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OPINION

05 「離島助成」から見るこれからの地域社会

加賀 道(トヨタ財団プログラムオフィサー)

プログラムオフィサー

 「離島助成」は、日本全国を対象とする地域社会プログラムへ、離島からの応募が目を引くようになったことがきっかけとなり、2006年度から3年間実施した助成プログラムです。当時の選考委員会は、離島は地理的に孤立した性質上、地域社会の問題がより早く深刻な形で現れているのではないかと考え、離島に対象を絞った助成を行うことで、地域社会プログラム本体のプログラム立案へも有効な役割を果たすことを期待しました。
 3年間にいただいた応募は212件。うち33件(3,753万円)が採択され、昨年、助成期間が終了するに当たって「離島助成」実施の取りまとめ作業を行いました。地域社会プログラム本体に寄せられる応募は子育てや多文化共生、空き家・廃校活用、社会的マイノリティなど課題が広く分散しているのに対し、「離島助成」では、仕事づくり、福祉、自然・文化の継承といった領域への応募が突出して多く、少子化や高齢化がもたらす担い手不足がその大きな要因ではないかと考えられました。取りまとめた内容はまた追ってご報告していきたいと思います。
 ところで、この作業の過程で私もいくつかの島を訪れる機会を得ました。島では、祭りに向けて一致団結する人びとや、進学のために島を離れる男の子を見送りに集まる人びと、数人集まると自然に宴会が始まる雰囲気など、人と人の強いつながりをあちこちで目にしました。
 このようなつながりは、先祖代々その土地に暮らしてきたという理由だけでなく、一人の人間が幅広い世代の人と接点を持っていること、一つの役職や立場によらない多様な役割を担っていること、暮らしの場と仕事の場が比較的近いことなどが影響しているのではないかと感じました。「コミュニティ」という言葉は多様な意味をもっていますが、コミュニケーションのあるところに本当のコミュニティは生まれるのだということを実感した経験でした。日本全国において地域のつながりやコミュニティ再生の手法が探られている今日、離島という地域は、これから日本全国が直面する課題と解決策をいち早く見つけるための場というより、むしろ我々が模索している新しいライフスタイルのヒントを教えてくれる場であることに思い至りました。
 また、現地で島の方々に直接お話をうかがううちに、先駆的な取り組みに着手し多くの若者が集まるような求心力を持った島がある一方で、一生懸命取り組んではいるものの、外の島や地域での取り組みをほとんど知らず、どのように他地域と連携していくのか、どのように情報発信を行えばよいのか、といったノウハウを持ち合わせない島も多く見られました。島によって情報収集や発信能力に大きな格差があり、その差はどんどん開いていくのではないかと懸念されました。トヨタ財団には各地から情報が集まってきても、本当に知りたい人たちの間でその情報が共有されていないのです。助成という形で生まれたご縁や財団に寄せられた情報をより有効に活用・発信することで、助成の成果が大きく広がっていくのではないかと感じました。
 このようなことが発端となり、3月5日〜7日に開催したワークショップ・シンポジウム「島から学ぶ地域づくりの知恵〜アイディアをアクションへin天草〜」を企画しました。全国各地で活動している方々や、都市部に住みながら島や地方に興味を持つ若者がつながり、苦楽や夢を語り合い、次の行動につなげてもらう場を作りたいと考えたのです。
 今後、連続企画として他の島でも実施していく予定です。会場に来られない皆さんにも財団ウェブ・サイトから動画配信を予定していますので是非ご覧のうえ、ご意見をいただければと思います。「離島助成」に関する報告は、ウェブ・サイトや本広報誌等で随時発信していく予定です。

公益財団法人トヨタ財団 広報誌JOINT No.6掲載
発行日:2011年3月17日

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