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選考委員長 田中明彦

特定課題「外国人材の受け入れと日本社会」の選考について

2021年度の特定課題「外国人材の受け入れと日本社会」は、以下の5つの助成分野について、調査・研究を行い、かつ助成期間中に、その課題解決や状況の改善に向けた仕組みや制度の構築等の実践に取り組むプロジェクトを助成対象として、公募を行いました。

(1)外国人材が能力を最大限発揮できる環境作り
(2)外国人材の情報へのアクセスにおける格差の是正
(3)ケア・サポート体制を担う人材と既存資源の見直し
(4)高度人材の流入促進
(5)日本企業の海外事業活動における知見・経験からの学びと教訓

ただし、2020年度に続き本年度も分野(4)(5)に限り、調査・研究に主軸を置いたプロジェクトの応募も受け付け、選考対象としました。公募期間は2021年9月6日から11月20日で、50件の応募がありました。その間、事務局がZOOMによる説明会を2回開催しました。3名の選考委員による応募書類の検討・評価をへて、2022年2月1日の選考委員会で、7件(総額5000万円)を助成対象候補とすることが決定されました。

以下にそれぞれの助成対象候補プロジェクトの概要を記します。


D21-MG-0014    加藤 徹生(一般財団法人リープ共創基金代表理事)
「在留外国人の金融排除の実態調査と金融包摂スキームのプロトタイプ構築―金融包摂を通じた在留外国人のエンパワーメント―」
在留外国人が金融サービスの利用にどれだけ困難を抱えているのか、つまり金融排除の実態を解明し、さらに金融サービスの利用向上(金融包摂)をはかるための仕組みを検討しようとする分野(1)、(2)に応えるプロジェクトです。在留外国人の金融サービス利用の実態は、金融という分野の特性から、これまでほとんど解明されてきませんでした。本プロジェクトは、金融機関とも協力しつつ、その実態を解明し、在留外国人への金融包摂のための新たなスキームを探ろうとする野心的なもので成果が期待されます。

D21-MG-0016    羽田野 真帆(特定非営利活動法人名古屋難民支援室コーディネーター)
「東海地域に暮らす難民の就労に関する実態調査および就労環境改善に向けた取り組み」
難民認定者や申請者の就労状況の実態を、難民支援者と難民当事者が共同して解明し、外国人材としての難民の就労環境改善をはかろうとする分野(1)と(2)に応えるプロジェクトです。とくにプロジェクト・チームに難民認定を受け日本で就業し活躍してきた難民当事者が加わっていることが強みとなっています。難民認定者や人道的配慮による在留許可者が就労に与える困難や課題を解明し、改善方策をさぐることとともに、本プロジェクトによって難民が日本社会に貢献する人材であるとの意識を社会に広めようとしていることも、本プロジェクトの特色です。

D21-MG-0017    神林 龍(一橋大学経済研究所教授)             
「科学的根拠に基づいた外国人材政策立案のための共創プラットフォーム」
外国人技能実習生ならびに特定技能外国人材について、「生活者」と「労働者」としての両面を捉えるための大規模パネル調査を行い、科学的根拠に基づく外国人材受入れ政策の基盤形成に貢献しようとする分野(1)と(2)に応えるプロジェクトです。現在、政府の収集している技能実習生や特定技能外国人材のデータには、人間関係、地域社会との関わり方、生活習慣などの特性が収集されておらず、「労働者」であるとともに「生活者」であるこれらの人材の直面する課題を科学的・体系的に分析することが困難な状況にあります。本プロジェクトによる大規模パネル調査が実現すれば、これまでの政府統計では見いだすことの困難だった知見を得ることが期待されます。

D21-MG-0028    土井 佳彦(特定非営利活動法人多文化共生リソースセンター東海代表理事)
「アフターコロナ社会での外国人材受入れにおける多言語相談窓口の体制整備と専門人材の育成システムの構築」
本プロジェクトは2019年度採択の「官民連携による多言語相談窓口体制強化事業―多文化共生総合相談ワンストップセンターの持続可能な運営に向けて」の継続プロジェクトで、同プロジェクトで明らかになってきた多言語相談窓口を担う相談員の課題を改善し、相談員の能力向上と「専門職」としての認知促進を図ろうとする分野(2)に取り組むプロジェクトです。2019年度プロジェクトによれば、多くの相談員は、組織のなかで曖昧で非正規の立場にあり専門性向上のための十分な研修機会が与えられていないようです。本プロジェクトでは、実効的な研修プロジェクトを企画・実施することで、相談員の能力向上と認知・地位の向上が進むことを期待したいと思います。

D21-MG-0039    佐土井 有里(名城大学経済学部教授)
「日本就労ASEAN技術者の人材育成における課題と対策」
ASEAN諸国から日本の製造業やIT企業に就労する外国人労働者に焦点をあて、現地での人材開発、日本での教育・訓練の実際を調査分析し、双方に有益で持続可能性のある人材育成法を検討しようとする分野(4)と(5)に応えるプロジェクトです。ASEANと日本の双方でASEAN研究者と共同調査を行い、外国人技術者のニーズ、資質、目的意識などを体系的に把握することによって望ましい人材育成法の検討が進むことが期待されます。                    

D21-MG-0042    品川 優(株式会社An-Nahal代表取締役)
「相互メンタリングを通じた留学生と企業内人材の意識行動変容の調査分析と育成モデルの体系化」
留学生と日本人企業関係者に相互メンタリング(対話による指導・情報共有など)の機会を提供することによって、双方の意識や行動の変化を調査することで、受入れ側の意識行動変化をうながすとともに留学生の就労を拡大しようとする分野(4)に取り組むプロジェクトです。留学生への情報提供や交流機会の増加とともに、日本企業内の人事担当者などの意識や行動へのインパクトも狙ったプロジェクトであることが特色です。相互メンタリングの手法についてのハンドブックも企画されており、日本における人材受け入れに役立つことが期待されます。

D21-MG-0045    ミラー ラッセル(東京大学大学院医学系研究科国際地域保健学教室客員研究員)
「多国籍チームによるクラウドソーシングを用いた多言語オンライン健康情報プラットフォーム構築と普及—公平な医療アクセスに向けて」
多国籍のプロジェクト・チームによって、多言語健康情報プラットフォームを構築し運用していくという分野(2)に取り組むプロジェクトです。新型コロナ感染症が蔓延するなかで、多言語の健康情報を外国人に迅速に提供するプラットフォームの必要性を痛感してきた多国籍の医療関係者とソフトウェア専門家が提案する共同事業です。すでに動き出しているウェブサイトを基礎に、サイト利用者の開発への参加、ボランティアによるプログラム開発などを通して即効性のある活動をすることを期待したいと思います。

所感

本年度は、具体的な課題に着実に取り組むプロジェクトや、喫緊の課題に素早く対応しようとするプロジェクトなどとならんで、これまであまり取り上げられなかったテーマ(金融包摂や難民)などを採択できたことが特徴だと思います。本特定課題のプロジェクトが、政府関係機関の今後の事業の先導的役割を果たすこともできるのではないかと期待しています。高度人材の流入促進に関連しても2件プロジェクトを採択しました。本年度は分野(3)に直接関連するプロジェクトは採択されませんでしたが、前二年度でかなりの数のプロジェクトを採択しており、また本年度採択プロジェクトにおいても医療に関係したものが1件あり全体としてはバランスがとれていると思います。

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