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プロジェクトイベント・シンポジウムレポート

シンポジウム「介護の再編と海外人材の位置づけ」が開催されました(国際助成プログラム)

情報掲載日:2014年11月26日

イベント・シンポジウムレポート

シンポジウム「介護の再編と海外人材の位置づけ」が開催されました(国際助成プログラム)

安里和晃氏

10月18日(土)、2013年度の国際助成プログラムの助成を受けたプロジェクト「アジアの高齢化と外国人ケア従事者に関する実態および問題点の検討―ケアコンピテンツ・国際人材育成制度の確立に向けて」(D13-N-0086)の一部として、シンポジウム「介護の再編と海外人材の位置づけ」が京都大学東京オフィスで開催されました。

日本では、2025年に100万人の介護人材不足が見込まれ、多様な人材の包摂が重要課題となっています。このシンポジウムは、技能実習制度への介護職種の追加や介護福祉士の資格取得による在留が検討されるなかで、前者に焦点をあて、どのような制度設計が必要かについて検討し、プロジェクトでの政策提言に反映させることを目的としたものです。

冒頭、本シンポジウムの主催者を代表し、プロジェクト代表者の安里和晃(京都大学大学院特定准教授)氏から、介護と技能実習制度の現状についての説明があり、合わせて半年前に来日し、介護資格取得を目指すベトナム人2名から、仕事の内容や日本語学習の状況の発表がありました。

介護資格取得を目指すベトナム人2名による発表

続いて、外国人介護人材の育成を担う実践者とメディア関係者、研究者、そして外国人として介護を行っている当事者によって、具体的で現場の経験を反映した議論が行われました。主な内容は以下のとおりです。

山崎イチ子(元花園大学教授)氏は、経済連携協定(EPA)の総括を行い、外国人介護職員が日本で直面した文化の違いやコミュニケーション不足、残業代未払い、里帰りの有休取得不可などで信頼関係が崩れ帰国せざるを得なかった事例を紹介しました。二文字屋修(NPO法人AHPネットワークス専務理事)氏は、これからはアジアの高齢化を担う介護人材という視点が必要という考えを示し、技能実習制度が搾取の制度とならないよう業界関係団体が協議会を作るなどの協力体制が不可欠だとしました。続いて川名佐貴子(シルバー新報編集長)氏は介護業界の専門性や経営、マネジメントが未熟だとし、待遇も悪く離職率が極端に高い介護施設と、そうでない施設が二極化している実情にも触れました。最後に結城康博(淑徳大学教授)氏は、前提として、外国人を導入しても介護人材の不足は解消しないという点を指摘しました。介護人材は「公共財」であり、送り出し国にとってのメリットがあるということを示すことが必要と述べました。

パネルディスカッションの様子

最後のパネルディスカッションと質疑応答では、安里氏のモデレーションのもとで、パネリストから様々な意見がありました。例えば、質の二極化が進む中でどうすれば質の悪化する二極化の下の部分を変更できるかについて、介護施設の外部評価や情報公開が進んでいないことの指摘がありました。また海外人材の教育方法についても、海外人材が日本語や日本文化を学ぶことが重要な一方で、自国のアイデンティティも尊重されるべきという意見がありました。また、特に英語ができるフィリピンには、言葉の問題や条件などからカナダやドイツに向かう介護人材も多くいるというコメントもありました。結局のところ、技能実習制度の具体的人材育成はどうあるべきかについて、関係団体が協議しなければならないという提案がありました。

このプロジェクトは、関係省庁や職能団体とも継続して意見交換を行い、具体的な政策提言につなげていきます。特に、二文字屋氏が示した関係団体による協議会の設定については、その後、安里氏より日本介護福祉士会や日本介護福祉士養成施設協会に対して提言が伝えられ、新聞でも報道されました。

このシンポジウムでは、外国人介護人材について、各国の制度以外にも、施設側の経営・マネジメントの問題や、文化や言葉だけでなく国によって介護に対する考え方が違うなかでどのような人材をどのような制度枠組みで育成するかが示されました。

アジア全体で高齢化が進むなか、看護・介護人材へのニーズの増加は日本だけに留まりません。介護人材を「いかにして受け入れるか」という視点に加え、これからは日本だけではなく送り出し国にとっても恩恵のある互恵的な人の移動についての視点が求められるでしょう。

プロジェクトの概要については、「助成対象者検索ページ」から「D13-N-0086」と入力して検索してください。

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