ごあいさつ

2026年度を迎えるにあたり、今年度、トヨタ財団がどのように助成活動に取り組むかについて、あらましをご説明させていただきます。
まず、助成金総額は4億8千5百万円、昨年度よりも11.5 パーセント増額しました。この増強された助成金予算を活用して、社会的に意義の大きな各種プロジェクトをさらに強力に支援していきたいと考えています。
現在のトヨタ財団の助成の枠組みは、具体的な課題の解決を狙うために焦点を絞り込んだ先端技術、外国人材、人口減少の3つの特定課題と、広い視野に立って人々のより一層の幸せを目指すための国内、研究、国際の3つの助成プログラムから成り立っています。これらすべての助成を貫くキーワードは、「つながり」です。
助成事業においてこの単語を意識する理由は、現在の国内外で人々が向き合う課題の多くが、人と人、人と自然、人とモノ、それに国と国の間のつながりの変化と関係していると考えるからです。
かつての日本では、家族・親族、自治会、村落、会社、組合、学校同窓会、信徒団体など、相互に見知った様々な「固い」集団や組織の下に人々がまとまっていました。人は集団や組織の一部として存在していたと言ってもよいでしょう。しかし、現在では、「個人」の価値が増し、既存の集団や組織を介した人と人のつながりは必ずしもうまく機能していません。経済活動の進展とも相まって、多数の人が都会でバラバラに、また少数の人が地方で散在して生きるようになりました。その一方で、IT技術の飛躍的な発展により、離れたところにいる人同士が互いを知らないままネット上で緩やかにつながることが増えました。これまで、社会の基本的な仕組みや習慣は、対面型の固い組織や集団の存在を前提として組み立てられ、整えられてきましたが、それらが各所で機能不全に陥っています。トヨタ財団の設立された50年あまり前と比べると、人と人のつながり方には、明らかな変化が生じています。
もちろん、このような大きな変化が日本でだけ起こっているわけではありません。程度の差こそあれ、諸外国においても似たような変化を看て取れます。紙幅の関係でここでは触れませんが、人とモノ、人と自然のつながりも50年前とは大きく変わりました。さらに、昨今の大国の振舞を見るにつけ、主権国家の存在を前提とした国と国のつながり方が様変わりしていることは明白です。
このように、つながりに注目することで見えてくる国内外の大きな枠組みの変化を念頭に置きながら、身近で具体的な場面で人々のより一層の幸せを目指す各種プロジェクトへの助成を行うことが、現在のトヨタ財団が目指しているところです。
今年度は、各助成プログラムの骨格とそれぞれが掲げるテーマは変えません。その一方で、次の世代の助成プログラム開発に向けての調査・研究も積極的に行ないます。昨年度に比べて倍額の予算を配分したイニシアティブ・プログラムを最大限に活用して、次世代のプログラムのテーマの萌芽になるようなパイロット・プロジェクトを発掘し、積極的に助成するつもりです。
また、トヨタ財団の社会への貢献をより多くの方々に知って頂くために、これまでにも増して積極的に広報活動に取り組みます。具体的には、秋に「トヨタファウンデーションズデイ」(仮称)を開催します。助成対象者が一堂に会し、活動や研究内容、成果を発表して相互交流を進めることがその主たる目的ですが、これと並行して、一般の方々にも財団の活動をより深く知って頂けるような魅力的な企画を実施できればと思います。
私自身も、本財団の助成の基本コンセプトである「つながり」をテーマとして、著名人・有識者や助成対象者と語り合い、それを動画として発信するつもりです。これらの新しい試みを通じて、できるだけ多くの方々に本財団の取り組みを知って頂き、応援して頂ければと思います。
それでは今年度も、皆様方の暖かなご指導とご鞭撻をお願いいたします。
2025年4月
公益財団法人 トヨタ財団
理事長 羽田 正
