公益財団法人トヨタ財団

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トヨタ財団について

理事長ごあいさつ

2016年度の冒頭に当り、一言ご挨拶を申し上げます。

21世紀に入ってから15年という時間が経過しました。短い期間ではありますが、この15年間に、大きな変化が日本を含めた国際社会に押し寄せてきたこと、そしてそれ以前とははっきり別の時代に入ってきたことがわかります。
この変化の中でも大きなものが、インターネットの普及です。これによって、世界中で、情報が飛び交う速度と量が格段に増えました。また、結果として、世界の一隅で起きた出来事も瞬時に世界中に拡散し、パソコンや携帯端末を介して、私たちの日常生活の中に入ってくるようになりました。翻って見ると、このインターネットの普及というものは、1989年のベルリンの壁崩壊と東西冷戦終了の流れの中で、世界の中で情報や人の自由な移動を妨げる障壁を無くしていこうとの理念と、平仄が合っていました。

しかし、このインターネットの普及は、時間の経過と共に副作用を生み出しております。イスラム教過激派組織「イスラム国」(IS)に代表されるようなテロ組織が、このインターネットを駆使して、情宣活動や情報操作を行い、戦闘員や資金の調達を行うようになったのです。情報や人の自由な移動を促すための高度の情報通信技術が、あたかも中世的ともいえる野蛮な組織を引き出したかのようです。しかも、この過激派組織がシリアに浸透し、内戦の引き金を引いた結果として、難民がレバノン、トルコなどの近隣諸国を経て、EU諸国に大量に流入するようになっています。そして、この難民流入それ自体が、皮肉なことにEUとその外部、EU内部、更には米国にまであらたな「壁」を作ろうという動きを生んでいることは皆さまもご承知の通りです。無差別テロの頻発と難民の問題は、21世紀の人類が直面する難儀な課題となりました。

一方、このような世界史的な大きな波は未だ日本には直撃していませんが、日本国内には、別の重荷がのしかかっております。それは人口の少子高齢化と、それに伴う社会保障費の増大、巨額な財政赤字です。さらに、これと重なり合うように、地方の衰退、更には子どもの貧困や格差などの様々な問題が浮上してきています。このような重荷が、国民に自然と閉塞感を与えているように感じます。
このように時代の先行きが見えにくくなっている時こそ、トヨタ財団設立趣意書の中に記された「人間のより一層の幸せを目指し」という言葉は、重みを増します。公的な支援が限界を迎えている時、トヨタ財団が持っている潜在的な力をますます発揮するよう期待されております。本来、大きな時代の変化に起因する問題は、国家が取り組むべきものであります。しかし、制度的財政的に国としての迅速な動きが困難なとき、民間財団は身軽に動くことができるフットワークを用い、課題に取り組む各地の現場から解決の芽を見出し、それを周囲に先導的に発信することができます。それこそが、私どもトヨタ財団に課せられたミッションだと考えます。

2016年度もトヨタ財団は、新たな価値の創出についての研究、国内の地域課題解決に向けた活動、アジアの共通課題に対する国際的な学び合いという3つの柱を中心に助成を行って参ります。加えて、トヨタ財団では、5月より、トヨタ自動車の協力を得て、NPOなどの非営利団体の皆さまに、トヨタの組織マネジメント「問題解決」を学んでいただく連続講座「トヨタNPO カレッジ『カイケツ』」を開講します。ここで学んでいただくのは、トヨタ自動車が多年培ってきた「問題解決」という考え方・手法です。そのノウハウは、生産現場だけではなく、あらゆる組織や事業に応用が可能であり、NPOの皆さまの活動に参考となるヒントを提供できるものと考えております。幸い3月初めに行った試行的講座の催しにも多くの参加者を迎えることができました。これらの取り組みが相まって、より良き社会への変化の兆しを見出し、皆さまと共有することができれば幸いです。
今年度もトヨタ財団としては、時代を見据えながら、地道な諸活動を継続して参る所存です。引き続き、皆さまの温かなご指導とご鞭撻をお願いいたします。

2016年4月1日
公益財団法人 トヨタ財団
理事長 遠山 敦子

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