公益財団法人トヨタ財団

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OPINION

02 原点に戻って考える財団の役割と機能

渡辺 元(トヨタ財団プログラムディレクター)

プログラムディレクター

 当財団は1974(昭和49)年10月に設立され、今年で35年を迎える。設立当時と現在では、財団を取り巻く社会状況や環境も大きく様変わりしている。
 設立当時の日本社会は、(振り返れば)「高度経済成長」の最終局面にあったが、依然として右肩上がりの経済成長が続くことを誰もが信じて疑わなかった“上昇社会”であった。その後、“バブル経済”とその崩壊を経て、90年代は「失われた10年」と称される状況に陥り、ここに来て漸く持ち直しの観を呈したと思った矢先、今度は、昨秋の米国での「サブプライム・ローン」の破綻に端を発した世界的経済危機の影響を大きくこうむる事態となった。
 この間、急速なグローバル化によって引き起こされるさまざまな問題と同時に、地域社会においてはコミュニティの崩壊などが懸念されるようになり、“ソーシャル・キャピタル”(社会関係資本)など、人と人との関係性を改めて問い直す論調なども散見されるようになった。このことは、経済成長のみに頼らない社会形成のあり方に対する問いかけとも捉えられる。そもそも「経済」という言葉は「経世済民」に由来する。「困難な状況にある人びとを救い、世を治める」ことを表すが、この点、今日の経済というよりは、政治や社会政策のことを本来的に指すものと思われる。

人間のより一層の幸せを目指し、将来の福祉社会の発展に資することを期して、財団法人トヨタ財団の設立を決意いたしました。
トヨタ財団設立趣意書(1974年9月19日)より

 ここで記された「福祉社会」とは何であろうか。上記に照らして考えれば、「経世済民の社会」、すなわち、「人が生きやすい社会(Well-being Society)」と言っても良いかもしれない。人びとをつないだり包み込んだりできる「自由で包摂力のある社会」を意味することになろうか。この場合、重要となるのは“他者”に対する「愛」、つまり、フィランソロピー(Philanthropy)である。
 これはまた、欧米をはじめとする多くの助成財団の基本精神でもある。こうした助成財団の役割と機能については、当財団の初代専務理事を務められた林雄二郎先生が、かつて以下のように記している。

財団とは、私的利益を追求するためにある組織ではなく、社会的利益に貢献するための組織である。そして現代社会における財団は、急速で、しかも大規模な社会的変化によってひき起される諸問題を、根本的に解決することがその役割である。……(中略)……すなわち、財団とは、社会がその未来のためにそなえている触媒であり、また、その健康さと多様性を促進するように機能する存在である。
トヨタ財団(1975年度)年次報告より

 そして、未来への触媒の機能を発揮するため、先見性・国際性・市民性という3つの視点を打ち出し、これらを基にそれぞれ研究助成、国際助成、市民活動助成へと展開していった。現在の研究助成、アジア隣人プログラム、地域社会プログラムは、その時々の見直しを経て今に至るも、基本は当時からの延長線上に位置づけられる。
 流動化の早く、激しい社会状況の中、助成財団としては、常に社会の変化の“兆し”に耳を研ぎ澄ませ、既存の制度や他の組織では対応ができていない課題や領域に目を光らせながら、“一歩先”を行く助成プログラムの創出と展開に向けた取り組みを行っていくことが大切である。
 助成財団の特長と役割(助成財団だからできること。助成財団にしかできないこと)を存分に生かした社会へのチャレンジを、これからも心がけていきたい。

公益財団法人トヨタ財団 広報誌JOINT No.2号掲載
発行日:2009年10月15日

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