公益財団法人トヨタ財団

トヨタNPOカレッジ「カイケツ」

トヨタNPOカレッジ「カイケツ」第3回レポート

kaiketsu
カイケツ


情報掲載日:2016年7月6日

トヨタ財団は6月16日、第3回目となるトヨタNPOカレッジ「カイケツ」を開きました。同講座は今年12月までに6回実施する連続講座です。折り返しとなる3回目は、NPOが抱える課題を把握するための個別指導「現状把握」が行われました。

テーマ選定に必要な3原則

杉浦講師の講演

第3回目の講座テーマは、「テーマの選定と現状把握」。ここでいうテーマとは、一言で言うと「改善点を絞ること」です。

講座の冒頭、元トヨタ自動車で講師の杉浦和夫・改善QA研究所代表が、「現状把握」について講義を行いました。杉浦氏は、「テーマを読めば、何を改善しようとしているのか、その狙いが一目で理解できるようになっていないといけない」と説明します。

杉浦講師は、「どこで(製品名、工程名、作業名など)」「何を(管理特性)」「どのように(水準、方向)」の3項目を具体的に記入していくことが原則だと言います。

例えば、テーマの例として「スポットガン溶接作業における姿勢の軽減」「錆び止め工程におけるフロアーへのオイル滴下の防止」を挙げました。

テーマの選定後は「現状把握」のステップに進みます。現状把握では、問題が起きている事実を定量的に把握していきます。客観的なデータを集め、その問題が起きる原因をさまざまな角度から調べていき、最終的に問題点を絞り込む作業です。

現状把握は、不具合現象を調べるステップなので、その問題の原因だけを探っていきます。次のステップ「要因解析」で、仕事と不具合現象の関係を調べます。

杉浦講師の講義後、各グループに分かれて、個別ワークを行いました。この日に合わせて、受講生たちは、用紙1枚に、テーマの選定と現状把握をまとめてきました。その資料をもとに受講生が発表し、講師やほかの受講生からの質問に答えるという形式で行われました。講座は3回目ということで、お互いのことも把握しつつあり、活発に意見交換が行われていました。

情報は「層別」で細分化

つくばアグリチャレンジ伊藤氏と中野講師

茨城県つくば市で、障がい者を雇用し、農場を運営している認定NPO法人つくばアグリチャレンジの伊藤文弥代表は、「社員の働くレベルの向上」をテーマに選びました。伊藤さんは、「9割5分仕事ができていても、遅刻や用具の片づけができていないだけで、その人の評価が下がってしまう。これらの小さいミスをなくしたい」と抱えている課題を共有しました。

伊藤さんは今回の講義課題をこなすために、2週間にわたって、「社員の遅刻・欠席」「椅子やスリッパの片づけ」「書類の提出締め切りを守れているか」などの項目を社員ごとに調べました。

それぞれの項目ごとに、数字は出せたのですが、どのようにすれば、これらのミスを減らせるのか、どこに原因があるのか、伊藤さんはアドバイスを求めました。

元トヨタ自動車で講師の中野昭男のぞみ経営研究所所長は、項目ごとにさらに情報を細分化していくことを求めました。「層別」という言葉を使い、「曜日別、通勤場所別、子どものありなしなどで分けていけば、課題が定量的に明らかになっていく」とアドバイスを送りました。

人はなぜ動かないのか

NPO法人社会復帰支援アウトリーチの林日奈代表理事は、スタッフやボランティアの発言数が少なく、「何をやりたいのか、伝わりきっていないのではないか」という問題意識を持っています。

林 さんが属するAグループ(トヨタ自動車(株)業務品質改善部主査古谷健夫担当講師)、組織体制や指示系統に問題意識を持つ人が多く、トヨタ自動車業務品質 改善部第1TQM室主査の藤原慎太郎講師が作成した「人の行動に関する要因と対策の考え方」をベースに「なぜ人が動かないか」を考えました。

「人 の行動に関する要因と対策の考え方」では、人が行動しない要因としてまずは大きく3つ、1.行動できる環境がない、2.行動できる能力がない、3.行動す るモチベーションがない――に分けられます。1の対策のヒントとして仕組みづくりや役割付与、2に対しては教育や訓練、3に対しては評価、達成感、ルール 化することなどが紹介されました。

林さんは、漠然とした思いはあっても、ほかのスタッフ・ボランティアと目的や役割を共有する仕組みができていないことに気付き、過去のイベントを表標準化し、次のイベントに向けて計画表と分担表をつくることで、改善を目指します。

第4回目の講座は7月14日に開かれます。各受講生がまとめた「テーマと現状把握」をもとに、「要因解析」を行います。



(記事執筆:株式会社オルタナ 池田真隆氏)

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