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プロジェクトイベント・シンポジウムレポート

静岡在来作物研究会主催「在来作物・交流セミナー」が開催されました(研究助成プログラム)

情報掲載日:2014年12月12日

イベント・シンポジウムレポート

静岡在来作物研究会主催「在来作物・交流セミナー」が開催されました(研究助成プログラム)

江頭宏昌氏(山形大学農学部准教授)による講演

このセミナーは、2013年度研究助成プログラムの助成対象プロジェクト「農の『豊かさ』を未来に継承するために――在来作物の利用と保全を例として」(代表者:富田涼都氏)により企画され、2014年11月2日(日)、3日(月)の2日間、初日は静岡大学農学部附属地域フィールド科学教育センター(藤枝市)で、2日目は掛川市の「田園空間博物館・とうもんの里」などを会場として行われました。

助成プロジェクトは、各地の風土に合わせて栽培・利用されてきた「在来作物」と付随する技術や文化に、人間と自然の関係を基礎とする農の「豊かさ」を見出し、これらについて、過去からどのように継承されてきたのか、静岡県内の事例を中心に調査した上で、未来に向けてどのように継承していけるか、具体的な方法論の確立をめざすものです。プロジェクトでは、在来作物の生物学的な特性以上に、その栽培の技術や利用の文化に「豊かさ」を見出し、地域社会の関係性のなかで、それらが自律的に継承されてきたプロセスに注目し、これを「社会の新たな価値」として、広く発信することをめざしています。

掛川市内の在来作物畑の様子

静岡県内には在来作物にかかわるさまざまな地域の取り組みがあるものの、県内の農家の間でもそれらはほとんど知られていないということです。セミナーは、農家、研究者、NPO関係者など、在来作物にかかわる取り組みを実践する人びとが情報交換や交流を図り、さらに県外における取り組みについて学ぶために開催されました。

1日目は、在来もち米種の「金太餅」の餅つき体験と試食会の後、江頭宏昌氏(山形大学農学部准教授)による講演「山形在来作物研究会のあゆみと課題」が行われました。江頭氏が主宰する「山形在来作物研究会」は2003年に設立され、その活動は2011年公開の映画『よみがえりのレシピ』(渡辺智史監督)などを通じ、広く知られるところとなっています。江頭氏は、「在来野菜は生きた文化財」という故・青葉高博士(元山形大学農学部教授)の言葉に共鳴し、研究会を立ち上げ、山形県内各地で在来作物の研究や保存活動に取り組んできました。在来作物については、継承者の減少が深刻ですが、このようななかで、継承をめざす取り組みには、在来作物に経済的価値と文化的価値のどちらを見出すのか、また、伝統的な栽培の技術と共に種子を受け継いできた地元農家と新規参入者との間で、種子が誰のものであるべきかといった価値観・倫理観の対立があるということです。江頭氏は、研究会による活動の経験から、これらの問題を乗り越え、在来作物の継承を図るためには、思弁的な研究にとどまらない創造的な実践が不可欠であると訴えました。

「えびす講定食」を模したお弁当

2日目は、まず午前中に、掛川市内の農家が所有する在来作物畑の見学会が行われました。辺り一面茶畑が広がる風景のなか、突如として現れる野菜畑に、イモ、ネギ、ニンニクなど、さまざまな作物がたわわに実り、参加者を驚かせました。これらは、基本的に市場に出荷されることはなく、生産者の友人や知人にお裾分けとして配られるということであり、在来作物を通じ、地域社会のつながりの豊かさが垣間見られるようでした。

続いて、参加者は掛川市南部の「とうもんの里」に移動し、昼食をとりました。昼食には、NPO法人とうもんの会のご協力により、11月の神事「えびす講」の際に食される「えびす講定食」を模したお弁当が提供されました。とうもんの会では、このような地域の伝統食・行事食を体験できる企画を催し、地域内外の人びとに向け、地元の豊かな食文化を発信しています。この地域のえびす講では、地元の食材を活用し、さくらごはん、鯛の塩焼き、「ん」の付く野菜5種類(大根・人参・蓮根・ごんぼう・こんにゃく)の煮物などを用意し、神様に祀るということです。参加者にとっては、南遠州独自の行事食の味を堪能し、在来作物を活用する文化の豊かさを実感する機会となりました。

午後には、そのまま同じ会場で、「在来作物のある風景――行事や文化を含めた豊かさ」というテーマで、主にプロジェクト・チームのメンバーが、在来作物にかかわる国内外のさまざまな取り組みについて報告を行いました。日本国内からアフリカに至る各地の事例では、在来作物が地域の社会・文化形成に重要な役割を果たしていること、そして、地域の人びとが代々受け継がれてきたさまざまな知恵により在来作物を守り育てていることが紹介されました。報告会の総括として、江頭氏より、「在来作物の保全を『風景』という切り口で考えるのは大変意義深い」というコメントがあり、また、「このような伝統的な行事食を食べられる機会は、実はなかなかなく、とても貴重な体験ができた」という感謝の言葉が、主催者ととうもんの会に対し、述べられました。

プロジェクト・チームのメンバーによる報告

2日間のセミナーは、参加者にとって、五感を存分に活用し、心地よい疲れを感じながら、在来作物から見出される農の豊かさを再認識し、また新たに発見する機会になったと思われます。同時に、さまざまな参加者の間で、横断的な交流が深まったのではないかと感じられました。プロジェクトは助成期間の中間地点を過ぎたところですが、今後、このような交流のネットワークを活かし、成果を広く発信していくことが期待されます。

助成プロジェクトの概要については、「助成対象者検索ページ」から「D13-R-0413」で検索してください。

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