公益財団法人トヨタ財団

トヨタNPOカレッジ「カイケツ」

「カイケツ」キックオフシンポジウムレポート

kaiketsu
カイケツ


情報掲載日:2016年4月7日

トヨタがNPOの成長を後押し、NPOカレッジ「カイケツ」始動へ

「カイケツ」キックオフシンポジウム

トヨタ財団は2016年5月、NPO法人など非営利組織のマネジメント能力を高めることを目的に、連続講座トヨタNPOカレッジ「カイケツ」を開講する。3月1日、トヨタ自動車東京本社で開かれたキックオフシンポジウムには、当初の定員を大幅に超える約250人が全国から集まった。
パネルディスカッションでは、山元氏、古谷氏のほか、木村真樹・あいちコミュニティ財団代表理事が登壇し、「成長できるNPOの条件」について議論した。モデレーターは森摂・オルタナ編集長が務めた。

パネルディスカッション  成長できるNPOの条件とは

登壇者

◉ 木村真樹(あいちコミュニティ財団 代表理事)
◉ 山元圭太(PubliCo 代表取締役COO)
◉ 古谷健夫(トヨタ自動車 業務品質改善部主査)

司会者

◉ 森 摂(オルタナ代表取締役兼編集長)

 NPOの原点は1995年の阪神・淡路大震災におけるボランティア活動と言われています。1998年には、市民の要請をうけて、特定非営利活動促進法が生まれました。その動き自体は米国、ヨーロッパに比べると30年は遅かったと言われています。
法律ができてから18年が経ち、日本のNPOはセカンドステージに入りました。日本のNPO法人の数は5万を越えました。郵便局の数は2万5千ほどですから、そう考えると、NPO法人は一つのコミュニティに2つはある計算になります。
ただし、私見ですが、戦略的な組織運営をしている団体は、5万あるうちの約1%、500くらいではないかと思います。あいちコミュニティ財団の木村さんはソーシャルセクターの代表選手。まずは、NPO経営の現状を教えてください。

木村 私はNPOに対するお金の支援を2つの組織でやってきました。1つ目は10年前に設立したコミュニティ・ユース・バンクmomo です。momo では、これまで一件も貸し倒れなく融資ができています。そして、あいちコミュニティ財団は3年前に作りました。NPOへの寄付を仲介していく財団です。
年間4千万円から5千万円の民間資金を回し、毎年50団体ほどに支援をしています。愛知県内には、約1900のNPO法人がありますが、休眠状態だったり、収支はゼロだったりと、4割くらいは活動できていないというのが感覚値としてあります。期待はされているけど信頼されていないことはここにも現れています。
NPOは、思いを発信するだけでは応援されません。「足りない」ということを発信していくことが必要です。地域や社会で、何が「足りない」のか、そのことを伝えていく力が重要です。

 山元さんがいろいろなNPOを見てきたなかで、成長できるパターン、できなかったパターンはありますか。

山元 明らかに問題を解決していく団体は「社会を変える計画」を持っています。計画には、3段階あります。最初は、活動計画。これは目の前のことをやるだけで、大きくならないし、広がりません。そこで、事業計画を作ります。お金も人も回る仕組みで、やっていけるかどうかを検討します。
最後が「社会を変える計画」です。団体、組織を越えて、社会課題や地域課題全体を解決しようと思ったら、自分たち一人では無理だと気付きます。
行政や企業など他セクターとの関わり方を描き、社会の課題、地域の課題を解決していく生態系や仕組みを作っていくこと。この「社会を変える計画」をもっているかどうかが、成長の分かれ道です。

 NPO法人も株式会社もマネジメントは同じです。NPOと株式会社の大きな違いは、利益を再配分できるかどうかぐらいでしょう。企業に勤めておられる古谷さんは、活性化していく組織の条件をどう考えていますか。

古谷 組織マネジメントは目指すビジョンを実現するためにあります。その点では、企業もNPOも一緒です。トヨタは日本人の手で自動車を作ろうという当時としては無謀とも思えることをやってきました。活性化する組織、成長する組織はトップがどこを目指しているかが重要です。トップが思いを発信し続けることで、みんなが共感します。
組織も膨張して大きくなっていくと、自分の組織だけが良ければいいとなっていきます。そこで、お客様第一主義の明確な旗を掲げて、提供する価値を最大化するために、変化に柔軟に対応できる組織、風土を作ることが大事だと思います。

 株式会社は毎年生まれますが、10年後の生存率は5%しかないといわれています。組織にとって、生き残れるかどうか、最初の10年は大事です。木村さんのところは10年ですよね。

木村 はい、momo は昨年で10年経ちました。NPOバンクという仕組みは全国で14団体くらいあります。その中でも、有給専従スタッフがいるのは当団体だけです。momo で3人、財団で6人のスタッフがいます。
NPOの宿命は、相手から対価を取りづらいということです。momo では、金融機関に断られたNPOを支援しています。金融機関は、momo がなぜ融資できているのかを不思議に思っているようです。 現在、9つの金融機関と連携し、職員を人材育成目的で送り出すところもあります。相手から対価を取りづらいので、第二顧客を作りながら事業展開しています。
大事なことは、社会に対して、「足りない」ことを伝えているかどうかです。「足りない」ことを発信し続けていれば、周りの人が手伝ってくれます。

 第二顧客という言い方はビジネスの世界では使いませんね。詳しく教えてください。

木村 momo にとって第一顧客はNPOです。しかし、借りてくれるNPOだけでは、十分な事業収入は得られない。第二顧客は、地域の金融機関です。愛知県下の地域金融機関ということと、金融という共有できるものがありますから、彼らにはお金を出してでも、我々と連携する理由があります。
つまり、単に社会に良いことをしているからお金をくださいという時代ではないので、いかに新たな価値創造をできるかが大事です。一団体だけでは、そもそも「社会を変える計画」が、実現できません。

 NPOはサービスの対価を本人からではなく、別のところから受け取る点が、一般の企業と違っています。この点の難しさや特徴はありますか。

山元 一般のビジネスとNPO活動の違いは、顧客の数が多様で、マルチステークホルダーということです。貧困問題の解決を目指すNPOにとっての第一顧客は貧困者です。そして第二顧客の寄付者にお金を出してもらうことが必要です。
サービスを提供する人とお金を提供してくれる人をバランス良くマーケティング、マネジメントしていかなくてはいけない難しさがあります。

古谷 NPOは対価がとれないので、寄付者からお金をもらうということですが、寄付者への対価は、何でしょうか。

木村 寄付につく動詞が「お願いする」というイメージを持ち過ぎていると思います。ビジネスでは、一方的にお願いする関係は長続きしません。価値は対等に交換することが大前提です。
お金を投じることによって、社会問題の解決につながるという気持ちを持ってもらうことが大事です。ある意味、解決策を寄付で買ってもらうことだと思っています。寄付者は金銭的な見返りを求めて、時間やお金を投じている訳ではありません。NPOには感動できる挑戦をしている人たちがたくさんいますから、ぜひ多くの方々にNPOの活動にかかわっていただきたいですね。

登壇者

古谷健夫(ふるや・たけお)

トヨタ自動車工業株式会社
(現:トヨタ自動車株式会社)入社、TQM 推進部長、本社工場品質管理部長を経て現職。中小企業診断士。デミング賞審査委員。著書に『“質創造” マネジメント─ TQM の構築による持続的成長の実現』中部品質管理協会編、監修・共著(日科技連出版社 2013年9月)がある。

山元圭太(やまもと・けいた)

経営コンサルティングファームに勤務後、2009年に認定NPO 法人かものはしプロジェクトに入職。2014 年に独立し、日本各地のソーシャルベンチャーやNPO のコンサルティング・支援を行っている。2015年、長浜洋二氏とともに公益組織を支援する株式会社PubliCo 設立。

木村真樹(きむら・まさき)

株式会社中京銀行勤務等を経て2005年に愛知県初のNPOバンク「コミュニティ・ユース・バンクmomo」を設立。2013年、愛知県初の市民コミュニティ財団「あいちコミュニティ財団」を設立。2015年には第3回「日経ソーシャルイニシアチブ大賞」国内部門賞を受賞。

森 摂(もり・せつ)

日本経済新聞社入社。流通経済部などを経て ロサンゼルス支局長。2002年9月退社。同年10月、ジャーナリストのネットワークであるNPO 法人在外ジャーナリスト協会(グローバルプレス)を設立、代表に就任。2006年、株式会社オルタナ設立に参画、編集長に就任、現在に至る。

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