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選考委員長 飯盛 義徳

2021年度の国内助成プログラムは、プログラムの見直しを行い、「新常態における新たな着想に基づく自治型社会の推進」というテーマを掲げて公募を実施した。

本プログラムでは、「日本社会」および「地域社会」の持続可能性や発展可能性にこれまで以上に焦点をあて、歴史的な転機に直面していると考えられる日本の現況を踏まえて、既存のシステムや手法、従来の発想に縛られない取り組みに対する助成として、本年度は以下2つの枠組みを設定した。

1つ目の枠組みは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により顕在化した諸課題の解決をめざした社会サービスの創出や人材の育成への取り組みに助成を行う【1)日本社会における社会サービスの創出や人材の育成】である。2つ目の枠組みは、既存の手法や仕組み、これまでに蓄積された実践知や暗黙知のみに依拠しない、地域社会を支える協働や参加の新たなデザインを生み出す取り組みに対して助成を行う【2)地域社会を支える共創によるプラットフォームの創出や整備】である。

全国各地からの応募に対して、それぞれの枠組みでの要件や重点事項などの基準に照らして以下のプロセスで厳正なる選考を行った。

選考結果について

4月21日から6月11日まで公募を実施し、1)日本社会における社会サービスの創出や人材の育成:64件、2)地域社会を支える共創によるプラットフォームの創出や整備:138件、計202件の応募をいただいた。

また、公募期間中には、新型コロナウイルス感染症対策のため、オンラインによる公募説明会をトヨタ財団の主催並びに各地の中間支援組織との共催にて、合計7回開催した。毎回定員に達したことで、最終回では定員を増加して対応するなど、数多くの方々に関心を寄せていただいていることが実感できた。

選考委員会は、5名の選考委員で構成され、事前に実施した書面評価の結果を元に終日掛けての審議を行った結果、1)日本社会における社会サービスの創出や人材の育成:5件、2)地域社会を支える共創によるプラットフォームの創出や整備:8件、合計13件を助成対象候補として決定した。

プログラム見直し後の初年度の選考であり、特に1)日本社会における社会サービスの創出や人材の育成は、従来とは規模や視点が大きく異なる枠組みであったため、難しさも感じながらの審議となった。一方で、初年度の助成対象候補としてできるだけ多様なテーマや分野のプロジェクトが選ばれることも考慮し、応募金額の合計が助成総額(1億円)を大きく超えたが、条件付きとした案件も含めて13件を選出した。

条件付きで助成対象候補とした案件に対しては、後日に事務局によるヒアリングを実施し、その結果報告を踏まえた選考委員長による決裁により、1)日本社会における社会サービスの創出や人材の育成の助成対象候補のうち1件を見送ることとした。また、助成総額については、選考委員会で挙がった各案件に対する減額提案も踏まえて検討を行い、当初予算である1億円から1千万円を上回る形となったが、1億1千万円とさせていただいた。

助成対象候補となった印象的なプロジェクトを簡単に紹介させていただく。

【1)日本社会における社会サービスの創出や人材の育成】
[企画題目]デートDVチャット相談システムから、学生と共に創る人と人とが繋がる社会
[プロジェクトチーム名]エンパワメントで暴力と貧困の連鎖を断ち切るプロジェクト

デートDVに気付いた人が安心して気軽につながることができる独自チャット相談システムを構築するプロジェクトで、その相談内容をコンテクスト解析することで独自のエンパワメント・メソッドの確立をめざす。さらに、大学生がピア・サポーターになり、同世代がサポートする体制を構築することなども計画されている。

親密な関係性の中で起きる暴力という新型コロナウイルス感染症により顕在化した重要度、緊急性が高い、社会的に大切なテーマであると判断され、人材育成の仕組みについてもしっかりと検討されていることや継続性への考慮なども評価された。

【2)地域社会を支える共創によるプラットフォームの創出や整備】
[企画題目]自然共生の価値創造に取り組む共創プラットフォームの構築
[プロジェクトチーム名]佐渡島森里海探究プラットフォーム企画チーム

佐渡島を舞台として、環境活動に取り組むローカルなアクターをつないでコラボレーションを生み出すルーツ型プラットフォームと、オンラインコラボレーションツールを用いて自然共生を実現してアイディアをアーカイブするクラウド型プラットフォームを運営するプロジェクトである。

2020年度の「しらべる助成」の助成対象である佐渡島探究の学び研究会が中心となり、多様なステークホルダーを巻き込みながら、ビジョン、仕組みづくりが明確に論じられている。子どもたちの育成にも配慮されており、今後の展開が期待されるプロジェクトとして評価された。

選考委員からのコメント

次に、本年度の選考プロセスを振り返り、選考委員から挙げられたコメントをいくつか紹介させていただく。今後の応募の参考になれば幸いである。

【1)日本社会における社会サービスの創出や人材の育成】
・「日本社会」という枠組みにおいて、特定の地域に留まらずに、本当に社会的な波及性が期待できるかが読み取り難い案件も多かった。
・「社会サービスの創出」と「人材育成」がテーマであったが、社会サービスの創出に意識や力点が置かれたプロジェクトが多く、人材育成の観点にももう少し配慮して欲しい。
・女性がプロジェクト代表者の企画が多くなり、テーマも多様性が広がっていると感じた。

【2)地域社会を支える共創によるプラットフォームの創出や整備】
・どのように地域の人々の主体性を育んでいくのかをより丁寧に企画して欲しい。
・プラットフォームが構築されるだけで課題が解決されるわけではないため、どのようにして成果をもたらすのかの運営の視点にも言及して欲しい。
・これまでよりも取り組みの領域が広がり、百花繚乱の様相であった。アプローチも多様化しており、今後に期待が持てると感じた。

最後に

本年度もたくさんの応募をいただき、心から感謝を申し上げたい。プロジェクトの分野、地域ともに広がっており、ユニークな内容が多かったことを実感した。このような社会の課題解決の活動が各地で展開されることで未来が拓けていくと選考委員一同で期待をしている。

本年度からのプログラムのキーワードの一つがプラットフォームである。プラットフォームとは、多様な主体の協働の基盤となる仕組みであり、効果的に設計をすることで、多様な人々が参加し、その相互作用によって予期もしないような活動が生まれることが期待できる。ただし、一朝一夕に効果があらわれるわけではない。設計とあわせて、参加する人たちへのインセンティブや担い手の育成などにも目を配っていくことでもっと大きな成果につながっていくものと考える。

選考委員会では、しっかりと企画書を読み込んだ上で、全員で一件ずつ意見を寄せ合い、議論を尽くした上で選考した。残念ながら助成対象から外れてしまった企画の中にも、社会的意義の大きい、意欲を感じるものがたくさんあった。これからも歩みを止めることなく、再度チャレンジをしていただければと念願している。

なお、1)日本社会における社会サービスの創出や人材の育成では、トヨタ財団から国立高等専門学校機構に応募を呼び掛け、実際の応募を経て助成候補として選出された案件もあった。新しいプログラムにおいて、これまで以上に応募者との丁寧なコミュニケーションを図りながら、応募や選考の質が高まっていくことも期待したい。

(括弧内は昨年度)

応募件数 助成件数 採択率
1)日本社会における社会サービスの創出や人材の育成 64 4 6.3%
2)地域社会を支える共創によるプラットフォームの創出や整備 138 8 5.8%
合計 202 12 5.9%
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