオリティ・クリエイションの古谷健夫代表取締役、同じく元トヨタ自動車でのぞみ経営研究所の中野昭男所長、日野自動車TQM推進室の鈴木直人主査、中部品質管理協会企画部の細見純子次長の4人が務めます。

カイケツでは、「テーマ選定」「現状把握」「目標設定」「要因分析」「対策立案・実施および効果の確認」「標準化」など、問題解決の一連のステップをA3用紙1枚にまとめていきます。立てた対策の効果を確認し、それを定着させることまでを目指します。

沖縄にケアが必要な子どもと家族を支える拠点

「 Kukuru+」について説明する大城尚志さん
「 Kukuru+」について説明する大城尚志さん(右奥)

一般社団法人Kukuru(くくる/沖縄県那覇市)は、誰もが当たり前のことを当たり前にできる社会の構築を目指し、バリアフリー旅行支援など障がいを持つ人とその家族の支援を行っています。「くくる」は、沖縄の言葉で「こころ」を意味するといいます。

介護者が楽しく、前向きな気持ちを持つことが、障がいを持つ人のより良い生活につながるという考えのもと、介護者の休息を確保する「レスパイト」にも力を入れています。

今年8月には、新社屋として医療的ケアが必要な子どもと家族を支える地域連携ハブ拠点「Kukuru+」を立ち上げました。リハビリ室やクリニック、ショートステイ病室、機械入浴室、研修室を備え、医療型短期入所や日中一時支援事業、多機能型重症心身障害児通所事業などを行う予定です。

Kukuruの地域コーディネーター・大城尚志さんは、カイケツへの参加を通じて「いろんな人が集い賑わう場として、Kukuru+を継続的に運営できるようにしたい」と話します。

多様な人たちが出会う場として「日替わりオーナーカフェ」計画を進めるなか、設備や運営方法など、さまざまな問題が浮上してきました。

大城さんは「カイケツのワークショップに参加し、問題を整理し、どのように解決できるのか、一連の考え方を学ぶことができた。カフェの運営はこれからだが、より良い運営ができるように対策を実行していきたい」と意気込みます。

当事者の意見を反映し「地域防災力」を上げる

多様な住民の参画を重視し、「地域防災力」の向上に取り組むシンクタンクが、任意団体インクルラボです。防災士でもあり、国際NGOの職員として20年以上、被災地や紛争影響国で活動してきた高橋聖子さんが2018年に設立しました。

2019年4月には、高橋さんをはじめ、「誰一人取り残さない防災」に関心のある有志が集まり、「江戸川みんなの防災プロジェクト」を立ち上げました。

「防災には、『自助』『共助』『公助』の考え方がある。防災は、点では広がっていかない。区全体の取り組みにすることが必要だ」(高橋さん)

高橋さんは「スタッフみんなが専門性を発揮し、やりがいを持って仕事ができる環境をつくりたい」との思いから、解決したいテーマとして「事業の運営方法を策定してかかわる人たちの意欲と力を引き出す」を掲げます。

高橋さんが大切にしているのは、多様な人たちの参画。年齢や国籍、性別、障がいの有無などの違いを超えて、防災を「みんなのもの」にすることを目指します。例えば、車いすの避難経路を作成するには、一番よく知っている当事者の参画が不可欠です。

高橋さんは「江戸川みんなの防災プロジェクトには、ボランティアで協力してくださる専門家の方が多い。だからこそ、みんながやりたいことが実現できる運営方法に変えていきたい」と語ります。

「対策立案」のワークショップを終えて、参加者からは「現状把握が不十分で、行ったり来たりしてしまうが、グループで話し合うことで、新たな視点を得ることができた」「何か問題があると、すぐに対策をしてしまいがちだった。それでは対処療法的になってしまう。真因の追求が大事だということに改めて気付いた」といった声が寄せられました。

古谷講師は、「なぜその問題に取り組むのか、数値で現状を把握できているか。テーマ設定から対策立案まで、ストーリーがつながっていることが重要だ」と話します。「相手に分かりやすく伝えようと思うと、A3資料1枚、10分程度の説明がちょうど良い。11月の発表会までに対策の成果が出てくれば」と期待します。

「引き算の広報戦略」で認知度高める

ワークショップ後は、オプショナル講座としてオルタナ編集長森摂による広報講座が開かれました。広報のポイントとして、「引き算の広報戦略」を挙げ、伝えたいことを絞っていくことの重要性を示しました。

そのほか、「情報発信は定期的に」「トップの肉声を伝える」「ストーリーテリング(物語)」「活動には必ず『名前』」などの重要性を語りました。その場でNPOのプレスリリースの添削も行い、情報発信のコツを伝えました。

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