公益財団法人トヨタ財団

トヨタNPOカレッジ「カイケツ」

トヨタNPOカレッジ 「カイケツ」第3期第3回レポート

kaiketsu
カイケツ


情報掲載日:2018年6月28日

「現状把握」で「自分がやった方が早い」から抜け出す

トヨタ財団は6月21日、トヨタ自動車の問題解決手法をNPO向けに伝える第3期「トヨタNPOカレッジ カイケツ」を開催しました。3日目のテーマは、現状を客観的かつ定量的に認識するステップ「現状把握」です。受講生は、現状を表すデータを持ち寄り、グループごとにありたい姿(目標)に対する現状を見直しました。(オルタナ編集部=吉田広子)

業務の細分化で仕事を振りやすく

業務の細分化を行うリテラシー・ラボの千葉さん(右奥)と細見講師
業務の細分化を行うリテラシー・ラボの千葉さん(右奥)と細見講師

現状把握は、問題が起きている事実を定量的に把握するステップです。事象をデータ化し、問題点を絞っていきます。主観ではなく、客観的な事実を集めて定量的に整理していくことが大切です。

「教育と社会をつなぐ」をコンセプトに掲げるリテラシー・ラボ(東京・渋谷)は、「多様な考え方を理解する力」「主体的な考えを発信する力」「社会を創り上げる力」の向上を目指し、映像教育プロジェクトや公共政策コンサルティングなどを手掛ける一般社団法人です。

代表理事の千葉偉才也さんは、団体を運営するにあたり、自身に業務が集中していることに課題を感じ、カイケツに参加しました。千葉さんは、「業務全体の分担を最適化する」をテーマに、常駐職員やボランティアスタッフらと広報やプロジェクト運営などを分担していくことを目指しています。

現状把握のステップでは、千葉さん自身がどの仕事にどのくらいの時間をかけているのか、明らかにしていきました。そのうえで、どの業務を役割分担できそうか検討します。


ポイントはできるだけ「作業ベース」で考えること。例えば、「イベント参加者を募る」という仕事も、「案内文を作成する」「フライヤーを作る」「配る」などの工程に分けられます。

講師を務める中部品質管理協会の細見純子企画部次長は「代表なので忙しいと思いますが、どんな作業にどのくらい時間をかけているのかを意識しながら、間隔をつかむことが大切。作業内容が抽象的だと、まわりも何を手伝って良いか分からなくなってしまいます」と説明します。

千葉さんは「つい『自分でやった方が早い』と考えてしまい、一人で抱え込んでいました。スタッフ間の『阿吽の呼吸』に頼っていたところもあります。抽象的にとらえていた仕事を細分化することで、業務分担するイメージがつかめてきました」と手応えを語ります。

千葉さん以外にも、特定のスタッフに業務が集中するという問題を抱える団体は多いのではないでしょうか。

細見講師は「社会がますます多様化するなかで、『阿吽の呼吸』は通用しなくなります。優秀な人材を確保したり、定着させたりするためにも、だれでもできるように業務を『標準化』して、『仕組み』にしていくことが必要」とアドバイスしました。

おむすびで地域の農業支える

宮城・鳴子産「ゆきむすび」をおむすびにして販売する「むすびや」(宮城県大崎市)は、鳴子温泉から車で15分ほどのところにあります。

ゆきむすびは、寒い山間地でも育つように開発されたコメの品種です。もちもちした食感と、冷めてもおいしい味わいが特徴です。

むすびやでは、コメの味をダイレクトに味わえる「塩むすび」のほか、地元のお母さん手作りの味噌漬けを刻んだ「味噌漬け混ぜ込み」、「玄米・昆布」、「季節の青菜」など、さまざまなにぎりたてのおむすびを販売しています。

むすびやを運営する大泉さん(左奥)と古谷講師
むすびやを運営する大泉さん(左奥)と古谷講師

むすびやを運営する鳴子の米プロジェクト理事の大泉太由子さんは、地域から期待される一方で経営の悩みを抱え、カイケツに参加しました。

大泉さんは「『むすびや』を通じて、地域で農業を支える大切さを多くの人に知ってほしい。『むすびや』を黒字化して経営を安定させたい」と意気込みます。

講師であるトヨタ自動車業務品質改善部の古谷健男主査は、「飲食店の黒字化だけなら、手立てはいくらでもあります。『地域で農業を支える大切さを知らせたい』という目標に対し、どのような指標を持てるでしょうか」と、大泉さんに問いかけます。

そこで、ワークショップでは、むすびやがどのくらい知られているか、知らせるツールはあるかといった現状把握を行い、目標と現状とのギャップ(問題)を探っていきました。

次回(第4回・7月19日開催)のカイケツでは、現状把握を踏まえ、「目標設定」と「要因解析」を行っていきます。

トヨタ自動車の「問題解決」の8ステップ

1.テーマ選定:
改善したい課題を1文にまとめるステップ。テーマを読めば、改善の狙いが理解できるように表現する。「どこで」「何を」「どのように」の3項目を具体的に書く。
■おむすびで地域の農業支える
宮城・鳴子産「ゆきむすび」をおむすびにして販売する「むすびや」(宮城県大崎市)。鳴子温泉から車で15分ほどのところにある。

ゆきむすびは、寒い山間地でも育つコメの品種として開発された。もちもちした食感と、冷めてもおいしい味わいが特徴だ。

むすびやでは、コメの味をダイレクトに味わえる「塩むすび」のほか、地元のお母さん手作りの味噌漬けを刻んだ「味噌漬け混ぜ込み」、「玄米・昆布」、「季節の青菜」など、さまざまなにぎりたてのおむすびを販売する。

むすびやを運営する鳴子の米プロジェクト理事の大泉太由子さんは、地域から期待される一方で経営の悩みを抱える。

大泉さんは「『むすびや』を通じて、地域で農業を支える大切さを多くの人に知ってほしい。『むすびや』を黒字化して経営を安定させたい」と力を込める。

古谷講師は、「飲食店の黒字化だけなら、手立てはいくらでもある。『地域で農業を支える大切さを知らせたい』という目標に対し、どのような指標を持てるだろうか」と投げかけた。

ワークショップでは、むすびやがどのくらい知られているか、知らせるツールはあるかなど現状把握を行い、目標と現状とのギャップ(問題)を探った。

次回(第4回)のカイケツは7月19日に開催され、「目標設定」と「要因解析」を行う。
2.現状把握:
問題が起きている事実を定量的に把握するステップ。事象をデータ化し、問題点を絞る。主観ではなく、多くの客観的な事実を集めて定量的に整理する。
3.目標設定:
目標を設定するステップ。その目標を達成すると、選定したテーマを解決できるレベルに設定する。
4.要因解析:
原因についての真因を探るステップ。事象に対して、5回の「なぜ」を繰り返す。現状把握と混同して考えてしまいがちだが、現状把握では要因は書かない。事実だけをまとめる。
5.対策立案:
要因解析で見つけた真因を解決するための対策を立てるステップ。真因ごとに、「対策内容」「担当者」「期限」に分けて記入する。真因への対策をいきなり考えるのではなく、方向性を明確にしてから、アイデアを出していく。
6.対策実行:
実行する対策の内容やスケジュールをまとめるステップ。
7.効果確認:
実施した対策内容によりどの程度効果が出たのかを評価するステップ。
8.標準化と
管理の定着:
効果の出た対策の内容を標準化し、定着させるステップ。同じ問題の再発を防ぐことができる。
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